ニュースリリース

第98回マーケティングサロンレポート
「ファンベースを軸としたマーケティング 長く愛されるサービスの作り方」

第98回 マーケティングサロン:名古屋
「ファンベースを軸としたマーケティング 長く愛されるサービスの作り方」
日程:2019年9月20日(金)18:30-20:30
場所:中部マーケティング協会
ゲスト:(株)ファンベースカンパニー COO 津田 匡保 氏
サロン委員:坂田 隆文・上野 篤志・須賀 友嗣・古池 政裕・山本奈央
 
【サロンレポート】
 今回のマーケティングサロンは、中部マーケティング協会との共催でファンベースカンパニー(元ネスレ日本)津田匡保氏による講演が行われた。
  
【ゲストプロフィール】
津田 匡保(つだ まさやす)氏
1978年、兵庫県生まれ。2002年、ネスレ日本に入社。09年より「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」などのマーケティング業務全般を担当。12年に「ネスカフェ アンバサダー」プログラムを立ち上げ、直近では「ネスレ ウェルネス アンバサダー」など新規事業も担当。19年2月にネスレ日本を退社し、5月より発足した株式会社ファンベースカンパニーに創業メンバーとして参画。
  
【概要】
事例紹介
 津田氏のご経歴紹介の後、「ファンベースマーケティング」とはどのようなマーケティングなのかが説明された。ここでいう「ファン」とは、単なるリピーターではなくブランドに対して愛着やコミットメントを持っている存在であり、こうした存在を育て長期的な関係を結ぶマーケティングが「ファンベースマーケティング」であると説明された。
 そして、ファンベースマーケティングの事例として、ネスレ日本時代に手掛けられた「ネスカフェアンバサダー」の紹介が行われた。
 もともと、コーヒーの飲用機会は①家庭②オフィス③喫茶店・カフェ等の外食の3つに分けられるが、これまでネスレがネスカフェ(レギュラーソリュブルコーヒー)でターゲットとしてきたのが①②の市場であり、ネスレは①では大きなシェアを持つものの②が相対的に弱かったことが説明された。
そのうえで、オフィスへの参入に当たり、カプセル式で補充のできるコーヒーマシンをオフィスで使用してもらうというビジネスモデルの構築に向け試行錯誤がなされた。初めは、企業の総務課に飛び込み営業をかけたりもしたが、なかなかうまくいかなかったという。そのような中、東日本大震災のボランティアに私的に参加した津田氏は、仮設住宅の集会所で自由に利用してもらえるようにと持参したコーヒーマシンの周りに、人が集まり自然と会話が生まれている姿を見て、コミュニティの中でほっとしたり会話が生まれたりする中心にコーヒーメーカーを置いてはどうかと発想し、ネスカフェアンバサダーというビジネスモデルを生み出した。
 「ネスカフェアンバサダー」とは、コーヒーのオフィス向け定期宅配サービスである。「アンバサダー」と呼ばれる、オフィスで利用するマシンを無償で提供される代わりに、コーヒーの発注(同僚からの料金徴収含む)や故障時のメンテナンス(ネスレに依頼)を行う消費者をハブとして、オフィスでネスカフェのコーヒーを楽しんでもらうという仕組みである。現在では、オフィスに限らず店舗や病院(医療スタッフの休憩時の利用)、大学の研究室等、人が集まる「場」での導入がなされていることも紹介された。
 またアンバサダーを集めたイベントも積極的に行われ、パーティー(アンバサダーサンクスパーティー)やバスツアー、キャンプやコーヒー農園訪問など実際にマーケターと顧客が触れ合うことで、顧客にはより愛着を深めてもらい、マーケターは顧客の生の声を聴くことで次のマーケティング施策へ反映させる取り組みが行われていることも紹介された。
 
【ファンベースマーケティングの実行】
 上記の経験から、ファンベースマーケティングを実行するには、「消費すること」と「消費者に愛されること」は異なることを認識したうえでいかに愛されるブランドを育てるかが重要であること、そしてUnique Sales Pointはいずれ陳腐化するため、機能による差別化ではなく、顧客にとってなくてはならないブランドになるためには何が必要かをマーケターは考える必要があることが述べられた。
 さらに、「ネスカフェアンバサダー」の世界観(職場というコミュニティの中でほっとできる「居場所」の中心にネスカフェがある)に共感してもらえるユーザーをとらえることが重要であると述べられた。
 
【質疑応答】
 質疑応答では、「これまで社内になかったビジネスモデルをいかに成功させたのか」という質問に対し、①予算をはじめからかけすぎず、「小さな失敗」を繰り返すことで軌道修正していくことが大切ではないか②実際にプロジェクトが始まった後にもイベントや顧客への訪問調査を通じて「顧客の生の声」を担当者が聞いて次のマーケティング施策に反映させることが重要ではないか、という助言がなされた。また、「新規プロジェクトを立ち上げるに当たり、社内外をどう説得したのか」という質問に対し、担当者ないしは当該プロジェクトチームだけでできる事には限りがあるので、ほかのチームにも積極的に働きかけ社内での協力者を探すことで仲間を増やしていくことの重要性が述べられた。
 講演は大変盛況で、また質疑応答も大変活発に行われ(全体での写真撮影時間がとれないほどであった)会場の終了時間ぎりぎりまで講師と参加者、ならびに参加者同士の交流が行われた。
 
(文責:サロン委員 坂田 隆文・上野 篤志・須賀 友嗣・古池 政裕・山本 奈央)

 
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