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日本マーケティング学会 ワーキングペーパーVol.3 No.7 |
サービス財による駆動力 |
サービス化経済時代における小売企業の戦略的品揃えの考察 |
荒谷憲 元大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程 |
発行:2016年12月31日 更新:2016年12月31日 |
分類 : 論文 |
要約 : 日本は、近年、サービス化経済時代に移行したと考えることができる。日本の家計消費支出が物財(goods)からサービス財 (services) へとシフトしたからである。 サービス (service)、付帯的サービス (supplementary service)とサービス財 (services)の意味を明らかにすると、サービスとは、主体となる行為者の活動プロセスによって恩恵を受け取る者のために、主体的行為者の能力(知識やスキル)を適用していって何らかのベネフィットが提供されること、付帯的サービスとは、例えば無料宅配やアフターサービスなどのように、中核となる提供物を補強するサービスのこと、そしてサービス財とは、例えば在宅医療や会計支援などのように、顧客は所有権を得られないが、事業単位として可算できる無形の商品 (product) のことである。このことから、サービス財と付帯的サービスは異なった概念であることが明らかである。 Kotler and Armstrong (2014) は、商品 (product) において、第1のレベルとしてコア顧客価値 (Core Customer Value)、第2のレベルとして実体商品 (Actual Product)、第3のレベルとして拡張商品 (Augmented Product) の少なくとも3つのレベルで考える必要があるという。 物財における 3つの商品コンセプトとサービス財における 3つの商品コンセプトを比較すると、コア顧客価値と拡張商品は、物財もサービス財も同じレイヤ(同質の層)で説明できる。 顧客の視点では、同じコア顧客価値を得られるのであれば、概念的には、物財を選択するか、サービス財を選択するかは、どちらも同じ効用 (utility) を得られるので区別する必要はない。結局、基本的には物財とサービス財の違いを認識するものは、顧客の目から直接観察する実体商品の構成要素の特徴であると考えることができる。 サービス財の構成要素は、①コア顧客価値、②実体商品:商品名・パッケージ、サービス・クォリティ、価格、サービス設備、スタッフ、③拡張商品:8つの付帯的サービス、の3つの商品コンセプトから構成される。 サービス財が実際に市場で取引されるためには、サービス財を取扱うためのサービス事業の技術を企業は身に付ける必要がある。このサービス事業のための技術を「サービス財取扱い技術」と呼ぶと、サービス財取扱い技術は大きくは、「プロセス管理技術」と「組織的ノウハウ」の2つの次元に整理できる。 サービス財も品揃えに加えることのできる小売企業が、一つの合目的に適合した同じ顧客ニーズを満たす物財とサービス財の品揃えを行えば、顧客は、サービス財の利用と関連させて、そのサービス財と合目的に同じ顧客ニーズを満たす物財の購買を促されることになるだろう。 顧客のサービス財の利用が駆動力となってそれと顧客ニーズの上で関連する物財の購買も促されると顧客の購入点数の増加につながり、ひいては小売企業の売上高向上に貢献できる。 つまり、これが顧客のサービス財の利用が物財の購入を駆動するサービス財駆動型関連購買の論理である。 |
キーワード : サービス財 (services) 付帯的サービス (supplementary service) コア顧客価値 拡張商品 |
ページ数 : 表紙1 + 本文26 |
ファイルサイズ : 1060KB |
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