第139回マーケティングサロンレポート 「生活情報誌『オレンジページ』から、 「生活実装する会社」株式会社 オレンジページへ」 |
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第139回マーケティングサロン:オンライン
テーマ:生活情報誌『オレンジページ』から、「生活実装する会社」株式会社 オレンジページへ
日程:2021年9月30日(金)19:00-21:00
場所:Zoom使用によるオンライン開催
ゲスト:株式会社オレンジページ 代表取締役社長 一木 典子 氏
サロン委員:京ヶ島 弥生・佐々木 竜介・長崎 秀俊・森口 美由紀
【ゲストプロフィール】
一木 典子(いちぎ のりこ)氏
東京都生まれ。1994年慶應義塾大学総合政策学部卒業、東日本旅客鉄道株式会社に入社。不動産、法務、JR東日本グループ内の事業再編や再編した子会社の経営、山手線のブランディングプロジェクト(東京感動線)のグループリーダーを務めたのち、2019年6月から、子会社である株式会社オレンジページの代表取締役社長。自身にとって初めての出版業界・代表職ということで自らもチャレンジや自己変革をしながら、「『食』を起点に暮らしをつくり、生活者、コミュニティ、地球の、よりウェルビーイングな未来をつくる」ため、社員とともに、企業文化と顧客価値の創造に取り組む。幼少から家族や自身の転勤で、ブラジル、大分、群馬、新潟、岩手、宮城に暮らしたほか、東京との2拠点生活の経験も長く、地域の人と食に魅了される。夫と、18歳、13歳の2人の息子の4人家族。最近の楽しみは、2人の息子が「料理をしたくなる」ように、仕掛けること(笑)。
【サロンレポート】
139回のマーケティングサロンは、株式会社オレンジページ代表取締役社長の一木典子さんをお迎えしました。
オレンジページと言えば、1980年代に相次いで創刊された生活情報誌の草分け的存在。その歴史は綿々と今につながり、料理レシピもスマホですぐに手に入るデジタル時代の今も変わらず月2回発行されています。
しかし、オレンジページの強さの秘訣は、その雑誌の歴史だけではありません。
それは、ここ5年以上に渡り、B2B事業を含めた業容変革を行い、ブランドの整備をはかってきたことが大きく貢献しています。
今回のサロンでは、オレンジページのブランドパーパスを経糸に、JR新大久保駅直上に開業したフードラボ「Kimchi, Durian, Cardamom,,,(キムチ、ドリアン、カルダモン、、、)」の概要や、17万人の生活者モニターのデータを活用したクライアントサポートの具体的事業を緯糸に、そのトランスフォームの実際を詳しく伺いました。
【「株式会社オレンジページ」は「株式会社オレンジページ」にかわります。」】
オレンジページという会社のコーポレートブランディングは、まだ途上である、とのことですが、「会社を商品と見立ててマーケティングする」という観点から、根底にあるブランドパーパスを一木社長の着任から1年で定め、その実践を示すためその後半年でそれにふさわしいアクションを準備し、発表されました。雑誌時代から同社の中心である「食」を、家ナカや家庭料理から、そこに限定しない情報のハブになりさらに広げていくという明確な方向性をもって、新CI「生活実装する会社」を短期間で具体的な実行レベルに落とし込んだことは、注目すべき点でしょう。
また、フードラボ「Kimchi, Durian, Cardamom,,,(キムチ、ドリアン、カルダモン、、、)」は、JR他の企業とのコラボレーションプロジェクトですが、食を通じたチャレンジを支援するプラットフォームとして、参加企業のローンチサポートだけでなく、自社の事業拡張の拠点としてブランド価値の発揮にも貢献しています。
【生活実装する会社】
様々な企業に対するB2B事業として、食と生活に関わるマーケティングサポートは、一般的なモニターと比べても情報のインプットとアウトプットの量が多いメンバー会員の積極的な参加が支えています。そしてその17万人のオレンジページ会員、7万人のメルマガ登録者、そしてその中でも積極的にモニターとして活動をするメンバー会員という無形の貴重な資産を活かすには、それを読み解きハブとなる社員の力があってこそで、そこにオレンジページブランドが大切にする人事ポリシー「生活者であれ、創造者であれ」が色濃く発揮されています。
「食」という分野で定評ある活動を続けてきたオレンジページは、雑誌単体では読者の加齢という、どの雑誌も抱える課題に対しても、事業ドメインを広げることで、それを乗り越えて余りある成果を出してきていると言えます。
参加者からも、「実験を収益の上がる事業にする方法へのヒントを頂けた気がしました。」「顧客視点のマーケティングの実践だけでなく、従業員様への施策、非常に良い学びとなりました。」などの感想をいただきました。
【サロンを終えて】
これまで雑誌制作を通じて培った編集力を新たな流れに変えて、企業人でありながら生活者の実感を大切に、仕事も生活もしていくという人事ポリシー、そして新たな打ち手でブランドの加齢を乗り越え、次の時代を見据えたチャレンジをし続ける事業推進。これらが、オレンジページと生活者を繋ぐだけでなく、生活者同士を繋ぐ実体的な”生活実装“の鍵となっていることを、数多くの実例で聞かせていただきました。
これからもオレンジページの飽くことなきトランスフォームを、さらに期待をもって見守っていきたいと思います。
(文責:京ヶ島弥生)