第158回マーケティングサロンレポート「ファッション誌の広告ビジネス」 |
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第158回マーケティングサロン:オンライン
テーマ:ファッション誌の広告ビジネス
日 程:2022年7月20日(水)18:30-20:30
場所:Zoomによるオンライン開催
ゲスト:伊田 博光 氏(株式会社中央公論新社 専門委員)
司会進行:薗部 靖史 氏(東洋大学 社会学部 教授)
サロン委員:谷 雨
【ゲストプロフィール】
伊田 博光 氏
株式会社中央公論新社 専門委員
<経歴>
広告代理店勤務を経て1990年以降、中央公論社、角川書店、アシェット婦人画報社、ハースト婦人画報社へと雑誌「marie claire」日本版とともに渡り歩く(2009-2011『ELLE JAPON』『ELLE girl』にも関わる)。さらに2012年、中央公論新社にて、同誌初の試みとなる新聞へのインサート型ファッションマガジン「marie claire style」を立ち上げ、2019年までディレクター(marie claire style 編集部部長)として中心的な役割をはたしました。直近では、川村元気・近藤麻理恵著「おしゃべりな部屋」など書籍のディレクションや雑誌編集、広告のイメージビジュアルやタイアップページ、映像などをプロデュースするほか、2022年5月より東洋大学社会学部「メディア体感プロジェクト」ファッション誌制作コースで講師を兼務する。
【サロンレポート】
「marie claire」は1937年10月にフランス、パリで生まれ、現在、世界24カ国で雑誌を発行、デジタルを含め、世界中で9,000万人を超える視聴者とつながりを持つ雑誌です。伊田氏が「marie claire」日本版に関わって約30年が経ちました。その間ディレクターとして「ELLE girl」にも関わり、様々な新しい企画やSNSとの連携などを実現させました。
「marie claire」は2012-2019年に「marie claire style」として復刊しました。当初日本国内では書店数や出版物数が減り、デジタル・シフトが進んでいました。一方、海外では、新聞発行部数や雑誌の定期購読など、日本とは状況が異なっており、雑誌のクオリティも非常に高いものでした。そこで、競合4誌「ELLE」、「VOGUE」、「SPUR」、「GARO」に割り込み、富裕層をターゲットした「marie claire style」を60万部発行するという目標を立てました。
雑誌1冊を48~56ページに収め、その分、写真などのクオリティを高める工夫をしました。「marie claire style」を読売新聞に折り込んで読者に届けるという手法は、新聞購読者に好評でました。また、日本テレビと提携し、海外のファションブランドを紹介するコンテンツを作ったり、デザイナーインタビューなどの動画コンテンツをSNSで拡散したりすることで、雑誌の知名度を上げていきました。
圧倒的な部数を誇り、富裕層が多いと言われる日本全国の新聞読者の中から潜在的な読者を顕在化させ、読者から購読料を得るのではなく広告費のみで収益化を図ることは、雑誌の新たな取り組みと言えるでしょう。また、銀座線沿線など一部の売店でも雑誌を購入できるようにするなど、様々な要望に柔軟に対応していきました。こうして、2012-2019年にかけて通算およそ160巻を発行することができました。
【まとめ】
伊田氏が何度か話した「ファッションは時代を映す鏡」という言葉どおり、「marie claire」はさまざまな危機を乗り越えてきました。ディレクター(編集部長)として「marie claire style」に関わった8年間で、新しいコンセプトを提案したり、雑誌運営に欠かせない広告ビジネスにてこ入れをしたりするなど、様々なアイデアで難局を乗り越えてきました。伊田氏の強い思いやファッション業界に対する深い見解が非常に伝わる講演でした。
(文責:谷 雨)