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研究報告会レポート

第12回ソーシャル・メディア&ビジネス研究報告会レポート「持続可能な地域をつくる」まちづくり会社の行方 ~まち・みせ・ひとを育てることで、住民の暮らしやすさを支える~

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テーマ:「持続可能な地域をつくる」まちづくり会社の行方
    ~まち・みせ・ひとを育てることで、住民の暮らしやすさを支える~
講演者:株式会社御祓川 代表取締役社長 森山 奈美 氏

日 程:2016年10月8日(土)9:30-12:00
場 所:株式会社御祓川

 

森山奈美氏 プロフィール
 七尾生まれの七尾育ち。父親がまちづくり活動に取り組むのを中学生の頃から見続け、大学では父の影響で「都市計画」を学ぶ。卒業後はまちづくりのシンクタンクに就職。仕事で「株式会社御祓川」の計画書を書き、会社設立と同時に入社。平成11年より同社チーフマネージャーを兼務。平成19年より現職。川を中心としたまちづくりに取り組み、その取り組みが日本水大賞国土交通大臣賞、第7回「川の日」ワークショップグランプリ、橋本龍太郎APFED表彰プログラム石川特別賞金賞などを受賞。平成21年に、経済産業省「ソーシャルビジネス55選」に選出された。近年は「能登留学」で地域の課題解決に挑戦する若者を能登に誘致している。

 

●はじめに
 ソーシャル・メディア&ビジネス研究報告会(第12回)は、石川県七尾市の株式会社御祓川を訪問し、代表取締役社長 森山奈美氏にお話しを伺った。
 七尾市内中心部を流れる御祓川の再生と川を中心に据えたまちづくりを目指して設立された同社は、民間のまちづくり会社として誕生した。17年を経た現在は、「まち・みせ・ひと」を育てる3本柱で事業を行っており、能登の情報ポータルサイト「能登スタイル」、特産品を扱うネットショップ「能登スタイルストア」、地域の課題解決に挑戦する若者を能登に誘致する「能登留学」などの仕掛けを展開している。
 

 
●七尾のまちづくりの歴史
 JC(日本青年会議所)のメンバーを中心として、1985年頃から「七尾マリンシティ構想」という市民のまちづくり運動が始まる。港と町で「マリンシティ」。かつては港からフェリーが能登島へ出ていたが、橋がかかり、フェリーがなくなり、港からにぎわいが消えつつあった。七尾駅から港まで約700mと港と町が非常に近い。港に拠点をつくため、官民一体で第三セクターにて、1991年に食祭市場を開設する。その4年後に駅前再開発を実施し、再開発ビルが建設される。港の拠点、駅前の拠点を整備して、点と点を線にする。その後に、商店街を活性化して、面にしていく考えであった。
 「マリンシティ構想」の次の一手として、駅と港をつなぐ御祓川の浄化再生することが懸案になった。第三セクターの難しさを感じていたため、民間主導で1998年に七尾にTMOが全国で2番目に設立。TMO設立には、コンサルタント会社の社員として支援する。中活法があり、国から手厚い補助を受けるため、市の中心市街地活性化計画と商工会議所のTMO構想を一緒に策定した。だが、TMOの事業提案を行うもTMOは「補助金の受け皿会社」との周囲の認識から実行が難しく、純粋な民間まちづくり会社である株式会社御祓川の設立に至る。
 
●商店街再生の仕掛けづくり
 御祓川地区には、「花嫁のれん」という家の中にかける暖簾がある。「花嫁のれん」は石川県と富山県西部地区に旧加賀藩時代から伝わる婚礼の風習であり、家の中に飾り、ふすま2枚分の暖簾(結界)がある。嫁いだ日にそれを潜って、ご先祖に挨拶をするのである。婚礼の一度しか使わない「花嫁のれん」を一本杉商店街が、祭事に飾るようにしたのが仕掛けの始まりである。「女将さんの会」が他地域を視察した先で雛人形を飾っていたのを参考にした。
 このイベントが終わった後も「暖簾を見せて欲しい」と近隣から人が訪れるようになった。それをきっかけに、毎年、昭和の日から母の日まで暖簾を店頭に飾るようにした。しかしその期間には賑わいはない。イベント時に、各店舗のおばあちゃんの語りが好評だったため、それ以外の期間に発信機会として、「語りべ処」というマークを作って、歴史を話すことを続けている。
 

 
●株式会社御祓川の取組
 能登半島地震が2007年にあり、その年から社長に就任。その時から事業ドメインが川から能登へ変わる。地震によって、それまで蓄積されてきた人口減少や耕作放棄地などの地域課題が噴出。新規事業を立ち上げ、WEBショップ「能登スタイルストア」と開設する。当時はまだインターネットショッピングで、能登の産品を買うことができなかった。メールを使えない店舗にはFAXで対応する。
 (株)御祓川の価値観は、能登、環境、協働の3つである。「能登」とは拡張より密着、「環境」とは、最大より最良、「協働」とは競争より連携を意味する。自然資源、地域経済、地域人材の3つの循環を目指している。
 別府温泉が行うオンパク(温泉博覧会)の仕組みを使った「うまみん」オンパク。着地型観光のプログラムだが、参加者のうち、7割は地元の人。企画から集客をすべてやるのは大変である。そこで企画、運営業務そのものをプログラムに組みこむ。
 例えば、事業の1つである、能登留学には、集落・地域企業・まちづくりと3つのコースがある。ETIC長期実践型インターンを活用。地域(企業)の課題に若者を巻き込んで解決していく。御祓川は、コーディネーターを務める。インターン生は県内が2~3割で、全国からやってくる。これまでに延べ117人が参加。インターン生OBの中からUIターン者も7人生まれると言った成果も生まれている。
 これらのプログラムには、地域資源と外部資源を組合せながら地域課題の解決につなげる試行錯誤の活動の中から生まれたものである。
 

 
●おわりに
 人々が関わって、自分たちの地域課題を自らが解決する。株式会社御祓川は、その人たちの思いやアイディアを整理し、問いかける。対話を守り、盛り立てて、経験や知恵を持ち寄る。経験を周りの人に還元しながら、ニーズと社会資源を結びつけている。さながら、地域の中と外をつなぎ、ヒト・モノ・カネ・情報のすべてを取り揃える地域版の総合商社と言える。
 

 
(作成:友田 景)

 
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