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第1回マーケティングサロンレポート
「ブランドをじっくり語る」

第1回 マーケティングサロン「ブランドをじっくり語る」

ゲスト:津端裕氏(アキレス株式会社シューズ事業企画本部・副本部長 兼 マーチャンダイジング室室長)

テーマ:「瞬足」ブランドはなぜ強いブランドに育ったのか?

日程:2013年1月23日(水) 19:00~21:00

場所:日本マーケティング協会 東京本部

 

サロン委員長崎秀俊(インターブランド)、佐々木竜介(毎日新聞社)、京ヶ島弥生(フロスヴィータ)

サポート:田中洋(日本マーケティング学会副会長、中央大学ビジネススクール教授)

 

【サロンレポート】

「瞬足」の売れ行きは年間600万足、今や小学生の二人に一人が履いている強力なブランドとして育っています。

開発者の津端さんは、小学校の運動会を、ご自分で開発されたエスノグラフィックな調査法で継続観察することによって、ブランド開発に結びつけました。

それはいかにして可能だったのでしょうか?

 

津端さんのお話を聞くとともに、活発な質疑応答も行なわれた当日の様子をレポートします。

 

瞬足の展示会場での交流

写真左から、瞬足の展示、会場での交流

 

●少子化でも伸びている「通学履きジュニアスポーツシューズ」

「瞬足」は、子供のスポーツ用に開発されたシューズではなく、通学履きジュニアスポーツというカテゴリーに属します。「瞬足」といえばかけっこが速く走れる魔法のシューズとのイメージが強いですが、スポーツシューズではなくあくまで子供たちの通園、通学履きのための外履きでとのことです。「瞬足」のヒットで各メーカーがこの分野に力を入れたことにより、少子化にもかかわらず市場は拡大しているとのことでした。

 

●環境変化による危機感から「商品開発リーダー制度」がスタート

「瞬足」の開発がスタートした2000年前後、通学履きジュニアスポーツは大きな二つの動きがあったそうです。一つはスポーツメーカーのジュニアへの参入、もう一つは流通によるプライベートブランドの拡大です。成熟市場において参入者が増えたことでシェアが低下、これに危機感を抱き、2000年4月に発足したのが「商品開発リーダー制度」です。そしてそのリーダーの1人に、GMSや量販店担当の直販チームに所属していた津端さんが指名されました。

津端リーダーのもと最初に行なったことは、開発や営業といった異なる部門のメンバーからなるチームの意識を一つとするための議論でした。開発テーマに関する議論を重ねた結果、みなが納得したものが「運動会」だったそうです。

 

●店頭での聞き取り調査と運動会における13年間の観察

チームは次に、店頭での聞き取り調査を実施しました。

1980年代頃まで販売の主流だったシューズ専門店の情報は、販社を通じて得ていました。つまりユーザーの声を直接聞くことはありませんでした。そこで直販チームで19年間営業をしていた津端さんの経歴を生かし、毎週日曜日にGMSの靴売り場に立ちユーザーの声を聞き取ったそうです。

その結果、購入の決定権は母親にあること、重視されるのは軽さ、価格、デザイン、履き心地の順であること、また成長を見越し大きめのサイズが選ばれる傾向があることなどが分かったそうです。

一方で津端さんは毎年小学校の運動会に出かけ、子供のシューズを1回につき200~300枚撮影しました。その膨大な資料から、通学履きシューズのトレンドやどのように履かれているのかを読み取った他、足に合わないシューズを履いている子供の多さも実感したとのことです。それまでの子供用シューズのほとんどが3Eのラスト(木型)をもとに作られていましたが、調査を行なったところ、実は主流は2Eだったことが分かりました。

 

