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研究報告会レポート

第1回宇宙航空マーケティング研究報告会レポート「宇宙航空マーケティング研究会の活動ビジョン」

第1回宇宙航空マーケティング研究報告会 > 研究会の詳細はこちら

テーマ:「宇宙航空マーケティング研究会の活動ビジョン」
日 程: 2019年7月25日(木)19:00-20:30
場 所:X-NIHONBASHI

 

【報告会レポート】

宇宙航空マーケティング研究会の活動ビジョン
湊 宣明(立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科)

・宇宙航空は理工学主体の研究領域であるが、近年では政府主導から官民連携、ベンチャー企業の参入という新しい潮流が生まれており、従来アプローチのみでは対応が困難である。一方、欧米では宇宙・航空分野専門のMBA課程も存在し、学問としての「航空宇宙経営学」が研究対象となっている。宇宙航空マーケティング研究会は、マーケティングの視点から宇宙航空領域の研究課題を広く探索し、宇宙・航空の専門家のみに捉われない、学際的なアプローチでの課題解決を試みることを目的とする。
・以下4つの活動領域を設定するが、学術界・産業界から広くメンバー(学会員)を募集し、メンバーからの研究テーマ提案を得て、研究ポートフォリオを充実させていく。

  1. マーケティングの学術的・実践的な知見をテーラリングし、宇宙航空産業の振興や、新しい宇宙航空ビジネス開発に活かすよう働きかける
  2. 宇宙航空に関わりの少ない産業領域と宇宙航空とのコラボレーションの可能性を探求し、新規事業開発を含めて将来の成長市場を開拓
  3. 宇宙航空領域の革新的な研究開発に対して、潜在市場予測や経済性分析、顧客開発等、マーケティング領域からのフィードバック
  4. 宇宙航空領域のマネジメント・エクセレンスを事例研究し、他の領域におけるイノベーション活動への応用展開

・今後は定期的に研究会を開催する予定(関東、関西、その他)であり、運営をサポートいただける方を募集している。個人のビジョンとしては、欧米が先行する宇宙分野・航空分野について、マーケティングを含むマネジメント領域全体の研究を体系的に推し進め、日本で「航空宇宙経営学」を確立したいと考えている。

 

宇宙リソースを活用した宇宙マーケティング・プロモーションの変遷
荒井 誠(電通宇宙ラボ)

・宇宙マーケティングは、「宇宙産業自身の新興とためのマーケティング」と「宇宙のリソースを活用したマーケティング」の2つの側面で構成される。今回の報告会では「宇宙のリソースを活用したマーケティング」の事例として、メディア:ロケット壁面の広告、射場の屋外広告、ISS内でのテレビCM撮影、宇宙旅行懸賞キャンペーン、はやぶさ2応援、チームHAKUTO応援などを紹介した。
・現在力を入れて取り組んでいるのが “宙(そら)ツーリズムである。空(SKY)・スペース(SPACE)・宇宙(UNIVERCE)の多岐にわたる魅力の総称を「宙」と捉え、2018年度より観光庁の「テーマ別観光による地方誘客事業」の選定を受け活動中である。これまでの宇宙開発の主眼は、宇宙の劣悪な環境をいかに克服するか、つまり、宇宙環境のマイナス面をなくす、ゼロにする(=地球環境と同じにする)ことの研究・実践であったが、今後、宇宙での生活が始まるにあたり、ゼロからプラス面をいかに増やすか、新しい魅力創り、価値創造が求められる。
・宇宙飛行士にとって生き残るために必要な生活インフラとして“衣食住”が捉えられてきたが、これから宇宙職業人や宇宙旅行者にとって求められるものは“衣→ファッション”“食→グルメ”“住→ホーム(ハウスという建物ではなく、人の営みのあるホーム)”である。このように人々が快適な生活を宇宙で営むためには、楽しさや生きがいを育むリソース=“文化”の創出が不可欠となる。さらに、宙グルメ、宙スポーツ、宙エンタメといった宙文化の新興が肝要である。
 

JAXAにおける事業創出に向けたオープンイノベーションの取り組み
菊池 優太(JAXA新事業促進部)

