第78回マーケティングサロンレポート「思考を深め、言葉を磨く」~マーケターこそ、「言葉にできる」は武器になる!~ |
第78回 マーケティングサロン(東京)
「思考を深め、言葉を磨く」
~マーケターこそ、「言葉にできる」は武器になる!~
日程:2018年7月20日(金)19:00
場所:日本マーケティング協会 東京本部
ゲスト:梅田 悟司 氏(電通 コピーライター)
サロン委員:佐藤 圭一・尾崎 文則・山谷 あすか・金 泰元
【サロンレポート】
20万部を超えるベストセラーとなった『「言葉にできる」は武器になる。』
これほどまでに多くの方に愛読された理由は、ビジネスコミュニケーションから就職・転職活動、そしてプライベートでのコミュニケーションまで、さまざまなシーンで “言葉”と“思考”が必要とされていることからでしょう。
「内なる言葉」と向き合う方法、正しく考えを深める「T字型思考法」、プロが行う「言葉にするプロセス」。
すべてのビジネスパーソン、マーケター、研究者にとってきっと役立つ“人が動きたくなる言葉の秘密”とはどのようなものなのでしょうか?
今回のマーケティングサロンでは、電通でコピーライターとしてご活躍中で、同書の著者でもある、梅田悟司氏をゲストにお招きしました。
「言葉にできる」とはどういうことなのか?
思考を深め、言葉を磨いていく具体的な方法を、書籍の内容を基にワークショップを交えながら詳しくご説明いただきました。
【ゲストプロフィール】
梅田 悟司 氏
クリエーティブ・ディレクター、コピーライター
1979年生まれ。大学院在学中にレコード会社を起業後、電通入社。マーケティングプランナーを経て、コピーライターに。直近の仕事に、ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」コミュニケーション・ディレクターなどがある。CM総合研究所が選ぶコピーライターランキングトップ10に、2014~2017年と4年連続選出される他、国内外30以上の賞を受ける。著書に20万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』(日本経済新聞出版社)等。日本デザイン学会正会員、日本広告学会正会員。横浜市立大学客員研究員、多摩美術大学非常勤講師。
【概要】
「自分の気持ちを言葉にできていますか?」
サロンはこのような問いかけから始まりました。
当たり前だからこそ、あまり考えたことがないからこそ、言葉にできない、ということはどなたにもあることでしょう。
今回のサロンはすべての表現の基礎となる「言語”化”」について考えていきます。
特に無意識を意識する、ということに取り組んでみましょう。
そのために、内なる言葉に意識を向けること、そのための方法論「T字型思考法」、そして、「言葉にするプロセス」をワークショップで取り組んでいきます。
「言葉にできる」とはなにか?
そもそも「言葉にできる」とはどのようなことなのでしょうか?
「言葉にできる」こととは、次の2つに分けることができます。
①考えていることを把握し、
②相手に伝わる言葉にする力
私たちは何か表現しようとするときに、表現の仕方、つまり②のテクニックやスキルに問題があると考え、そのようなテクニック、スキルを学ぼうと飛びつきがちです。しかし、①こそが大切です。伝えたいこと(考えていること)があいまいでは、結局何も伝えられない、という経験は誰しもにあることではないでしょうか。
そもそもコミュニケーションとは何なのでしょうか。
内容と波及力という観点から見てみると、いくつかの段階があります。
まず「事実」に対する理解、「価値」に対する納得、「思想」に対する共感、そして「ビジョン」に対する行動です。コミュニケーションの相手はビジョンに対して自分ゴト化してもらうことができます。「考え抜かれた言葉は、人々を導く旗になる」のです。
したがって、自分のなかに潜在的にある「ビジョン」をつかみとり、言葉にしてあげることこそが、コミュニケーションの核といえます。
「内なる言葉」の解像度を高めることが、よく考えることの正体である。
それでは、実際にどのように言語化していけばよいのでしょうか。
言語化にあたっては「外に向かう言葉」だけではなく、「内なる言葉」に目を向けることが大切です。
「外に向かう言葉」とは、普段「話す」「書く」「打つ」といったことをしている言葉です。そして、「内なる言葉」とは、普段「考える」「感じる」時に頭に浮かぶ言葉です。具体的には次の3つのステップで取り組んでみましょう。
STEP1:「内なる言葉」を書き出す
STEP2:解像度を高める
STEP3:言葉にしてみる
何か問いを投げかけられた際に、頭の中にいろいろな言葉が浮かんでいるはずです。
そういった「内なる言葉」をまずは書き出してみましょう。そうすることで、自分自身の思考を客観的に把握することができます。
こうした内なる言葉を外に向かう言葉に磨き上げていくためにはどうすればよいのでしょうか。
それは外に向かう言葉のタネとなる内なる言葉の「解像度を上げる」ことです。
解像度とは画像や写真の精度を指標化したものです。思考の解像度が低いと思考や感情は漠然としていて、自分自身が何を考え、感じているか正確に把握できていません。
一方、内なる思考の解像度が高いと何を考えているか、何をしたいかが鮮明で、話す、書く、打つための内容が把握できています。
連想と深化を促す「T字型思考法」
それでは、内なる言葉の解像度を高めるためにはどのようにすればよいのでしょうか。
内なる言葉の解像度を高める思考方法がT字型思考法です。
頭に浮かんだ内なる言葉に対して、なぜ?それで?本当?と問いかけることで思考の連想と深化を促すことができます。
1. なぜ?:考えを掘り下げる
2. それで?:考えを進める
3. 本当?:考えを戻す
まず、内なる言葉がなぜ浮かんだのか、その理由を掘り下げてみましょう。
次に、今考えていることが実現したときにどんな結果が生まれるのか、どんな効果が生まれるのかを考えてみましょう。
そして、自分が考えていることに「本当に?」と自問自答することでより広い視野で物事を捉えなおしてみましょう。
いろいろなテーマを設けて実際にぜひ自分自身に問いかけてみてください。
集合写真(前列中央 梅田悟司 氏)
【サロンを終えて】
世の中では様々な思考法やコミュニケーションのテクニック本があふれています。
しかし、外に向かう言葉の前に、内なる言葉に意識を向けてみる、という梅田さんの指摘は新鮮でした。
確かに、まずは何を言葉にしようとしているのか、という内なる言葉の解像度を上げてこそ、言葉にすることができることをワークショップを通じて再認識しました。
ビジネスパーソンのみならず、多くの方に同書が愛読されていることも納得です。
今回のサロンを快く引き受けてくださった梅田さんにこの場を借りて改めてお礼申し上げます。
(文責:尾崎文則)