第39回マーケティングサロンレポート 「企業は、ユーザーコンテンツとどう付き合っていくのか?」 |
第39回 マーケティングサロン
「企業は、ユーザーコンテンツとどう付き合っていくのか?」
日程:2015年10月27日(火)19:00~21:00
場所:日本マーケティング協会 東京本部
ゲスト:株式会社オプト ソーシャル・アナリティクス部 部長 山田 智恵 氏
シャトルロックジャパン株式会社 代表取締役社長 松山 仁 氏
サロン委員:佐藤 圭一
【サロンレポート】
近年、ソーシャルメディアを利用するユーザーは爆発的に増えています。そして、ユーザーが作成したコンテンツ(写真や動画、文章など)は、facebookやtwitter、instagramなどのソーシャルメディアやウェブ上に日々更新されており、その情報量は計り知れないほど多くなってきております。
企業が発信する情報量よりも、ユーザーが発信する情報量のほうが圧倒的に多くなった今、企業やマーケターもユーザーコンテンツとどう付き合っていくべきかという課題は、今後のマーケティングを考える上で非常に重要です。
その解決策の一つとして、Shuttlerock(シャトルロック)では企業のオウンドメディアに、積極的にユーザーコンテンツを活用していくことを提案しています。シャトルロックは、ニュージーランドでスタートし、今は日本・米国・豪州でサービスを展開しているグローバル企業で、ユーザーコンテンツを活用する様々な事例作りをお手伝いしています。
今回のサロンでは、eマーケティングカンパニーである株式会社オプトのソーシャルメディア事業部門でシャトルロックの販売代理店の責任者を務める山田氏と、シャトルロックジャパン株式会社 代表取締役社長の松山氏という、ユーザーコンテンツを活用したマーケティング活動における最前線でご活躍中のお二人をゲストに、ユーザーコンテンツ活用の最新事例や海外の動向をご紹介いただき、これからのマーケティングについて考えていきました。
<ゲストプロフィール>
山田 智恵(やまだ ともえ)氏
株式会社オプト ソーシャル・アナリティクス部 部長
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。凸版印刷株式会社にてコーポレートブランディングのコンサルタントに従事した後、株式会社オプトのソーシャルメディア事業本部に参加。Shuttlerockの販売代理店の責任者として、日本市場導入を進めている。また、JWLI(日本女性リーダー育成支援事業)のフェローに選出されるなど、新しい世代の女性リーダーとしても活躍。著書に「インスタグラム・マーケティング入門」。
松山 仁(まつやま ひとし)氏
シャトルロックジャパン株式会社 代表取締役社長
学生時代からネット広告の営業を開始し、新卒で株式会社インテリジェンスに入社。ネット広告事業の立ち上げを経て、2009年株式会社g&hを創業。2011年に企業やユーザーコンテンツを活用した、ブランドとアーティストを繋ぐマッチングサイトgetstageのサービスを開始。現在では3万人近いアーティスト登録と700社を超えるクライントが登録している。
【概要】
■ユーザーコンテンツのチカラ
ユーザーコンテンツとは、生活者が作成する写真・動画・テキストを指します。近年、「量・質・信」という3つの点からユーザーコンテンツの影響力が大きくなってきているとのことです。
- 量が多い
Facebookでは3億5000万枚/日、インスタグラムでは7000万枚/日の写真が毎日アップされていると言われています。ユーザーは様々なメディアにコンテンツをアップすることに慣れてきており、傍観者ではなく発信者になるユーザーが日々増えてきています。この量は今後も減ることなく、増える一方だと考えています。また、ユーザーが発信するコンテンツ量と比較すると、企業1社が発信するコンテンツ量は比較にならない量になってきています。この圧倒的な量のユーザーコンテンツは企業側も無視できない存在になってきています。 - 質が高い
