第134回マーケティングサロンレポート「コロナ禍における新たな演劇の形:オンライン劇団『劇団ノーミーツ』の挑戦」 |
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第134回マーケティングサロン:オンライン
テーマ:コロナ禍における新たな演劇の形:オンライン劇団「劇団ノーミーツ」の挑戦
日程:2021年6月25日(金)19:00-20:30
場所:Zoom使用によるオンライン開催
ゲスト:劇団ノーミーツ主宰 / 企画・プロデュース 広屋 佑規 氏
サロン委員:小谷 恵子・福田 徹・藤井 祐剛・東口 晃子・森川 美幸
【ゲストプロフィール】
劇団ノーミーツ主宰 / 企画・プロデュース 広屋 佑規 氏
1991年生まれ。劇団ノーミーツ主宰 / 株式会社Meets代表。没入型ライブエンタメカンパニー「Out Of Theater」代表。コロナ禍で全ての仕事が中止となったなか”NO密で濃密なひとときを”をテーマに、オンライン演劇を主軸に活動する「劇団ノーミーツ」を旗揚げ。短編Zoom演劇作品のSNS総再生回数は3,000万回再生超え、2020年に3作品上演した長編オンライン演劇公演は自宅から観劇した観客が累計28,000名を超えた。ACCクリエイティブイノベーション部門「ゴールド賞」受賞、文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門 「優秀賞」、AMDアワード年間コンテンツ賞「優秀賞」受賞。
【サロンレポート】
新型コロナウィルス感染症の拡大で、演劇公演が自粛中止となり、演劇業界全体が大きなダメージを受けました。このような中、広屋さん自身も全ての仕事が延期・中止となり一瞬目の前が真っ暗になってしまったとのことです。しかし、その中でただ自粛するのではなく、「この時代に、家にいながら、僕らが今できることはなんだろう?」と考え、活動を開始し、緊急事態宣言発令2日後の2020年4月9日に劇団ノーミーツを旗揚げされました。このスピード感が凄すぎです。そして、その劇団名も「劇団ノーミーツ」。”NO密で濃密なひとときを”をテーマに、打ち合わせから本番まで一度も会わずに活動するフルリモート集団という、ピンチをチャンスと捉えたイノベーターです。
講演では、劇団ノーミーツの取り組みや制作されたオンライン演劇を動画で紹介いただきながら、とてもわかりやすく、とても楽しい内容でした。特に、長編オンライン演劇は、企画構成や演出、技術やデザインなど様々な点で新しい試みが行われていて、見ている人を飽きさせない内容になっており、自宅から観劇した観客が累計14,000名を超え、数々の賞を受賞されたのも納得でした。
マーケティングの観点では、従来の対面の演劇の場合、良い座席を確保するため早期にチケットを購入するのですが、オンラインの場合、ほとんど前日まで買わず、開演直前にどっと購入し、その後公演期間は口コミで広がり、チケット購入が増えるなど、オンラインの特徴があるようです。
さらに、劇団ノーミーツの快進撃を支える3つの挑戦がとてもユニークで印象的でした。
- 簡単なテクノロジーで、誰も見たことのないエンタメを。
Zoomという誰もが使える敷居の低いテクノロジーを演劇の舞台装置として使うことで、他の劇団も参加しエンタメとして世の中に定着することを狙った。本当にできるの?と興味を引くのがポイント。 - オンラインで出会った仲間たちの完全自主制作活動。
業界も働き方も異なる、平均年齢27歳の24人の劇団員が集合。劇団と言いつつも演劇関係者は3名のみで、映画、音楽、広告、エンジニア、メディアアートなど様々な業界から参加しているので、多様な視点や既存の概念に縛られることなく実施できることが強み。 - オンライン演劇の伝え手として、次の段階へ。
自分たちが上演するだけではなく、劇場のオンライン配信企画プロデュースやアイドルグループがスタッフ・キャストを全て自分で行う公演の企画、会って配信する演劇など新たな分野へ挑戦。
講演後、多くの方々から質問がありましたが、今後の取り組みは?という質問については、表現方法はオンラインのメリットを活かして、ワンカット配信や移動演劇、海外とのコラボへの挑戦、課金方法は、制作過程を見せることへの課金など様々なアイデアがあるようです。
オンライン演劇という新しい領域を創り出した劇団ノーミーツが、今後さらに自らの殻を破り、これからのどのような方向に進んでいくのか楽しみです。
(文責:福田 徹)