リサーチプロジェクト
研究報告会レポート

第1回顧客価値創造型営業戦略研究
報告会レポート
「ビッグデータを活かす!」

第1回顧客価値創造型営業戦略研究報告会 > 研究会の詳細はこちら
情報通信学会関西センター・日本マーケティング学会共催セミナー
テーマ:「ビッグデータを活かす!」
日 程:2014年10月25日(土)17:00-20:00
場 所:関西学院大学大阪梅田キャンパス 1005教室

 

【報告会レポート】
 今日、産官学いずれの分野でもビッグデータに関する議論が広く行われており、その議論の領域も技術、マーケティング、法規制など様々な領域に及びつつあります。
 今回は情報通信学会と日本マーケティング学会から、学際的な視点が今後のビッグデータ活用に関して重要であるという主旨に基づき、27名が参加。研究者、実務家それぞれから、国内外の事例について講演いただきました。
 
巳波弘佳(みわひろよし)先生 会場の様子
写真左から、巳波弘佳(みわひろよし)先生、会場の様子
 

 お一人目の登壇者は、巳波弘佳先生(関西学院大学 理工学部情報科学科 教授)。「ビッグデータの時代における新たなパラダイムとその限界~ビッグデータは『理論の終焉』をもたらすか?~」をテーマにお話いただきました。ビッグデータが注目される背景として、大規模なデータを安く集めて扱えるようになり、きちんと整理、分析すれば、「商売(重要な知見)になる」ことを挙げられました。そして、実務家にとっては結論(相関関係)さえわかれば、その理由はわからなくても使える。そのことは『理論の終焉』をもたらすか」と問題提起されます。しかし、相関と因果は混同されやすく、例えば、「アメリカのメイン州の離婚率」と「アメリカのマーガリン消費量」は極めて強い相関がありますが、どう考えても因果関係はない。すなわち、「数字自体は何も語らない。語るのは私たちだ。(ネイト・シルバー)」と結論づけられました。

 

 お二人目は、市嶋洋平氏(日経ビッグデータ 副編集長)。今年3月に創刊した「日経ビッグデータ」、2014年で2年目となる「ビッグデータ総覧」で紹介した事例を中心にご紹介をいただきました。現在、「ビッグデータ」が「データ分析の効能」のレベルで語られ、「ビジネス成果の効能」のレベルまで行っていないことも多いと指摘されます。その中で現時点でのベストプラクティスと考えられる30社超の国内外事例について、データ収集・アナリティクス型、生活者データ活用型などの類型化を試みながら、詳しく述べられました。また、顧客価値創造型営業戦略研究会としては、200社が回答したアンケート調査で「データ活用で成果を上げた」と答えた部門の割合が、リアルタイムで成果を求める「販売部門」が最も低いという結果に関心を持ちました。

 
「ビッグデータの定義」を説明する市嶋洋平氏
「ビッグデータの定義」を説明する市嶋洋平氏

 

 三人目は、大塚武氏(グーグル株式会社 ブランドソリューション営業本部 アナリティカルリード)が登壇され、「ビッグデータを活用したデジタル広告ソリューション」についてお話いただきました。「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」経営理念のもと提供される、現在の主要な三つの広告ソリューション(①検索連動広告、②ディスプレイ広告、③動画広告)の強みは、「高精度のターゲティングテクノロジー」とのこと。Where?(どこに広告を出すか?)とWho?(誰に広告を出すか?)を、200以上のアルゴリズムから、極めて合理的に狙い定めます。ある企業のキャンペーン事例で、テレビCM広告とWEB広告の予算割合を9:1にして、効果検証を行ったところ、接触(リーチ)は同等に近く、キャンペーン応募の向上率はWEB広告が大きく上回ったことが報告されました。会場との質疑応答で「グーグルは、広告企画の会社ではなく、広告技術を提供する会社」との発言が印象的でした。
 
グーグルが保有する桁違いの「データ」を紹介する大塚武氏
グーグルが保有する桁違いの「データ」を紹介する大塚武氏
 

【報告会を終えて】
 一通りの報告を聞いて、「データがあるから何か使えることはないか」と考える企業(日本企業に多い?)と、「どのようなデータがお金を生むか」と考え抜いてビジネス展開する起業(Google、Amazonなど)の差は開く一方になるのではないかとの感想を持ちました。「ビッグデータ」という言葉は文字通りの「ビッグワード」であり、その言葉に踊らされることなく、自社ビジネスの価値と機会を徹底して考え抜くことこそが「ビッグデータ」活用の本当の近道かもしれません。また、学術的には、「ビッグデータ」が、「統計学」「データマイニング」などの理論をどのように変えるのかについても、引き続き注視していきたいと考えます。
 

(企画運営メンバー:本下真次)

 

 
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