ニュースリリース

第2回マーケティングサロンレポート
「従業員満足→顧客満足は本当か?」

第2回 マーケティングサロン 「従業員満足→顧客満足は本当か?」
プレゼンター:牧口松二 氏(株式会社 博報堂コンサルティング 執行役員)

日程:2013年2月22日(水) 19:00〜21:00

場所:日本マーケティング協会 東京本部
サロンゲスト:ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEO 高岡浩三 氏

武蔵大学准教授 黒岩健一郎 氏

法政大学教授 西川英彦 氏

サロン委員:岩井琢磨・三谷暢宣・高村和久(早稲田大学MBA OB)

サポート:内田和成(日本マーケティング学会副会長、早稲田大学教授)

 

【サロンレポート】
従業員の満足度を上げることが、サービスの満足度向上につながる、と言われてきました。直観的にとても正しいアイデアですが、さらに掘り下げて調査してみると新しい事がいろいろわかってきます。

 

今回のサロンでは、博報堂コンサルティング執行役員の牧口さんにベースとなる研究を紹介して頂き、従業員の満足度と顧客の満足度との関係について議論致しました。牧口さんはこれまで、トータルとしての商品戦略によってブランド価値を向上し、ユーザーやステークホルダーの期待に応えるお仕事をされてきました。

 

商品としての形が目に見えない「サービス」。お客様に接するのは、従業員の方々です。お客様の満足度を向上し、サービスのブランド価値を高めるためには、採用から研修、そして、お客様に到るまでのトータルとしての戦略が有効になります。今回は、具体的なデータに基づく興味深い研究成果をご紹介頂きました。

 

プレゼンテーション後の議論では、ネスレ日本社長の高岡さんや、牧口さんと共同研究されている黒岩先生、また、内田先生、西川先生のお話を交え、大変充実した話し合いをすることができました。サロン委員が言うのもおかしな話ですが、マーケティングサロン、予想以上のコンテンツです。この内容で参加費1000円(飲食代込み)。さすが、素晴らしい、マーケティング学会のマーケティングです。

 

好評につき、第1回と同じく「乾杯!」で始まったサロン。下記のような内容が議論されました。

 

写真左から、牧口松二氏、乾杯の様子

 

【概要】
● 「従業員満足」は「顧客満足」に結びついているか? − オーナーシップについて
従来の「サービス・プロフィット・チェーン」の理論に反して、「従業員の満足は必ずしも顧客の満足に結びついていない」ということが『ハーバード・ビジネス・レビュー』などで指摘されています。最新の学説では、顧客満足よりは、オーナーシップ(自社のことを、あたかも自分が所有する会社 のように思う意識)が、顧客満足に結びついているのではないかといわれているそうです。牧口さんが実際に行ったフィットネスクラブでの調査では、1つの企業の中でも、店舗の立地によって顧客満足につながるKPIが変わっていました。郊外にある店舗のほうが、従業員のオーナーシップがより重要だったのです。

 

● 「オーナーシップ」と「顧客価値」
それでは、「オーナーシップ」は「顧客価値」とどのように結びついているのでしょうか?
牧口さんは、個別の企業において「オーナーシップの育成」と「顧客価値の創造」がどのように行われているかを調査されました。例えば、リッツ・カールトンにおいて、従業員の「オーナーシップ」がどのように醸成されているのか。それが、どのような形で顧客満足に結びついているか。そこには、社風やビジョンから、採用、報酬、接客、顧客ターゲット等を含む、整合性のとれたシステムがありました。

 

● 「カスタマイズ型」と「ユニバーサル型」
リッツ・カールトンとスーパーホテルのように、顧客1人1人に合わせてサービス価値を最大化する「カスタマイズ型」、幅広いターゲット層に対してサービスを最適化する「ユニバーサル型」という正反対の特徴をもつ会社を比較する調査を、様々な業界について行いました。その結果、「オーナーシップ」から「顧客満足」に至るシステムに、明確な違いが現れました。

 

● プレゼンテーションを踏まえた議論
上記のような内容のプレゼンテーションの後、様々な議論が展開されました。話は、ブランド構築から国際展開、AKBファンまで。1つの議論が異なる議論に展開していくのが、サロンの良さです。
・「従業員」だけでなく「ファン」もオーナーシップをもつ存在。
・大企業では、「事業セクション単位」でオーナーシップを感じる従業員が多いという調査がある。
・従業員の意識が低い会社は、どうしたら改善するのか?
・多くの企業は「カスタマイズ型」と「ユニバーサル型」の中間にある。そういう企業はどのようにすれば良いだろうか?
・ITを効率的に使う「ユニバーサル型」企業は多いが、「カスタマイズ型」企業は少ない。ネスレ様はITを使用したカスタマイズ型のマーケティングが非常にうまいと考えているが、何故か。
・AKBのファンの人は、突然他のグループのファンになったりする。過剰な「オーナーシップ」は思わぬ副作用を及ぼすのではないか?→海外展開の際、「オーナーシップ」が強すぎて失敗した事例がある。
・社内を説得して実際にやり遂げる「実行力」は、どこからくるか?
・「オーナーシップ」を高める必要があるのは、全社員か?それとも、ある特定のポジションの人だろうか?

 

また、大変印象的だったのは、高岡さんの豊富な知識と情熱でした。今回のサロンに向けてもテーマについて事前に調査されていると伺い、恐縮至極です。当日の議論においては、ブランドとは何かという話から、どのビジネス階層でイノベーションを実現するかというお話まで、刺激的なお話をして頂きました。

 

写真左から、高岡浩三氏、集合写真(前列左二人目から、内田氏、高岡氏、牧口氏、黒岩氏、西川氏)

 

● 参加者の声(事後アンケートから抜粋)
・テーマ、講演者、内容、全て興味深く、勉強になった。特に、講演はもちろんだが、ネスレの高岡社長のコメントと内田先生の示唆が秀逸で、より理解と思考が深まった。是非、また参加させて頂きたい。
・業界によって合致度合いや解釈の仕方は様々あると思いますが、「カスタマイズ・ユニバーサル」を「ブラディング・ビジネスモデル」に読み替えるなど、応用の可能性に富んだ発展的な意見・アイディア・可能性をいただけて充実の内容だったと思います。
・ディスカッションの内容が良かったので、この場に参加できて、直接話が聞けて良かったと思いました。
・各テーブルにマイクを回すとか、少し運営に工夫があるとみんなが当事者意識を持ってサロンに参加している雰囲気を演出できるのではないでしょうか。どうでしょう?!
・参加者に少し時間を与え、テーブル単位でディスカッションさせたりテーブル毎で発表させるとか、白板なんかを使って、その会で決まった方向性とかわかったこと、今後の検討事項、みたいなものを纏めると、より有意義なものになりそうな気がします。

 

● おわりに
終始なごやかな雰囲気だった今回のサロン。プレゼンターの牧口さんのキャラクターに加え、ご参加の皆様の「オーナーシップ」によるものだったと思っております。つたない幹事業にて運営に到らぬ面も多かったかと思いますが、皆様のフィードバックを活かして、さらにおもしろいサロンになりますよう努力していきたいと思います。マーケティングサロンを、これからもどうぞよろしくお願い致します。

 

(サロン委員・高村和久)

 
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