第47回マーケティングサロンレポート「定額映像配信サービスが変えるアニメコンテンツ市場の未来」 |
第47回 マーケティングサロン
「定額映像配信サービスが変えるアニメコンテンツ市場の未来」
日程:2016年4月29日(金)16:00-18:00
場所:早稲田大学 11号館902教室
ゲスト:(株)KADOKAWA 映像事業局 栁瀬 一樹 氏
サロン委員:薮原和雄・中谷淳一
【サロンレポート】
今回のサロンは、「定額映像配信サービスが変えるアニメコンテンツ市場の未来」と題しまして、NTTドコモでアニメ特化型の映像配信サービス「dアニメストア」のサービス企画・運営を担った経験をお持ちで、現在は、KADOKAWA映像事業局でコンテンツ制作側のビジネスを企画されている栁瀬 一樹様をゲストにお招きして、定額映像配信サービスの現在とこれから、そしてアニメコンテンツビジネスの現状について語っていただきました。
栁瀬氏
映像配信サービスについては、市場環境およびビジネスモデルについて整理いただきました。
- ビデオソフト市場のパッケージ販売・レンタルは縮小傾向にあり、配信事業が伸びてきているものの縮小分を補い切れておらず、配信事業も2011年のHulu上陸後も爆発的な拡大は見られず漸増の状況にある。
- 国内の映像配信サービスは、大きく3つのプレーヤーが存在しており、HuluやNETFLIXなどの巨大な顧客基盤を抱えた外資大手、自社ポータイルやデバイスを活用したNTTドコモ、au、ソフトバンクなどキャリア系、コンテンツを有するTV局系となっている。
- 現在は、世界的なコンテンツの取り合いが起こっているが既存コンテンツによる差別化は難しく、いかにオリジナルコンテンツを制作していくかがカギになる。
一方で国内はキャリア勢の先行メリットが大きいとの分析がありました
- アニメコンテンツビジネスは、現在年間320本以上の新作アニメが制作されているが、供給過多の状態になっており、アニメファンはこれらの作品のほとんどを視聴しきることができず多くの場合最初の数話で視聴を中断している、もしくは1話も視聴されないのが現状(通称「3話切り」や「0話切り」)
- にも関わらず、アニメが増産されるのは製作員会への出資が後を絶たないからで、従来のビデオメーカー、TV局、配給会社、出版社などに加え、外資映像配信企業や、国内のナショナルクライアント(コンビニ、アパレル等)、遊技機メーカーなど異業種の参入が見られる。外資映像配信企業については全世界配信でのマネタイズを、国内企業については作品とのコラボレーションによる既存事業の販売拡大が目的。
- 現在、NETFLIXやAmazon プライム・ビデオの1社独占配信事例も増えており、出資者についてもその出資額の内訳についても大きな変化が起きており、従来の製作委員会方式は今後大きな転換を迎える可能性がある
【サロンを終えて】
栁瀬様の話の中で、アニメの制作本数は増えているものの制作現場は低賃金・長時間労働の環境で疲弊している現実の一方で、NETFLIXのような外資映像配信企業による大型投資とその資金によって制作された作品が海外プラットフォームを通して世界に広がる可能性は、制作現場を潤わせる可能性もあるという話が非常に印象的でした。
今回は会員以外の方にも門戸を広げたことで、アニメや映像関連者も出席いただき、活発な質疑が行われ、懇親会も非常に熱いものになりました。
集合写真(前列中央が栁瀬氏)
(サロン委員:薮原和雄・中谷淳一)