第135回マーケティングサロンレポート「次なる日本の中心的産業としてのアニメ業界を考える」 |
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第135回マーケティングサロン:オンライン
テーマ:次なる日本の中心的産業としてのアニメ業界を考える
日程:2021年7月2日(金)13:15-14:50
場所:Zoom使用によるオンライン開催
ゲスト:株式会社トムス・エンタテインメント 上席執行役員 吉川 広太郎 氏
サロン委員:清水 恭彦・本下 真次
共催:関西外国語大学
【サロンレポート】
日本製アニメの市場規模は直近15年間において、2004年度の1兆2208億円から2019年度の2兆5112億円へと年々の拡大が続いています(「アニメ産業レポート2020」より)。このような著しい成長を遂げている日本製アニメビジネスに関する業界動向や競争優位性、直面する課題、将来展望などをお話しいただきました。
日本のアニメは成長産業
最初にゲストの吉川氏から「国内興行収入歴代1位と2位の映画は?」とクイズが出されます。1位は『鬼滅の刃 無限列車編』、2位は『千と千尋の神隠し』。アニメがトップ10圏内に6作品も入っています。世界に目を向けてもトップ10圏内に2作品(『ライオン・キング』、『アナと雪の女王2』)が入っており、近年、高い興行収入を稼ぐアニメ作品が増加傾向にあるとのことです。日本の広義のアニメ産業市場(ユーザーが支払った金額ベース)は10年連続続伸しており、特に海外市場での成長が大半を占めているとのことでした。
日本製アニメの強み
次に業界動向として、資本提携・業務提携が活発化していること、グローバル配信プラットフォーム(Netflix、Amazon Primeなど)が台頭していることが挙げられます。それらを踏まえつつ、吉川氏によると日本製アニメには次の7つの強みがあるとのことでした。
- ワンコンテンツマルチユース展開が可能。
- 映像コンテンツで唯一、輸出産業として貢献できる。
- アニメを含む映像作品は歳をとらない。
- アニメや映画作品には、在庫リスクが無い。
- アニメ作品は投資効率が高い。
- 日本製アニメは世界一と評価されている。
- 制作能力を有するアニメスタジオは引っ張りダコ。
制作スタジオが抱える課題と対策
一方で日本のアニメ制作スタジオには課題もあります。吉川氏によると次の5つの課題があり、対策の方向性とともに示していただきました。
- 慢性的な人材不足 → アウトソース化強化、待遇面の改善
- 働き方改革に伴う人件費増 → 制作費の調整等
- 低いブランド力 → スタジオブランドをもっと前面に!
- 日本固有の事業構造に基づく低い給与水準
→ 製作委員会の構造変革等により、徐々ではあるが改善は可能 - 弱い流通パワー → 国からのサポートが必要
【サロンを終えて】
今回のサロンは、吉川氏ご自身がエンタメ業界に転じる前に電機メーカーに在籍していた経験をもとに、電機業界とエンタメ業界との違いについても触れていただきました。現場の視点から業界の課題にも言及した上で「日本製アニメの未来は明るい!」と明言され、参加者から世界で戦う上での課題、業界横断の取り組み、YouTubeの関係性など積極的な質問が出ました。講演をいただきました吉川様、運営協力いただいた皆様、ご参加いただいた皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
(文責:本下 真次)