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第164回マーケティングサロンレポート「ターゲティングの罠〜多様性の時代に顧客をどう読むべきか~」

#いまマーケティングができること

第164回マーケティングサロン:オンライン
テーマ:ターゲティングの罠〜多様性の時代に顧客をどう読むべきか~
 
日 程:2022年10月31日(月)18:30-20:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
ゲスト:音部 大輔 氏(株式会社クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役)
モデレータ:下河辺 さやこ 氏(小学館ユニバーサルメディア事業局 コンテンツ事業推進センター/小学館 ビューティ・プロジェクト Powered by 美的ブランド室 プロジェクト・マネージャー)
サロン委員:下河辺 さやこ、宮本 明宜、村瀬 恵理
 
【サロンレポート】
 今回のサロンでは、音部様より、価値観の多様化によって複雑性が増す現代において企業が持つべきターゲティングでの重要な視点を解説いただき、その後、質疑応答の形式で開催いたしました。
 
ターゲティングの必要性
 解説は、ターゲティングの手法の是非からではなく、改めて、なぜターゲティングが必要かという原点から始まりました。ターゲティングがなぜ必要か、それはブランドマネジメントの一貫性を図るため、また、多くの事業は中長期的に事業性の低減リスクを抱えているためです。すべてはこの原点に立った上で、誰に何をどこで何故、どのように、を設計していくことが重要とお話いただきました。また「製品にライフタイムサイクルはあるが、ブランドにライフタイムサイクルはない」という表現で、適切なターゲティングによりブランドを確立する意義を語っていただきました。
 
今ある意味
 続けて、価値観の多様化を受けて、従来のブランドでは事業発展が望めず、新規ブランドを立ち上げる昨今の企業によく見受けられる実情についてお話いただきました。ここでも改めてターゲティングの必要性に立ち戻り、そもそも新しくブランドを確立すべきなのか、今ある連想を断ち切って進めるべきなのか、という問いの重要性を提起いただきました。いずれも、重要なのは、既存ブランドなど、従来活動で得てきた認知ではなく、新しく進出する領域で意味を持った認知が必要であるということです。また、既存ブランドの顧客を軽視したリブランディングの危険性についてもご指摘いただきました。既存資産を効率的に活用できるだろうという期待ではなく、マーケットを獲得する上で向き合うべき現実をご教示いただきました。
 
性年代なのか
 そして、主題に触れて、過去は画一的なライフスタイルがあったが現代は多様化しており、ますます現代では年齢よりもライフスタイル・生活の価値観で市場を見る方が大事ではないかとお話いただきました。ターゲティングを行い、効率的なアプローチを実現するためには、“行動を促す動機付け”がインサイトでなければなりません。果たして年齢だけで消費者は動くのか。このシンプルな問いから一つの示唆を導いていただきました。加えて、仮に、20代と設定したとしても、そこからなぜ20代なのかを掘り下げることで、年齢ではなく仮想した消費者の“行動を促す動機付け”にたどり着けることをご紹介いただきました。これにより、そもそも性年代という無意識なターゲット設定の中に、潜在的に根付く本来設定したかった“意味”に意識を当てるというアプローチでより説得的なご説明をいただきました。
 
規模とマーケティングの質
 終盤では、より実務的な課題に迫り、マーケティング予算とその効率性について言及いただきました。限られた原資で、商材を“当てる”ためには、ターゲットを明確にし、有望なターゲットに集中的に投資しなければ、効果が希薄化してしまうことを、例を交えてご紹介いただきました。その上で、ターゲットの種別を「今使ってくれている人」・「これから使ってくれる人」に分解し、前者についてはコミュニケーションの範囲ではなくそのライフスタイルを紐解くことが重要。後者はコミュニケーションが肝要であるとお話いただきました。
 
ターゲットユーザー
 最後に、消費者とブランドの関係について「ヒトの役割」に触れて、ご説明いただきました。それは、消費者はモノ・サービスそのものだけではなくて、「誰かとの関係をどうしてくれるか」という観点を本質的には求めているという考え方です。自我も社会的な役割によってもたらされている側面があり、ブランドマネジメントにおいても、誰との関係に効いてくるものか、この理解が重要だとご教示いただきました。この理解が不足している場合は、不満足を増加させるリスクやポートフォリオを拡大する必要が伴ってきます。消費者の属性(性・年代)のばらつきはあったとしても、社会的役割から考えられる自我は同じ可能性があり、やはり、消費者が行動を促す動機付けをインサイトとしてターゲット設定することが重要であるとお話いただきました。
 
質疑応答
 「地方の中小企業において、効率的なマーケティング展開を図るための要諦」や、「大企業において新規事業開発を行う際の実務的な工夫」、「生活消費財以外かつ固定費産業におけるロイヤルユーザーの適切な設定関する工夫」など多方面からの質問に対して、いずれも解説いただきました原理原則に触れてご回答をいただきました。
 
【サロンを終えて】
 無意識に意識を当てる、原理原則に深く根差した音部様の各解説に、価値観が多様化する社会において一つの光が見えたのではないでしょうか。消費者の観点に立って物事を考えるとは、どのようなメカニズムで消費者は選択をするのか、選択しているモノは実態ではなく何なのか、企業が考えるべき本質を明らかにしていただいたように感じます。環境がどのように変化したとしても、ヒトの心をひきつけて、行動を促すための企業活動の要諦は、不変の原理原則にあり、いかに実務においてそれを理解し素直に実行しきるかが肝要だと考えました。
 改めまして、この度は大変お忙しい中にも関わらず、ご講演いただきました音部様、そしてご参加いただきました皆様に心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
 
(文責:宮本 明宜)

 
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