ニュースリリース

第91回マーケティングサロンレポート
「Omni-Channel時代のマーケティング -顧客と繋がる企業のチャネルシフト戦略-」

第91回 マーケティングサロン:福岡
「Omni-Channel時代のマーケティング -顧客と繋がる企業のチャネルシフト戦略-」
日程:2019年4月26日(金)19:00-20:30
場所:株式会社 西広 会議室(福岡市中央区天神1丁目4-1西日本新聞社14F)
ゲスト:オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員 Chief Omni-Channel Officer 奥谷 孝司 氏
サロン委員:小野 和美・副田 治・山口 夕妃子
 
【ゲストプロフィール】
1997年良品計画入社。3年の店舗経験の後、取引先の商社に2年出向し独駐在。家具、雑貨関連の商品開発や貿易業務に従事。帰国後、海外のプロダクトデザイナーとのコラボレーションを手掛ける「World MUJI企画」を運営。2003年良品計画初となるインハウスデザイナーを有する企画デザイン室の立ち上げメンバーとなる。2005年衣服雑貨部雑貨カテゴリーマネージャーとして「足なり直角靴下」を開発し、定番ヒット商品に育てる。2010年WEB事業部長に就き、「MUJI passport」をプロデュース。2015年10月にオイシックス(現オイシックス・ラ・大地株式会社)に入社し、現職に。早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了(MBA)。2017年4月から一橋大学大学院商学研究科博士後期課程在籍中。2017年10月Engagement Commerce Lab.設立。2018年9月株式会社大広との共同出資会社 株式会社顧客時間設立。日本マーケティング学会理事。
 
【サロンレポート】
 奥谷孝司さんは、商品開発やWeb事業等の実務で数々の目覚ましい成功を収めながら、一方で大学院において学術研究もされています。その、実務と学術研究の双方から得られた知見をもとに、新しく生まれてきたチャネルシフト戦略、顧客とのつながりを作り出すことによってマーケティング要素自体に変革を起こそうとしている“世界最先端のマーケティング”について語っていただきました。
 
概要
 従来のマーケティングは、顧客の購買時点にのみ注目していました。しかし実際の顧客は、購入前にまず傾聴や分析を行い、十分吟味した上で購入する商品を選択し、購入後にも、その商品を使用しながら傾聴と対応を行っています。このプロセス全体が「顧客時間」です。この「顧客時間」において、どこで購入するかというチャネル選択の主導権は、顧客にあります。したがって、顧客の購入時点だけでなく、選択段階や使用段階を含めた3つのフェーズを、オンライン、オフラインを問わずに把握することが重要になってきます。
 オムニチャネル時代に入ったとは言っても、「オムニチャネル」は新しいチャネルではありません。既存のチャネルの物流と情報流をモバイルデバイスが繋ぐことで、顧客にシームレスな買物体験を提供することができるようになったチャネルです。そうしたオムニチャネルが当たり前となった今、顧客にとってオンラインかオフラインかといったことはどうでも良いことであり、どちらかのチャネルを選ぶのではなく、オンラインとオフラインのチャネルを行ったり来たりしながら、より魅力的な購買体験を提供してくれるチャネルで買い物をします。つまり、現在小売業界で起こっているチャネルシフトの本質は、企業側の進化ではなく、顧客の買物行動の変化にあります。そして、チャネル選択の主導権が、小売側ではなく、顧客側に移っているところが、それまでのチャネルとは大きく異なる点です。
 そこで、最先端を行く企業は、オムニチャネル時代に適応するために、チャネルシフト戦略を採用します。
 横軸に、顧客が「選択を行う場」をとり、オンラインとオフラインに分け、縦軸に、顧客が「購入を行う場」をとり、こちらもオンラインとオフラインに分けます。これがチャネルシフト・マトリックスです。
 従来のオンライン店舗は、オンラインで選択し、オンラインで購入するので、第2象限にあり、従来の実店舗は、オフラインで選択し、オフラインで購入するので第4象限にあります。これまではこの第2象限と第4象限を、オンライン企業対実店舗という対立軸と捉えていましたが、オムニチャネル時代には、オンライン店舗は、第2象限から第1象限や第3象限へとチャネルシフトをしていきます。
 チャネルシフト戦略は、単なるチャネルの多様化ではありません。オンラインを基点としてオフラインに進出し、顧客とのつながりを作り出すことによって、チャネルの認識を「販売の場」から「顧客とのつながりをつくる場」へと変えていく、マーケティング要素自体を変革しようとする、世界最先端のマーケティングです。
 
参考文献
奥谷孝司、岩井琢磨『世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略』日経BP社、2018年2月。
 
【サロンを終えて】
 サロン委員である佐賀大学の山口夕妃子先生による乾杯のご発声から始まるなど、終始和やかな雰囲気に包まれたサロンに、初めて参加させていただきました。京ヶ島弥生サロン委員長や田中洋副会長もお見えになり、学会を挙げて地方でのサロン開催を盛り上げようとしてくださっている様子が伺えました。フロアは実務家と研究者がほどよく混じり合い、まさに実務と学術の融合の場になっていたように思います。
 また、ゲストの奥谷孝司氏がお話しくださったチャネルシフト戦略という新しい動きは、とても興味深いものでした。従来のオンライン店舗でも、顧客時間の3つのフェーズの内、「購入」だけでなく、おすすめといった形で「選択」に関与することはできましたが、デジタルデバイスの発展により、現在では「使用中」のデータも個別に収集することができるようになっています。このように3つのフェーズすべてで顧客とのつながりを作り出すことができるPlaceが、これからのマーケティングにはもっとも重要なのだという指摘や、オンラインとオフラインの融合が新しい価値を生み出すという考え方は、まさに目から鱗でした。
 最後に、このような素晴らしい場を準備してくださいましたサロン委員の小野和美様、副田治様、山口夕妃子先生に、心より御礼申し上げます。
 
集合写真
集合写真
 
(文責:武市 三智子)

 
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