ニュースリリース

第73回マーケティングサロンレポート「JAXAのマーケティング」

第73回 マーケティングサロン
「JAXAのマーケティング」
日程:2018年4月18日(水)19:00より
場所:法政大学 市ヶ谷校舎 ボアソナード・タワー25階
ゲスト:山方 健士 氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA)国際宇宙ステーション広報)
サロン委員:海野 浩三・清原 康毅・白井 明子
 
【ゲストプロフィール】
山方健士氏山方氏は、2000年4月、宇宙航空研究開発機構(旧 宇宙開発事業団)に入社。日本人宇宙飛行士の訓練担当、宇宙服研究担当、宇宙日本食・船内被服の海外調整担当、新事業促進部などの業務を経て、現在は国際宇宙ステーションの広報を担当しています。
 

【サロンレポート】
 今回のサロンでは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の広報担当の山方健士氏をスピーカーにお迎えして、JAXAの取り組み、JAXAの狙い、JAXAとのコラボレーションを行う為のコツなど、お話し頂きました。

 
【人々と宇宙との関係】
 最初に、「皆さんにとって宇宙とは?」という投げかけから始まりました。「遠い存在」、「無重力」などの声が上がりましたが、実は我々の生活に宇宙の技術が活かされているそうです。例えば、スマートフォンのカメラは探査機の技術であるCMOSセンサーが活用されていますし、宇宙食の管理工程から「HACCP」という食品管理の手法が生まれています。
 
【JAXAとは】
 2003年に3機関(宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所、宇宙開発事業団)が統合して誕生しました。国の宇宙開発利用を技術で支える機関として、基礎研究~開発・利用まで一貫して行っている機関です。準天頂衛星の「みちびき」は一号機をJAXAが打ち上げ、二号機以降は内閣府に引き継いでいます。
 JAXAは宇宙基本計画に則り、民生分野における宇宙利用の推進を進めています。宇宙関連産業は、宇宙機器産業(人工衛星、ロケット)を筆頭に、宇宙利用サービス産業(通信放送衛星など宇宙インフラを利用したサービス)、宇宙関連民生機器産業(GPSを利用したカーナビ)、ユーザー産業(宇宙利用サービスを利用した産業)のピラミッド構造となっており、今後は産業の裾野を広げたい考えです。
 宇宙関連技術を活用したサービス事例には、①精度の高いナビゲーション(高精度のGPSを利用した無人農業)、②農業(うれしの茶の収穫期を判定)、③宇宙漁法(海水温、海流などを使い、適切な漁場を識別)などがあります。
 
【宇宙を使う】
 宇宙を使うビジネスには①宇宙への適用(スピンイン)、②宇宙技術の活用(スピンアウト)、③宇宙の利用の3種類があります。①スピンインでは、宇宙用のモノを作るのではなく、宇宙でも使える良いモノを作るべきと考えています(ビジネスの広がりがない為)。特にJAXAでは、日本の技術を宇宙で使いたいと考えています(日本の宇宙食を海外でも使って貰うなど)。②スピンアウトでは、宇宙用に開発されたセンサーがスマートフォンのカメラで使えたように、宇宙の技術が日常生活で使える事が望ましいです。例えば、向井千秋さんの宇宙飛行に携行したバラが飛行中、香しくなった研究結果を基に、バラの香料開発に至った様な事です。
 
【知って貰う】
 山方氏の重要な役割としては、「日本が宇宙をやっている」という事を広め、皆様に興味を持って貰う事です。例えば「宇宙兄弟」の問い合わせ対応がそうです。「宇宙訓練とはどういうものか」、「宇宙探査とはどういうものか」などの質問に対して回答しています。「宇宙兄弟」のおかげでJAXAが身近になり、認知度が大きく向上したそうです。
 また意外なところでは、JAXAの発想方法(商品を目的、機能、手段に分解し、商品に必要な要素の最適解を見つけていく)を大学で講義を行い、学生たちが活用し、ビジネス分野への応用可能性について試行されたようです。(例:電動ハブラシの機能を野菜の洗浄技術に応用)
 

当日のサロンの様子
 

【感じて貰う】
 宇宙技術の活用(スピンアウト)の取り組みには、宇宙で使用される宇宙服の中で着る冷却下着の技術を活用した「冷却ベストの開発協力」があります。元々は、(暑い中仕事をする)作業者の利用を想定して開発した商品でしたが、意外にもお坊さん(夏の暑い日に袈裟の下に着る)やお医者さん(手術中に着る)なども購入されたそうです。この様に宇宙で培った技術を活用して商品開発し、宇宙を身近に感じて貰う取り組みもJAXAにとって重要な活動になります。
  
【JAXAと協業するために】
 今後、JAXAと協業に当たり、JAXAに対し「何かできませんか?」との質問はNG(NiGate:苦手)ワードです。理想としては、「わが社の強み、オリジナルの技術」を言ってもらえると良いです。「○○を解決するのに、JAXAの技術を使えないか?」、「人工衛星を使って○○してみたい」、「宇宙環境を使って○○してみたい」などの声を掛けて頂けると話が進み易くなります。なお、JAXAは数字、論文、実績が好きなので、相談を受ける際には実績重視な側面があるそうです。また広報の立場としては、皆さんに幅広くJAXAの活動を知って頂く機会になるのであれば協力したいと考えているそうです。ただ、判断に時間が掛かるため、相談はお早めにとのことです。
 

集合写真(前列中央 山方 健士氏)
 
【サロンを終えて】
  山方様の話は、「宇宙の技術を民間利用したい。民間の優れた技術を宇宙に活用したい」との主張が明確で、大変分かり易い話でした。縁遠いい存在であったJAXAさんを身近に感じる事ができました。サロンの終了間際に山方様が、「NASAとJAXAの違いは、ラピットプロトタイピングか、石橋を叩いて進めるか、の違い」とおっしゃっていたのが個人的に刺さりました。「国民性の違いが如実に出ているな」と。
  最後になりますが、ゲストスピーカーをお引き受け頂きました山方様、ご参加の皆様に改めて感謝申し上げます。
 
(文責:清原康毅)

 
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