ニュースリリース

第85回マーケティングサロンレポート
「カスタマージャーニーからマーケティングを考える」

第85回 マーケティングサロン:東京
「カスタマージャーニーからマーケティングを考える」
日程:2019年1月16日(水)18:30-
場所:共立女子大学 一ツ橋キャンパス 2号館 802講義室
ゲスト:武蔵野大学 経営学部 教授、マーケティングジャーナル編集長 古川 一郎 氏
    オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員 Chief Omni-Channel Officer 奥谷 孝司 氏
サロン委員:浅倉 泉・飯島 聡太朗・織田 由美子・谷 雨・加藤 貴大
 
【サロンレポート】
 今回は「カスタマージャーニーからマーケティングを考える」と題して,サロンと新年会を兼ねたかたちで開催されました。奥谷氏からは「Omni-Channel時代のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略」と題して,また古川氏からは「カスタマージャーニーからマーケティングを見直す」と題してご講演頂きました。その後はお二方による対談的なお話を交えつつ,会場とのディスカッションが活発になされ,カスタマージャーニーの可能性や課題などについて共に考えました。なお,今回の新しい試みとして,大阪会場とのインターネット同時中継を行いました。
 

会場の様子
 
「Omni-Channel時代のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略」
 最初に奥谷氏より,チャネルシフトについて説明がなされました。ここでいうチャネルシフトとは,オンラインを基点としてオフラインに進出し,顧客とのつながりを創りだすことによって,マーケティング要素自体を変革しようとする戦い方です。例えばスマホ・アプリなどによる企業と消費者のつながりを前提に,オンラインの優れた買い物体験を,オフラインにも展開するわけです。このとき重要となるのが,顧客時間という考え方です。
 顧客時間は,単に製品の購入(・売上)のみにとらわれるのではなく,「購入」の前段階の「選択」と,購入後の「使用」に目を向けることの大切さを教えてくれます。「選択・購入・使用」からなる顧客時間の全体に目配りすることで,売上のみならず顧客とのエンゲージメントをつくることが肝要です。
 従来のマーケティングの多くが選択・購入時間にこだわってきましたが,購入・使用時間への対応が必要であることは明らかです。そして,使用時間の顧客行動データに基づいた提案のある購買体験は,単なる店舗の体験を超えたところにあります。ただし忘れてはならないのは,オフラインを軽視するのではなく,オンラインとオフラインの両方を駆使しながら顧客時間を豊かにしていくことです。顧客とデジタルにつながりつつ,オンラインを起点とするビジネスモデルをつくることを通じて,マーケティングは大きく変わっていく可能性があります。
 
カスタマージャーニーからマーケティングを見直す
 続いて古川氏より,従来のマーケティング・リサーチと現実との「ずれ」を理解することの重要性が議論されました。これまでに多くの知見が,自由意思によって選択するという人間理解に基づいて蓄積されてきましたが,この基本的な想定では捉えられない現象が明らかとなっています。
 カスタマージャーニーという見方は,文脈が選択に与える影響を考慮することの重要性を教えてくれます。人は置かれた文脈のなかで選択し,気づき,学習し,次なる文脈・選択へ臨むことを繰り返しています。このような経験の蓄積を通じて,個人や社会の変化が生じると考えることができます。反日感情が深刻な問題となる場合に,中国の消費者の日系商品に対する態度や評価に関する調査データと実際の購買データに不一致がみられることが知られていますが,古川氏は,このような言説と行為の矛盾を引き起こす原因を,消費者が置かれた文脈の違いという視点から考察しています。
 人は選択に必要な情報を,意識的,無意識的に選び取っていますが,マーケターは文脈が形成される場をデザインすることでこうした情報を操作することが可能です。このことは価値共創概念とも親和性が高いといえます。望ましい価値共創を実現するには,それに相応しい文脈を考える必要があるわけです。
 文脈のコントロールを考えるにあたって取り組むべき課題は研究と実務の両方にありますが,それらへのチャレンジを通じてマーケティング活動の質的向上を目指す必要があります。
 

(左)古川一郎氏,(右)奥谷孝司氏,(奥)大阪会場の様子
 
【サロンを終えて】
 今回のサロンでは新しい試みとして,大阪会場へのインターネット同時中継を行いました。事前準備から,小宮信彦さまをはじめ大阪会場の皆さまには,大変お世話になりました。出席者からの質問も多く出て,カスタマージャーニーについて多角的に考えるよい機会になったと思います。また今回は,サロン委員・一橋チームに,一橋大学の鎌田裕美先生,シンフロンテラの雷蕾さんに加わって頂きました。運営協力頂いた皆さまに心よりお礼申し上げます。
 
(サロン委員:飯島 聡太朗)

 
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