ニュースリリース

第79回マーケティングサロンレポート「人材育成こそ最強の経営戦略である」〜ダイバーシティ経営から事業変革へ。老舗塗装会社3代目社長の挑戦。〜

第79回 マーケティングサロン(大阪)
「人材育成こそ最強の経営戦略である」
〜ダイバーシティ経営から事業変革へ。老舗塗装会社3代目社長の挑戦。〜

日程:2018年8月25日(土)16:30-18:00
場所:関西学院大学大阪梅田キャンパス
ゲスト:竹延 幸雄 氏(株式会社竹延 代表取締役社長)
サロン委員:岩井琢磨・吉田満梨
 
【サロンレポート】
老舗塗装業の三代目


講演する竹延幸雄社長

 竹延グループを率いる竹延幸雄社長は、婿養子として入社した同社の3代目だ。白シャツとジーンズにスニーカーというラフな出で立ちであらわれた竹延社長、登壇するとその風貌からは想像もつかない、激しい改革実行の道のりを語り始めた。
 竹延は創業50年を超える、塗装業の老舗。業界自体の成長が停滞する中で、竹延はここ5年ほどの間に売上高を倍増させるという、「異常値」と言えるほどの成長を実現した。他社を買収した訳でも、異業種に進出したわけでもない。その成長の核にあるのは、人材育成だ。
 塗装業の主体は、職人である。中長期的な人材育成が必要であることは当然だが、人はそんなに急激には育たない。ましてや業界も自社利益も縮小している状況において、人材育成が即効性ある打ち手とは思えない。しかし竹延経営は、「人を育てる」ということに真摯に取り組み、そのことを急激な事業成長に直結させているのだ。

 
はじまりは一人の「ママ職人」


日本経済新聞掲載 / KMユナイテッド社の広告より

 竹延社長は、「竹延の挑戦は、人を採用するところから始まった」と語る。育成しようにも、この業界に入ろうという人がいなかったのだ。そのきっかけを作ったのが、ひとりの女性職人だった。小さな子どもを持つ彼女を採用した竹延は、子会社のKMユナイテッドを土俵として、業界の常識を覆す「10年ではなく3年で一流」という職人育成システムをつくりあげる。
 その結果、ママ職人に憧れた経験わずか2年前後の女性職人が、京都フォーシーズンズホテル・京都大学・同志社女子大学・任天堂本社・日本生命本社・京都国立博物館など、有名建築物で技能を発揮。付加価値の高い現場施工を担い、施工単価を大幅に向上させることになった。
 さらに女性がいきいきと働けるように、職場内に託児所をつくり、女性でも安全に扱える塗料の容器を開発し、運搬機器を開発し、現場そのものを変えていく。その取り組みは、塗料自体にも及んでいく。一般的に塗料というと「シンナー臭がする」と思いがちだが、「実は普段の生活空間にシンナーで希釈した塗料を使っているのは、先進国では日本くらいではないか」と竹延社長は語る。シンナーが入っている塗料は、子どもを持とうという女性職人にとって良いものではない。そしてそれは、塗装を施された施主の暮らしにとっても、良いものではないはずだ。「それならば」と竹延は、塗料を水性に変え、これが塗料を直接ユーザーに販売するB to C事業につながったという。
 竹延が仕掛ける急激な現場変革プロセスには、当然ながら大小様々な課題が現れる。そもそも現場には女性は皆無だったのだから、女性更衣室や化粧室から備えがない。そういった現場の問題から、業界の慣習、そして特許の取得まで、必要なハードルをひとつひとつ超えていく。
 竹延グループのこれらの取り組みは、全国的に大きな注目を集めるようになり、経産省「新・ダイバーシティ経営企業100選」、近畿経済産業局「関西ものづくり新撰」などを数多くの受賞することになった。
 
乾坤一擲
 一見すると現場変革と同時に事業開発にも取り組む竹延経営は、中小企業の資源が限られていることから考えれば、広範すぎて集中が図れていないようにも思える。しかし竹延の取り組みは、そのすべてが「人の変革」という基点でつながっている。人をいかに育てるか、その育った人をどう活かすか。その結果が、就職希望者が殺到する会社をつくり、技術承継の仕組みをつくり、新しい事業をつくりだしているのだ。
 とは言え、これらを牽引する竹延社長の実行力は、半端ない。会場からは「どうやればそんなに多くのことを、同時進行で取り組めるのか」という質問が出たほどだ。竹延社長は言う、「できない理由は、抵抗勢力でも時間の制約でもない。やらない理由を探す自分の意識だけだ」。このことは、本来は豊富な経営資源を持っていながら、人材育成やダイバーシティ経営がお題目に留まりがちな大企業に対する、痛烈な教訓とも言える。
 「人材育成こそ、最強の経営戦略である」- そのことを激しく実行し続ける竹延経営に、「学び」以上に突き刺されたような「衝撃」を受けた講演会となった。
 


集合写真(前列右から5番目 竹延幸雄氏)
 
(文責:岩井琢磨)

 
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