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第109回マーケティングサロンレポート「コロナを越えて拡がる、新しい街の風景、新しい生活者研究」

#いまマーケティングができること

第109回 マーケティングサロン:オンライン
「コロナを越えて拡がる、新しい街の風景、新しい生活者研究」
 
日程:2020年7月13日(月)19:00-20:30
場所:Zoom使用によるオンライン開催
ゲスト:博報堂生活総合研究所 上席研究員 酒井 崇匡 氏
司会進行:武蔵野大学経営学部 教授 古川 一郎 氏
サロン委員:飯島 聡太朗

 
【サロンレポート】
 コロナ禍の経験を通じて、生活者の意識はどう変わるのでしょうか。講演の始まりは、「価値観」をキーワードに未来の街のシナリオを考えるという視点の呈示からでした。
 シナリオは4つ。街で暮らす人々がお互いを助けあえる「鍵のないまち」、自宅や職場といった物理的拠点の制約に縛られない「住所のないまち」、対面のみならずオンラインでも他者と付き合いをもてる「壁のないまち」、生活の大半を家のなかで完結させ、人々が個々のこだわりを追求できる「窓のないまち」です。ここまでの調査によると、将来暮らしてみたい街として支持を集めてきているのは、「壁のない街」と「窓のない街」のようです。
 将来、私たちがコロナの心配をしなくてよい状況を取り戻すとき、定着する/しないものは何でしょうか。講演中盤では、アフターコロナを読み解くうえで注目されるキーワードが複数挙げられました。例えば、結婚式へのオンライン参加や、「ズムメシ」のような新しい行動がどのような広がりをみせるかは、「テレイグジスタンス」技術の浸透スピードにかかっています。また、感染症対策や経済活動の自粛といった「常在リスクへの社会耐性(レジリエンス)」がどの程度高められるかもポイントとなります。
 「自粛」や「ステイホーム」のように、いまはそうせざるを得ないような行動については、ある部分は将来元に戻っても、それ以外の部分は定着する可能性をもっています。前者は「今はこれで我慢」という類のNew Norm、後者はアフターコロナにおいても真のNormとして存続できる類のNew Normといえそうです。仕方なくとった行動でも、それらのなかから予想外の楽しさや便利さが発見されたとき、それが定着するわけです。オンラインのイベントや飲み会、イエナカ消費は今後どうなるでしょうか。
 モノ消費・コト消費に続くトキ消費は、オンライン化が進むと新しい特徴を獲得します。オンラインの音楽ライブや、無観客試合といった新しいタイプのトキ消費は、物理的な収容人員や商圏、売り手・買い手の交流について、これまであった限界を突破できます。
 終盤では、ビッグデータの利活用を通じて生活者の欲求を洞察する手法として「デジノグラフィ」が紹介されました。例えば、ウェブ上で検索されたワードのなかには、こうした欲求を表すものがあります。ひとつの方法として「第二キーワード」に着目してみると、生活者がどのようなモノの使い方を知りたいと思っているかとか、日常生活でどのような問題に直面し、どのように解決を図ろうとしているのか等について把握することができます。またそこから、生活者の潜在的欲求について分析することができます。これらは、さまざまな属性や時系列のデータを組み合わせることで、より深い知見の獲得につながります。多様なデータホルダーやアカデミアと協働しながら、まだ顕在化していない生活者の価値観や欲求を発見する作業が進められています。
 講演の後は、活発な議論がなされました。また、Zoomの投票(集票)機能を利用して、 4つの街のシナリオのどれが当日のオーディエンスのあいだで支持を集めるか、投票がおこなわれました。(結果は「壁のない街」が40票、「窓のない街」が32票、「鍵のない街」が16票、「住所がない街」が13票でした。)

 
【サロンを終えて】
 「暮らす」や「働く」といったキーワードからコロナ後の消費・社会を考える、大変有意義な時間となりました。
 
集合写真
集合写真(画面左上が酒井氏)
 
(文責:飯島 聡太朗)

 
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