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研究報告会レポート

第10回ソーシャル・メディア&ビジネス研究報告会レポート「シェアリング・エコノミー –空間資源活用による需要創造」

第10回 ソーシャル・メディア&ビジネス研究報告会 > 研究会の詳細はこちら
テーマ:「シェアリング・エコノミー –空間資源活用による需要創造」
ゲスト:株式会社スペースマーケット 代表取締役 重松 大輔 氏
    マグネットミーン株式会社 代表取締役 奥村 聡 氏

日 程:2015年7月6日(月)15:00-19:30
場 所:チャータードビル

 

 第10回のソーシャル・メディア&ビジネス研究会は、空間(スペース)のマッチングビジネスの概要と構築プロセスに関する講演を頂く。さらに、司法書士のキャリアを活かし、神戸地区で地域創生を、起業家が事業活動を行う場の創造と起業家育成の両面から取り組む、マグネットミーン株式会社 代表取締役 奥村聡 氏に活動概要とその仕組みについて講演を頂いた。
 
チャータードビル チャータードビル
会場のチャータードビル
 

●スペースマーケットの事業と仕組み
 スペースマーケットは、2014年に設立された企業である。NTT東日本で企画、プロモーションを担当した、重松大輔氏は、2006年にNTT東日本時代の先輩が立ち上げた、スタートアップ企業に入社し、ウェディング分野の事業を立ち上げる。結婚式場が平日昼間に施設が稼働していない実態を目のあたりにしたことが、現在の事業を着想するきっかけなった。100近いビジネスモデルを検討し立ち上げたのが現在の企業である。2014年8月には、優れたスタートアップを表彰するライジングエキスポ2014年でグランプリを獲得している。
 
重松大輔氏
重松大輔氏
 

 ビジネスモデルの概要は以下の通りである。
 まず、施設(スペース)を所有する貸し主がスペースマーケットのウェブサイトに登録を行う。
https://spacemarket.com/
 
 同じくサイト登録した借り主は、ウェブサイトを使って条件に合う施設の検索を行う。条件に合う施設の貸し主とウェブサイトを通じて直接契約を行う。ポイントは、1)施設の発掘と、2)検索条件の設定、3)使用イメージを広げる詳細な情報掲載である。この3点を確認しよう。
 

1)施設の発掘は、結婚式場、会議室に留まらない。古民家、帆船、電車車両、映画館、スポーツ施設など通常、借り主がいるとは思えないような施設(スペース)が並ぶ。このような意外な施設をラインナップすることで、従来、借り手として存在しなかった顧客を掘り起こすことにつなげる。

 意外な施設を掲載しただけでは、実需につなげることは難しい。そこで、

2)そのような施設に需要を生み出すのが、検索条件の設定である。ウェブサイトの施設検索のキーの一つである使用目的には、オフィス、イベント、結婚式二次会、パーティ以外にも、ロケ撮影、個展・展示会などが存在する。どのような目的がどの施設で可能かを関連付ける発想力が要求される。

 しかし、新たな借り手が新たな目的で施設を使用するためには、借り手の立場に立った情報が掲載されている必要がある。それが、

3)使用イメージを広げる詳細な情報掲載である。施設の写真も外観、内装はもとより、各部屋の複数枚の写真、部屋から見える光景などを掲載している。さらに設備情報は、Wifi、プロジェクター、ホワイトボード、キッチン用品、食器類、シャワーなど多様な使用をイメージした設備整備とその情報掲載をしている。さらに各施設には、実際の使用者のコメントが、どのような目的で使用したかも含めて記載されている。この使用目的のキーが検索キーと連動している。
 
●マグネットミーンの事業活動と仕組み
 行政書士の資格を持ち、以前は地域で最も大きな行政書士事務所を経営していた奥村聡氏。
 
奥村聡氏
奥村聡氏
 
 リノベーションを切り口にした起業家育成教育をはじめ、神戸を拠点に、中小企業の事業継承、再生支援を行う。施設のみならず、企業、人材の再生に取り組んでいる。
http://www.office-okumura.jp/category/column
 
 後継者がなく廃業を選択肢に入れている経営者が存在する。しかし一方で事業に取り組みたい人々が存在する。この2者を、マッチングのみならず教育、経営支援をも含めたパッケージで提供する仕組みを提供するのが、奥村氏の事業である。現在、事業継承の支援を行いつつ、継承が可能な人材の育成を行うための教育事業、「リノベーション起業カレッジ」を展開し、神戸の様々な地区での地域、経営の再生に取り組んでいる。その原点は、大学時代を過ごした西宮市甲陽園にあった、はり半にあると言う。昭和天皇、現在の天皇陛下も宿泊され、約一万坪を有した敷地に広大な庭園を備える料亭であった、はり半は、谷崎潤一郎の細雪にも登場する。しかし2005年6月に廃業しその後、住宅施設になった。このことを知った、奥村氏は事業継承の重要性ともに、歴史的建築物が後生まで継承される重要性を認識した。その二つのテーマが現在の事業モデルに組み込まれている。
 
 ふたりのゲストの講演のあと、フロアからの質問を交え、スペース資源の発掘と新たなビジネスモデルの可能性について活発な意見交換がなされた。
 重松様、奥村様はじめ、参加頂いた皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。
 

 
●おわりに
 近年、さまざまなスペースをシェアリングする対象として発掘し、そのスペースを使った新たな価値を創造するビジネスプラットフォームが注目を集めている。例えば、世界190ヶ国、3400都市における宿泊施設を提供する、Airbnbは、空いている宿泊施設のみならず、空きのある個人所有のお城や、個人宅、部屋などを新たなスペースを空きのある時間を対象として、インターネットによる広域的な顧客接点をもとに新たな需要を創造している。スペース以外にもハイヤー、タクシーなどの移動手段をシェアリングするUberもその一つである。
 社会に眠れる資源を発掘し、ソーシャルメディアを活用しながら新たな顧客を創造する、シェアリング・エコノミーの分野は、本研究会の名称である、ソーシャル・メディア&ビジネス研究会にまさにふさわしい分野である。マーケティング研究の分野でさらに多くの関与者と共に、現実と研究が連動するかたちをつくる予定である。
 
集合写真
集合写真
 
 また、会場は、神戸の旧居留地に位置する、ジェイ・モーガンの設計による1938年建築のビル(チャータードスクェア)を奥村様、福井先生に手配頂くことによって、今回のテーマにまさにふさわしい会場となった。

 
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