ニュースリリース

日本マーケティング学会 共催　2014年4月度 嶋口・内田研究会 レポート
「デコンストラクション3.0:既存事業の戦い方～先手を打ってバリューチェーンの再編に乗り出せ～」
 
日程：2014年4月11日（金）19:00～20:30
場所：早稲田大学 早稲田キャンパス 11号館 5階 501教室
講師：早稲田大学 商学学術院教授　内田 和成 氏
共催：日本マーケティング学会

【レポート】
　嶋口・内田研究会は、学会評議員の嶋口充輝氏（慶應義塾大学名誉教授）を中心として、学会副会長の内田和成氏（早稲田大学商学学術院）が代表幹事を務める、1984年以来200数十回以上続く、社会人が集う勉強会です。現在、日本マーケティング学会と、嶋口・内田研究会は、学会プログラムとの統合を検討しており、その第一歩として、今回から日本マーケティング学会との共催で開催されました。

　2014年4月度の講師は、早稲田大学商学学術院教授の内田和成先生。テーマは「デコンストラクション3.0:既存事業の戦い方　～先手を打ってバリューチェーンの再編に乗り出せ～」です。2014年4月にハーバードビジネスレビューに寄稿された論文をもとにご講演いただきました。

写真左から、ゲストの内田和成氏、会場風景

【概要】
デコンストラクション経営革命、異業種競争戦略、そして…
　これまで、1998年に「デコンストラクション経営革命」を、その第2弾として2009年に「異業種競争戦略」を出版しました。「デコンストラクション経営革命」では、主にインターネットがもたらす企業経営へのインパクトを紹介し、これから起きる戦いを予言しました。「異業種競争戦略」ではこれまでのような同業界内の気心が知れた競争相手とは、全く異なる業界からやってきたプレーヤーと異なるルールで戦わなくてはならないという異業種競争について語りました。

　そこでのカギは個別の企業のバリューチェーンを超えた企業と企業、業界と業界の関係まで踏み込んだ事業連鎖であると述べています。しかし、主に新しい事業を作り上げていく視点、すなわち攻撃側からの考察が多かったのも事実です。そこで、今回は異業種競争の挑戦を受けているあるいは受ける可能性のある既存業界の既存企業がどう戦うべきかについて語ります。

ビジネスのルールの変え方
　まず始めに、新しいビジネスや競争が次々と生まれてくる中で、その変化を整理するためのフレームワークを提示します。

「ルールチェンジャーの四類型」
　ここではビジネスのルールを変える戦い方を四類型に分けています。縦軸は新しい儲けの仕組みを持ちこんだかどうか。横軸は従来の製品・サービスに比べて新しい製品やサービスを提供しているかどうか。

A：プロセス変革型（既存の儲けの仕組み×既存の製品・サービス）
B：市場創造型（既存の儲けの仕組み×新規の製品・サービス）
C：秩序破壊型（新規の儲けの仕組み×既存の製品・サービス）
D：ビジネス創造型（新規の儲けの仕組み×新規の製品・サービス）

「既存企業の防衛戦略」
　一方で、新興勢力に既存業界の既存企業が対抗する手段（防衛戦略）もまた、この四類型で対抗することが出来ます。ただし、相手の戦い方と同じボックスに入る戦い方は得策ではなく、自社の既存のビジネスを尊重しながら独自の対抗策を考えることが必要です。

A’：プロセス変革型（既存の儲けの仕組み×既存の製品・サービス）
B’：市場創造型（既存の儲けの仕組み、新規の製品・サービス）
C’：秩序破壊型（新規の儲けの仕組み、既存の製品・サービス）
D’：ビジネス創造型（新規の儲けの仕組み、新規の製品・サービス）

最後に
　既存企業の防衛戦略ほど重要なことはありません。多種多様な企業が虎視眈々と既存企業の既存事業の破壊をもくろむ中で、後手に回ってはいけないのです。みずから自己否定することで、先手を打って自社のバリューチェーンをすべきです。

【研究会を終えて】
　当日はルールチェンジャーの四類型、既存企業の防衛戦略について、数多くの具体的な企業・事業を例に語っていただきました。また、質疑応答も時間いっぱいまで活発に議論がなされました。既存企業の防衛戦略という多くの来場者にとって関心の高いテーマについて、先手を打つべきである、という内田先生のメッセージ。実践、実行をしてこそ価値のあるものですので、この講演を機に私たちも実践、実行をしていくことが必要だと感じました。
 
（文責：嶋口・内田研究会事務局　早稲田大学ビジネススクール内田ゼミM2　尾崎文則・山谷あすか）