リサーチプロジェクト
研究報告会レポート

第7回価値共創型マーケティング研究報告会レポート
「企業と顧客の共創プロセス」

第7回価値共創型マーケティング研究報告会
テーマ:「企業と顧客の共創プロセス」
日 程:2014年12月21日(日)14:00-16:30
場 所:大阪産業大学梅田サテライトキャンパス

 

【報告会レポート】
 今年度の価値共創型マーケティング研究会は、価値共創の理論化と実践への展開に向けた模索へと議論を進めます。第7回の研究会は、企業と顧客の共創プロセスをテーマとし、新たな視点による共創のあり方を検討しました。
 
報告者と内容は以下の通りです。
 
「価値共創の成果とpay what you want方式による価格決定」

 林 釗 氏(広島大学大学院 社会科学研究科 博士課程後期)
 村松 潤一 氏(広島大学大学院 社会科学研究科 教授)

 価値共創に関する議論が盛んに行われているが、どのような成果が得られるかについて、ほとんど採り上げられていない現状に問題意識を持つ報告者は、価値共創という新たなマーケティング行為に対し、成果を問う論理的必然性や方法について検討する視点から、買い手側が価格決定権を持つ仕組みについての研究成果が披露されました。それによると、まず新たな仕組みを導入でき得るものとして、①製品差別化の程度が高いもの、②低い限界費用のもの、③公平かつ自発的に支払う行為を採る消費者の存在などの特徴が挙げられました。また、価格を決定し代金を支払う行為には、「公平」「利他性」「互恵関係」が影響すると考えられ、さらにそこには売り手と買い手の社会的距離やロイヤルティも影響することが指摘されました。これら理論的検討を前提に考察すると、価値共創を実感した買い手が価格を決定するという仕組みへと経済的交換の行為を転換させることも可能だと指摘できます。このような新たな視点が披露されました。
 
「製造業における価値共創概念の適用」

 清野 聡 氏(マツダ株式会社 商品本部商品企画部主幹)

 製品を市場に供給する立場を採る製造業にとって、企業は販売前に事前に価値を決めているといえます。ところがこれでは、捨象される価値や顧客が知り得ない価値も生じてしまい、顧客の立場からみれば、結果として得ることができる価値の機会を失っている可能性が指摘できます。これは企業の立場からみてもビジネスの機会を奪っている行為ともいえ、製造業の行為にも価値共創概念を適用することが必要だといえます。こうした問題意識に基づき、報告者は最初にVargo and Luschのいう価値共創とGrönroosのいう価値共創の概念の比較が行われました。次に、B to Cの直接的な価値共創に向けた企業活動のあり方へと議論が進み、企業側の資源の有無によらず顧客に向けた価値創造のためにはナレッジとスキルの拡張が必要になることが明らかになります。さらに、必要となる顧客との接点の量は膨大であり、顧客との距離克服が課題となりますが、これらを克服するためには共創の場が必要であることや、そこにあらゆる企業の参画を許容することが求められます。本報告では試行的な見解に留まるものの、価値共創に向けた仕組みづくりは着実に進行しており、より精緻なフレームワークが要求されていることを考えれば、こうした視点による検討の重要性は高いとのご指摘がありました。
 
清野聡氏 会場の様子
写真左から、清野聡氏、会場の様子
 
ディスカッション

パネラー
コーディネーター:村松 潤一氏(広島大学)
  清野 聡 氏(マツダ株式会社)
  藤岡 芳郎 氏(大阪産業大学)

 ディスカッションは、報告者への意見や質問を中心として全参加者が一体となった議論を展開しました。今回は報告で紹介された事例分析の解釈をめぐる議論が幅広く展開されました。当初は製品を戦略的にポジショニングし市場供給したが、震災を契機として新たな捉え方が出現したという議論からは、価値共創が企業の意図せざるところからはじまるという問題が浮かび上がりました。反対に、意図的に価値共創を推進するためには、市場をどのようにスクリーニングすればよいのかといった議論はまだ十分でなく、実務との一体的な検討が求められることも明らかとなりました。
 pay what you want方式についても、企業側の利益が担保できないとする議論がある一方で、すでにその仕組みが機能しているとした指摘がありました。ただし、今度はサービス供給の公平性が損なわれるような事態を引き起こす要因にもなりかねないという指摘があり、この議論も白熱いたしました。
 
 次回の研究会は3月15日(於 広島大学東京オフィス、時間は未定)にて開催予定です。会員の皆様のご参加をお待ちしております。
 
(文責:今村)

 

 
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