スマートフォンのカメラ技術の向上、およびユーザーの写真撮影テクニックの向上により、ユーザーコンテンツの質は非常に高くなってきています。ファッション誌でも、写真の撮り方のコーナーを多く目にするように、ユーザーは日々コンテンツの質を上げることに夢中になっています。ハッシュタグで検索をかけると、非常にレベルの高いユーザーコンテンツが確認することができます。 - 信頼度が高い
広告やブランドメッセージに対する信頼度調査によると、1位は「知人からの紹介」、2位は「企業のHP」、3位は「インターネットの消費者の意見」というランキングになっています。ユーザーコンテンツは1位と3位に当たり、非常に信頼度が高いコンテンツとなっていることが分かります。ユーザーは、企業側の一方的なコンテンツだけでなく、実際に商品やサービスを経験したユーザーの中立的なコンテンツも確認してから、購入を検討するようになってきています。
以上のような状況のなか、ユーザーコンテンツとどう付き合うかを考えることは、企業にとって非常に重要なマーケティング課題となっているという説明がなされました。
■グループディスカッション
その後、グループごとに、参加者が属する組織や扱っているブランドに関してユーザーがどのようなコンテンツを発信しているかを調べてもらい、グループ内で共有してもらいました。インスタグラムとツイッターの両方を調べてもらいましたが、想像以上にいろいろなコンテンツがアップされているのを見て驚く参加者や、逆にほとんどアップされていないのを確認できた参加者の両方がいました。また、企業イメージにそぐわないコンテンツがたくさんアップされているのを見て、何か対策が必要であると危機感を覚えた参加者もいました。
■シャトルロック 事例の紹介
続いて、シャトルロック社の様々な事例をご紹介いただきました。シャトルロックというサービスは、ユーザーコンテンツをオウンドメディアに反映させることができる新しいシステムです。使い方は大きく3つのパターンに分かれ、それぞれの最新事例をご紹介いただきました。
- コミュニティサイトとしての活用事例
家具メーカーが、自社の家具を実際に購入された方にお部屋全体のインテリア写真をアップしてもらう事例を紹介されました。そのメーカーのファンとしては、多くのリアルなインテリアを見ることができ、サイトのPVが非常に高かったとのことです。 - ECサイトと連携した活用事例
靴のブランドで、ユーザーがコーディネイトした写真をアップしてもらい、その写真に「購入する」ボタンを付けて、直接購入画面に遷移する事例を紹介されました。商品のクローズアップ画像ではなく、実際のユーザーが商品を身に着けている画像を見ることで、ユーザーはよりリアルに商品の魅力を感じとってくれるという新しい事例でした。 - キャンペーン的活用事例
テーマパークへの来場者を増やすために、コンテンツに「いいね」や「シェア」をしてくれたユーザーにクーポンを配布するキャンペーンを紹介されました。実際にテーマパークに来場されたユーザーが写真をとり、それを見た他のユーザーがサイト上でアクションすることでクーポンがもらえるという、ユーザー同士でサイクルを生み出す興味深い事例でした。
会場の様子
■質疑応答
最後に質疑応答では、BtoB企業の場合にユーザーコンテンツがイメージしづらいが、何か良い事例はあるか?といった質問や、EC的利用の場合ユーザー側にどうやって許可をとるのか?といった多くの具体的な質問がされました。質疑応答は時間内に終わらず、サロン終了後もゲストへ直接質問にくる参加者が多く、参加者の関心の高さを感じられました。
集合写真(前列中央が山田氏、松山氏)
【サロンを終えて】
テクノロジーが進化をし、コミュニケーションのあり方が劇的に変わってきた今、企業がマーケティングを考えるにあたって「ユーザーコンテンツ」に注目していくことは非常に重要であると感じました。今回のサロンでは、ゲストのお二人に多くの事例をご紹介いただきながら最新動向をわかりやすく解説していただきました。ゲストをお引き受けいただきました山田様と松山様、そしてご参加いただきました皆様に、あらためて感謝申し上げます。
(サロン委員:佐藤圭一)