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第125回マーケティングサロンレポート「企業の炎上を消費者はどう見ているか」

#いまマーケティングができること

第125回 マーケティングサロン:オンライン
企業の炎上を消費者はどう見ているか
 
日程:2021年2月22日(月)19:00-20:30
場所:Zoom使用によるオンライン開催
ゲスト:帝京大学 文学部 社会学科 准教授 / 内外切抜通信社 特別研究員 吉野 ヒロ子 氏
サロン委員:山口 夕妃子・小野 和美・副田 治
 
【サロンレポート】
 「炎上」は、デジタル社会の今、誰しもが日常的に耳にするキーワード。今回のサロンは、「炎上」について、研究と発信をされておられる帝京大学の吉野先生から、炎上が発生するメカニズムや、どのような傾向があるのかという点について、「企業の炎上を消費者はどう見ているのか」というテーマでご講演いただいた。
 九州支部のサロンは、講師と身近にディスカッションできる少人数開催というコンセプトを掲げており、今回もリモート開催のハードルを越えて大いに盛り上がった。
 
 恒例の乾杯、受講者の自己紹介の後、早速講演の開始。先ずは「炎上とは何か」ということで、炎上の定義、国内の炎上の歴史をわかりやすく解説いただいた。炎上事件が挙げられた資料を拝見しながら、過去20年余の記憶が蘇った。とくに2016年以降は「炎上の成熟期」と位置付けられ、炎上を含む記事の件数の増大がみられる。
 歴史を振り返りながら炎上についての理解を深めつつ、講演内容は企業における炎上事案に移る。先ずは「企業の炎上の主なパターン」として、炎上の主要パターンを説明いただいた。①被害者として巻き込まれるパターン、②バイトテロ、③不適切なマーケティング活動、④商品・サービスの不具合に対する諸費者の告発、⑤労働環境の5パターンについて、企業も炎上には多様なパターンがあることを知り、我々が推し進めようとするマーケティング活動に、いかに密接に関わりがあるのかということを理解した。
 
 話は具体的な事例に移る。炎上事件と企業活動への影響について、ある炎上事件におけるTwitter投稿件数と、炎上主体となった企業の株価の推移を示していただいた。これによると、明らかな相関関係を呈しており、株価は事件発生直後から下落し、その後続報が数ヶ月に渡って発信されるなかで、株価はゆるやかながら、さらに下落する状況を一目で理解することができた。
 そして、ここで、「ソーシャルメディア」「ネットメディア」「マスメディア」と拡大していく炎上のメカニズムが示された。端を発するソーシャルメディアの投稿から、それを、耳目を惹くためにネットメディアが発信し増幅、これを社会問題としてマスメディアが取り上げ一気に拡散という流れだ。「炎上の商業化」というキーワードとともにわかりやすく示され、理解が深まった。
 
 次に、独自の生活者調査結果を示していただきながら、「一般人」「有名人」「企業」における炎上の認知率について解説を受けた。それぞれ44.6%、64.6%、32.7%の順で、企業の炎上は一見、認知度が低いように思えたが、続く「企業の炎上認知者の反応」に移ると、炎上を発生させた企業に対し、印象が悪くなる、利用を避ける、周りに利用を避けるように伝える。といった、ネガティブな態度や行動変容を引き起こす反応が示された。さらに、炎上を発生させた企業は生活者の信頼を失わせるという具体的なデータが示され、炎上とマーケティング活動に対する重要な関与を改めて、ロジカルに認識することができた。
 
 最後に、「炎上で一番問題なのは、批判を投稿されること自体ではなく、それを見た人、メディア報道を伝え聞いた人の間で、広くレピュテーションの毀損が発生すること」だというまとめとともに、批判者だけでなく、見ている人や報道を通じて知った人を納得させ「信頼を取り戻すこと」が大切だという提言をいただき講演は締めくくられた。
 
 続いてディスカッション。先生に対する質疑応答を中心に、回答いただき、受講者一同、企業のマーケティング活動において大きな脅威となりうる「炎上」と、どう対応していくべきか。という意見交換を行い、サロンは閉会した。
 
【サロンを終えて】
 吉野先生を迎えた今回のサロンを通して、生活者主導のデジタル社会において企業のマーケティング活動は、生活者の投稿や発信による炎上のリスクを抱えていることを改めて踏まえるだけでなく、重要なのはその後の信頼を取り戻す活動なのだ。という重要なご教示をいただきました。
 吉野先生の炎上に関する新刊著書「炎上する社会(弘文堂)」が3月11日に上梓されましたので、これを機会にさらに学びたいと思います。
 途中進行の不手際もありご迷惑をおかけしましたが、受講されたみなさまありがとうございました。そして、吉野先生、大切な教えを授けていただきありがとうございました。
 

 
(文責:副田 治)

 
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