第7回マーケティングサロンレポート:関西 「プレイスメイキング!行くべき理由を創る!~「グランフロント大阪」が挑戦するソーシャルコミュニティ・マーケティング」 |
第7回 マーケティングサロン:関西「プレイスメイキング!行くべき理由を創る!
~「グランフロント大阪」が挑戦するソーシャルコミュニティ・マーケティング」
日程:2013年6月28日(金)19:00~21:00
場所:グランフロント大阪 北館7F ナレッジサロン 会議室
ゲスト:株式会社大林組 大阪本店 大阪都心再生室 副部長 船橋俊一 氏
サロン委員:小宮信彦・藤澤聡子
【サロンレポート】
2013年4月26日、“日本最後の都心一等地”の大規模開発といわれる「グランフロント大阪がオープンしました。大阪駅直結の広大な敷地に商業 施設、オフィス、知的創造交流拠点、企業ショーケース等の機能を備えた複合都市は「10年構想」で造られた“巨大な実験場”でもあります。開業3日間で100万人を超える順調なスタートを切ったグランフロント大阪が目指す新しい街づくりを現在進行形でお話いただきました。
写真左から、乾杯の様子、講演中の船橋氏
【概要】
●街づくり構想は10年後の未来と100年の計
船橋さんはまず2006年当時に描いたグランフロント大阪のイメージを提示しました。準備段階も含めると、なんと10年前から構想に携わってきたそうです。「10年後のことを考え、さらにそこから100年の計で街がどう成熟するのかを考えている」と船橋さん。一方で今回ご紹介いただくのはIT技術によるサービス。ご本人曰く「ものすごく早いスピードで進歩する技術と100年先の未来の話をいかに折り合わせるのか」ということを考えながらのお仕事だそうです。
●実験なう!“コンパスサービス”
次にグランフロント大阪の「入り口」的機能であるコンパスサービスの紹介がありました。このサービスは広大な敷地内に配置されたサイネージ端末による街のコミュニケーションプラットフォームで、スマホアプリやICタグのカードと連携し、街を訪れた人が情報を得るだけではなく、街の“今”を感じてもらい、普段は足を運ばない新しいスポットへ誘導して体験してもらう仕掛けです。ゲーム性もあり楽しみながら使えるため、さまざまな属性のユーザーが使用、匿名で参加できるため膨大な顧客の行動分析データや生の声も得られます。開業からデータが蓄積されてさまざまな発見があったようですよ。たとえばSNSの個人アカウントを紐つける人が一定層いること、ユーザーの発言内容はポジティブなものが大半であることなど、まさに実験なう!の取組みですね。
●なぜ不動産デベロッパーがITサービス?
しかし、なぜ不動産デベロッパーの船橋さんがこのようなことを手がけられるのでしょうか?従来の役割から考えると不思議な気がします。それには少し時間を遡る必要があります。10年前から現在まで、船橋さんがこの事業に着手している間には、大阪市の人口は増加から安定・減少期をむかえEコマースの売上が百貨店の売上を超え、公共貢献を掲げた街づくりの法令も制定されました。高度経済成長期のハードウエアを整備する都市化から成熟期の「再都市化」を背景に新しい街づくりを考える必要があったそうです。
●開発ビジョンは「ヒト」中心 感性と技術を中心とした街づくり
このような背景から従来の商業中心の施設とは異なり、「ヒト」を重視した開発ビジョンが出来上がってきました。「大阪の新しい玄関口は世界に開かれた最前線の街、そして多様な人々のとの出会いが新しいアイデアを育む街」と掲げます。出会いやつながりや縁を提供することで気づきや街のあたたかさを感じる、「人と人、人と場の関係性を創る」ソフト機能の実装がはじまりました。
●経年劣化しない街づくりのための「コミュニティ」形成事業
「建物などの設備は経年劣化するが人と街、人と人の関係性は経年強化する」と船橋さん。街での活動が体験価値となる運営を目指し、街に集う人々のコミュニティ形成をサポートしています。その名も「ソシオ活動」。このサークル活動に参加した人達が「わたしの街」と思うことで街のロイヤリティが高まっていく仕掛けです。街の入り口機能であるコンパスサービスにはソシオ活動の情報が掲載され、街を訪れた人がイベント等を通してコミュニティに参加し街に馴染んでいく…ITのコンパスサービスと「ヒト」中心のソシオ活動で情報がうまく循環する仕組みを実験しています。
しかし、まさに始まったばかりの新しい取組みは様々なハードルもあるご様子。開業3ヶ月となり蓄積したデータログの解析やソシオ活動のさらなる活性化に日々取り組んでいらっしゃるそうです。
写真左から、質疑の様子、集合写真
参加者の声(事後アンケートから抜粋)
・大変有意義な時間を過ごさせていただきました。特に、コミュニティを介する新しいモデルケースとなる商業施設としてのお話は、大変興味深く、新しい可能性や方向性を感じることが出来ました。新しいまちづくり、経年劣化しないまちづくりなどまちのコミュニティをどのように考え、提案し、運営していくかなども面白かったです。
・アットホームな雰囲気の中、様々な業界や職種の出席者の皆さんから挙がった質問やディスカッションも参考になりました。
・今回は全体でのQ&Aで後半が埋まってしまい、盛り上がった証拠ですからそれはそれで良いのですが、東京ではテーマを設定してグループで軽くディスカッションする時間を設けていました。今回の例で言えば、COMPASやソシオを通じた“まち”へのLoyalty形成はありうるのか?何がカギか?などの問いかけで議論できると思います。個人的には、せっかくテーブルの配置もグループごとになっていましたので、そんな機会があるとさらに良かったと思いました。
【サロンを終えて】
「ヒト」を中心とした成熟都市の街づくり構想のまさにリアルタイムなお話に、参加者から途切れることなく質問が寄せられました。船橋さんには各々に真摯にお答えいただき更に理解が深まりました。大阪の開催らしく「で、結局なんぼなん?」というお金まわりの質問はさらりとかわされて、会場の笑いを誘っていました。まさにスタートしたばかりのグランフロント大阪、そこに集う一市民としても今後、どのようにこの街が進化していくのか楽しみです。
関西で1回目のサロン開催の報告でした。皆様のフィードバックを活かして次回はより良い会になるよう努力していきます。よろしくお願いします。
(サロン委員:藤澤聡子)