第102回マーケティングサロンレポート「コカ・コーラのボトラー再編における組織変革とリーダーシップ」 |
第102回 マーケティングサロン:東京
「コカ・コーラのボトラー再編における組織変革とリーダーシップ」
日程:2019年11月18日(月)19:00-
場所:博報堂ラーニングスタジオ
ゲスト: コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社
理事 事業開発統括部長 青山 朝子 氏
サロン委員:岡田 庄生・白井 明子・清原 康毅・海野 浩三
【ゲストプロフィール】
1994年に国際基督教大学(ICU)在学時に公認会計士試験に合格し、監査法人トーマツにて監査業務に従事。2001年にオハイオ州立大学にてMBAを取得後、メリルリンチ日本証券の投資銀行部門にて国内外のM&Aアドバイザリーを行う。2004年に日本コカ・コーラに入社。2011年東京コカ・コーラボトリング(株)(現コカ・コーラ
ボトラーズジャパン(株))の取締役兼CFOとしてファイナンス全般を統括。コカ・コーライーストジャパンの常務執行役員 財務経理統括部長、コカ・コーラボトラーズジャパンの執行役員 トランスフォーメーションプロジェクトリーダーを歴任。2019年2月より現職。
【サロンレポート】
(1)コカ・コーラビジネスとボトラー再編
コカ・コーラのビジネスモデルとは?フランチャイザーの日本コカ・コーラから、フランチャイジーであるボトラーがコーラの原液を購入し、製品を製造している。
なぜボトラーを再編することになったのか?小さな日本にボトラーが17社もあり、製造拠点が多重化し最適化されていなかった。それ故にマーケットシェアNo.1とはいえ規模の経済のメリットを享受できていない課題があった。しかしボトラー側が統合の必要性を感じておらず、統合するのが非常に困難であった。
(2)統合前夜までのアクション
2013年にまず関東のボトラー4社の統合に着手。統合を発表してから180日で経営統合を達成しなければならなかった。統合初日の時点で従業員が、どの事務所で何の仕事をするのか決まっている必要がある。その為に、組織図やその箱の中を短期間で決めなければならない。ではどうやって決めていったのか?6領域の26のチャーター(検討しなければならないこと)を決め、それぞれ5,6名ずつのチームで検討させた。
これらの統合を通じ重要だと感じたのは下記の点である。
- チャーター間の連携が鍵
統合を円滑に進めるためには、チャーターは相互に連携しており、スケジュールにも影響を及ぼし合う、そのために全員に共有されたスケジュールを持つ事が重要。 - ミッション、ビジョン、バリューの共有と浸透
組織統合に当たっては、必ず組織間のコンフリクトが起こる。その時に立ち戻る場所が必要。それがミッション、ビジョン、バリューである。これらは、様々な階層の社員を集めワークショップを開催して決めた。すべての部屋にビジョンを掲載し、全従業員への浸透を図った。
(3)二つ目の大統合
2017年4月にコカ・コーラウエストとコカ・コーライーストジャパンの大統合を実施。前回の4社統合より、この2社の統合の方が大変であった。それは2社の統合の場合、対立構造が発生しやすいからである。更にはリーダーシップ層に多くの外国人がおり、日本人⇔外国人とのコミュニケーションの違いに苦労した。これらの経験を通じ、グローバルコミュニケーションにて気を付けるべき事項を下記3点にまとめた
- スピードの違い
日本人は準備をしっかりやって進めようとする、外国人はまずはやってみようとする。間違ってもいいから前に進めようとすることが必要。 - ホウ・レン・ソウの受け止め方の違い
外国人は会議の結果を実行する。日本人は会議での発言は少なく、決定事項も後で覆し業務を進めることが多い。意見が違ったら会議で言おうよ。 - カルチャーの認識の違い
外国人同士はカルチャーが違う前提なのでロジカルなコミュニケーションが重要。日本人は阿吽の呼吸。企業カルチャーが異なる2社の合併では、過去の暗黙知は通用しないため、ロジカルなコミュニケーションが重要となる。また意見が分かれた場合には判断の拠り所となるビジョンやバリューが重要となる。
(4)組織変革とリーダーシップ
会社統合の様な大きな変革を起こす時に大事な意思決定のポイントは下記の通り
- 統合価値の所在
ゴールの共有、なぜ変革する必要があるのか、変革には痛みを伴うため組織にしっかり共有されておく事が必要。 - ガバナンス
誰が意思決定するのか、意思決定するための機関はどこか? - スピード
速さを重視するのか?改革のスピードは1年か3年か?シナジーを出す時期は? - 権限の集中
フラットな組織か?階層組織か?本社の機能は?大事なのは人員配置。どのポジションが重要でそこに誰を充てるのか? この配置は社内への強いメッセージになる。
【サロンを終えて】
今回のサロンを通じて印象に残ったのは、青山さんの雰囲気作りの上手さであった。サロンの導入時には、「なぜこのサロンに参加したのか?」と聴衆の皆さんに質問し、一気に空気を温めた感じがした。サロン後の懇親会でお話させて頂いたが、アメリカで受けたデジタルトランスフォーメーションの研修では、まずコミュニケーションの研修があったそうだ。それは新しい事をやろうとする場合、まずステークホルダーを説得するコミュニケーションが重要だからだそうだ。日本人同士だと阿吽の呼吸ですむが、多様化した組織ではそうはいかない。青山さんはコミュニケーションのトレーニングを徹底的に受け、ボトラー統合を成功させ、そしてサロンの雰囲気もモノにした。企業の中間管理職として変革を推進する立場である私にとって、非常に学び多きサロンであった。
集合写真
(文責:清原 康毅)