・近年、宇宙開発は国家プロジェクトに加え、民間主導の「宇宙ビジネス」が国内外で盛り上がっている。世界の宇宙産業市場(約33兆円、2016年)のうち、ロケット打ち上げや衛星製造に関する売り上げは10%以下であり、それ以外は衛星など宇宙を利用して価値を生み出す利用サービスなどである。米国では、イーロンマスクのSpaceXを筆頭に従来とは異なるスピード感でビジネスが推進している一方、日本でも約30を超える宇宙ベンチャーが登場するなど、参入企業が増えている。宇宙ビジネスは、一般社団法人SPACETIDEによると、6つの事業分類(宇宙データ・技術利活用、輸送、衛星インフラ構築・運用、軌道上サービス、宇宙旅行・滞在・移住、探査・資源開発)にカテゴリー分けされる。
・宇宙ビジネスの加速に向け、政府は「宇宙産業ビジョン(2017年5月):日本の宇宙産業規模の倍増(1.2兆→2.4兆)」や「宇宙ベンチャー育成のための新たな支援パッケージ(2018年3月):官民合わせて約1,000億円のリスクマネー供給・JAXA等による人材・技術面からの支援」等を発表するなど、環境整備を強化している。
・こういった政府や諸外国の状況を踏まえ、JAXAは2018年5月に共創型研究開発プログラム「宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」を立ち上げた。J-SPARCは、宇宙ビジネスのアイデアを持つ民間企業等とJAXAが人的リソースや資金等を持ち寄り、企画段階から一緒になってコンセプト共創を進めたり、必要な技術開発・実証などを行い、事業化を目指す取り組みである。対象となるテーマやパートナー企業も多岐にわたっており、JAXAとしてもこれまでの既成概念にとらわれず、新たな宇宙関連事業の創出と宇宙分野に閉じることのない技術革新、イノベーションを目指している。
・また、従来の宇宙関連企業への発注型から、異分野融合によりイノベーションを創出し、宇宙探査をテーマとした宇宙開発利用の拡大と事業化を目指す仕組みとして、宇宙探査イノベーションハブがある。これは宇宙と地上のデュアルユース型の研究開発に取り組むことで、新たな技術に裏打ちされた宇宙探査シナリオ・ミッションを実現するとともに、地上の社会課題解決も目指している。
 

世界の航空機産業にゼロから挑むためには?
永井 希依彦(有限責任監査法人トーマツ 新規事業推進)

・日本が強みとする加工技術は、その特性上、どのインダストリーにもどの部門にも参入可能であり、逆にどのインダストリー・パーツセグメントの仕事を獲得すべきかを定めるのが困難な経営資源である。例えば、「チタンアルミ材の加工」という観点で営業計画(マーケティング)を練り、Industry(業界)、 Element(部品)、 Connection(顧客接点)の3点で分析を行うとする。航空宇宙産業をIndustryと定義をすると、Element(部品)までは容易にデスクトップリサーチで棚卸しすることができる。しかし、その先のConnection(顧客接点)において、好奇心旺盛でやる気のある開発者・設計者と出会えるかがカギになる。
・航空宇宙産業では、この出会いの場となるプラットフォームが少ない。ITの場合は、新技術・新ビジネスモデルを潜在的な顧客に伝えようと思った場合、TwitterやGithubなど、熱心な事業開発担当者との接点が定常的に成立しているプラットフォームが存在している。しかし、航空宇宙産業では開発者・設計者との接点は航空ショー等の個別的機会的なものとどまっている。このConnectionをどう攻略するかが、航空業界のマーケティングのポイントであるといえよう。
 

Personal Air Vehicle(PAV)の市場性に関する研究-機体価格推定モデルを中心として-
山口 広大(立命館大学大学院)

・近年, 革新的な移動システムとしてPersonal Air Vehicle(PAV)が注目を集め, 空飛ぶクルマとして様々な機体コンセプトが発表されている. PAVの統一された定義は存在しないが, 最新の研究動向では, ①垂直に離着陸可能であり, ②電動モーターでプロペラを用いて推進し, ③飛行中は完全自動操縦の次世代航空システム, と定義されることが多い.
・このような革新的な航空システムに関しては, 研究開発の不確実性の高さから, 積算方式による開発コスト等の推定が難しい. そのため, 過去の完成機データを用いて未完成機のコストを推算するTRANSCOST法が一般に用いられる.しかし, PAVは市販された完成機の数が少なく, TRASNCOST法を用いて統計的に推算できないという限界がある.本研究の目的は, PAVの価格を簡易的に推定するモデルを開発することである.
・研究方法として, PAVは回転翼機(ヘリコプター)と電気自動車の2種類の移動手段が結合したシステムであると仮定する. これら2種類の実在するデータ(人数, 重量, 価格)を基に飛行機能と走行機能とに分けて回帰モデル(人数‐重量)を作成する. 飛行機能に係る機体重量と走行機能に係る機体重量の結合によりPAVの機体重量を推定するモデル(人数‐重量)を作成する. 回転翼機の機体価格に係る回帰モデル(重量‐価格)を作成し, PAVの搭乗人数からPAVの価格を推定した.
・モデルによるPAV価格推定の結果として, 固定翼PAVの価格はモデルによる推定結果から離れた結果となった. 一方, 回転翼PAVの販売価格は価格推定モデルに当てはまる結果となった.従って, 回転翼PAVを想定したPAVの価格推定モデルとしては, 一定の妥当性を有するのではないかというのが現時点での研究成果である.

 
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