●瞬足の特長

そういったユーザー観察の結果、生まれたのが「瞬足」です。

従来品とは次の点で異なるとのことです。

・かけっこでコーナーをうまく走れる「左右非対称ソール」

・子供たちの足に合わせた「2Eのラスト(木型)」

・無駄なパーツを排した「軽量化」

・子供たちが楽しく履ける多彩なカラーリング

またPOPについても両足のソールを見せるという新しいタイプのものを販売店店頭に飾りました。それまでのシューズのソールは左右対称だったので、片足を見せれば済んだのです。

 

●1980円にこだわる

一方で価格については、従来品と同じ1,980円にこだわりました。店頭での聞き取り調査の結果、意思決定者である母親が最もこだわるポイントだったからです。

しかしながら左右非対称ということは、左右を各々別に設計しなければならず、それはコストの増大を意味します。多くの生産委託メーカーが尻込みをする中、甲部分の無駄の排除(パーツの除去や素材変更)を行なうことで、協力してもらえるメーカーが1社現れました。このメーカーには初年度は6千足のみのオーダーでしたが、いまや年間450万足を委託しているそうです。

 

●「大人の瞬足」も登場

「瞬足」は今ではブランド拡張も行なわれています。ひとつはダンスモデルや大人向け「大人の瞬足」など、シューズ内での通学履きというカテゴリーを越えた拡張であり、またアパレルやホビーなどシューズ以外にも拡大(ライセンシー)しているとの事。瞬足のラジコンカーもあるとの話に参加者一同は少々驚きましたが、津端さんの「シューズとクルマは相性がいいようです」との台詞に納得しました。

 

集合写真会場の様子

写真、左から集合写真(前列中央 津端裕氏)、会場の様子

 

参加者の声(事後アンケートから抜粋)】

・マーケティングサロンは、私が期待した以上に大変多くの刺激を頂きました。マーケティングサロンから学んだ知識やアイデア、マーケティング思考を持ち、1日でも早く1人前のマーケッターになれるよう努力したいと思います。

・ サロン、懇親会の雰囲気作りはとても良かったです。本当に様々な会社からマーケティングを実践されている参加者が集まっており、リアリティーのある具体的で活発な議論には大変刺激を受けました。

・同じ話を聞いた時に、何を感じ、何を考え、自社にどう反映するか。反映するとしたら、どの部分が腑に落ちなかったか?講師の方のお話は勿論ですが、参加されている会員の方の”質問”も大変参考になりました (他社のブランド担当は「こういう所を気にするのか…」等ひとりで唸っていました笑) 。やはりマーケティングは面白いと感じる事ができました。

・とてもいいお話が聞けて満足です。まるでプロジェクトXのようでした。セミナーは少人数で打ち解けた雰囲気で良かったと思います。二次会にも参加させて頂き、プレゼンにも無かったお話も聞かせて頂き、楽しかったです。外部セミナーは高価なことが多いので、1000円で参加できて、かつ、開発者の方と懇親できる貴重な機会がいただけるのはとても嬉しいです。

 

【サロンを終えて】

今回のサロンは津端さんに1時間強お話いただいた後、質疑応答の時間となりました。開発や販売政策、プロモーション、またブランディングなど、多数の人がそれぞれの質問をぶつけ、津端さんにはそれぞれに真摯に答えていただきました。

会場に商品展示も行ないましたが、終盤には商品を囲みながら解説や質疑応答も行なわれました。これはゲストと参加者との距離の近さを感じさせるシーンでした。

最後に、今回のケースで私が感じたことは、瞬足はユーザーの声を聞くという、マーケティングの基本がしっかり実行されたことで成功したということ、そして何よりも、津端さんのシューズへの愛情です。プライベートでもシューズマニアという津端さんは、「瞬足」」を成功へ導いた大きな要因であるユーザー観察について、「エスノグラフィーではない」と謙遜して答えられました。しかし、彼のシューズへの愛情がゆえにユーザーや着用シーンへの深い観察が行なわれ、定量データでは得られない知見の獲得に結びつき、また委託メーカーや販売店などのパートナーを巻き込むことにつながったのだと思います。

 

(サロン委員・佐々木竜介)

 

 

 

 
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