ニュースリリース

第175回マーケティングサロンレポート「AIを駆使した市場創造 ~AI英会話コーチアプリ“ELSA”の例」

第175回マーケティングサロン:オンライン
テーマ:AIを駆使した市場創造 ~AI英会話コーチアプリ“ELSA”の例
 
日 程:2023年8月7日(月)19:00-20:30
場 所:Zoomによるオンライン開催
ゲスト:Japan Country Manager, ELSA Corp. 玉置 俊也 氏
サロン委員:依田 祐一、小宮 信彦、寺﨑 新一郎、井関 夏帆
 
【ゲストプロフィール】
玉置俊也氏玉置 俊也 氏 Japan Country Manager, ELSA Corp.
 新卒で日中を拠点とするEdtechスタートアップに入社し、日本支社立ち上げおよび事業拡大に従事。2018年にスタンフォード大学大学院東アジア研究科に進学し、日米のイノベーションエコシステム/ベンチャーファイナンスの比較研究を行う。在学中の2年間、Stanford US-Asia Technology Management Centerのリサーチアシスタントとして、日系大手企業の投資先ソーシング業務に従事。大学院修了後、クラウドファンディング世界最大手Indiegogoの日本進出に従事した後、Googleから投資を受けるAI英語スピーキングアプリELSA(現在、世界で5400万ユーザー)の日本市場責任者として参画。英語は完全独学(TOEIC 500点台から1年半で海外大学院進学できるだけの英語力をつける。TOEFLを過去に20回受験した過去を持つ。)。
 
【サロンレポート】
 今回のサロンでは、AIを駆使した個人の特性に応じた英語発音コーチのプロダクト開発、顧客基盤の拡大プロセス、生成AIのChatGPTを組み込んだ新プロダクトやシリコンバレーのスタートアップ文化等について、お話しいただきました。
 
【概要】
Edtech市場の拡大について
 2025年までにグローバルで約700兆円もの金額が教育支出に集まると推計されており、更にドライバーとなる教育対象者は新たに約20億人が追加されると試算されています。
 現状の教育支出の大部分は政府支出によるノンデジタル領域で賄われていますが、2025年までにEdtech領域への支出がグローバルで約40兆円に膨らむと考えられており、Edtech市場の拡大が期待されます。
 
ELSA社とELSA Speakについて
 ELSA社は2015年にGoogleより出資を受け、スタンフォード大学からはじまったEdtechスタートアップ企業で、スタンフォード大学MBAの修了生であるVu Van氏と、音声認識とAIのベテランであるXavier Anguera博士によって2015年に設立されました。
 同社が提供しているAI英会話コーチアプリ”ELSA Speak”は、発音やアクセントがネイティブではない人々の活躍する場が制限されないためには、どういうイノベーションが必要か、というところから着想を得ており、独自の音声認識技術と人工知能を用いて、個々人に合った独自の英語発音の学習プログラムが提供されます。
 現在サービス開始からわずか8年で、世界100カ国・累計7000万人を超えるユーザーに利用されています。
 BtoCだけではなく、企業や学校法人などのBtoB顧客も拡大しており、全世界で500社以上の企業に利用されています。ユニークな例として、シンガポールエアラインでは、約8,000人のCAの機内アナウンスの練習をELSA Speakで実施するといった使い方がされています。
 
ELSA社急成長の秘訣:企業文化とマーケティング施策について
 玉置氏は、企業文化とマーケティング施策の両面からELSA社の急成長の要因を考察しています。
 企業文化に関しては、次の2つの徹底が成長を後押ししていると考えられます。
 
・Born global
 多国籍かつほとんどノンネイティブのメンバーが、全員英語でコミュニケーションを取り、ドキュメントも英語で残すことを徹底することによって、新メンバーのキャッチアップや各国でのビジネス立ち上げを素早くできるようになります。
・Remote first
 立ち上げ当初からリモートワークを導入しており、シリコンバレーの企業でありながらほとんどのメンバーはシリコンバレーにおらず、シンガポール・インド・ベトナムなど世界中の優秀な人材にアクセスが可能になっています。
 
 マーケティング施策に関しては、1ユーザーが複数のユーザーを呼び込むバイラルループの形成を意識しています。
 そのため、インフルエンサーマーケティングに関してもELSA Speakを使用し、本当に良いと感じた人にのみ広めてもらう共感ベースを大切にしています。
 更に、ユーザーに対しSNSで学習状況のシェアを促す体験や”勉強”ではなく世代間を超えた”楽しい学習体験”を設計することで、ユーザーの拡大に寄与しています。
 
生成AIがEdtech企業に与える影響とELSAでの活用について
 アメリカでは、生成AIについての戦略が不明確なEdtech企業の株価が一日で半減するといったことが発生しており、既存のEdtech企業は、生成AIと協業しないと淘汰される運命にあります。
 そのような中、既に数社のEdtech企業が生成AIを活用した英会話サービスなどをローンチし始めており、ELSA SpeakにおいてもELSA AIをリリースしました。ELSA AIでは、AI講師と会話をすることで発音や文法・語彙力に関してフィードバックを受けることができます。ELSA Speakが自然言語処理を活用した音声認識を強みにしているため、ユーザーの発音に訛りがあってもAIが何を伝えようとしているかを理解する能力が高い点に差別化要素であると考えられます。
 
ELSA社が今後目指す姿について
 今後は、発音や文法のフィードバックを行う英語学習ツールから、説得力のある話し方をコーチングするなどネイティブにも利用されるコミュニケーションの改善ツールへと進化することを目指しています。
 
【サロンを終えて】
 既に日本でも英語学習者の間では有名になっているELSA Speakについて、設立に至った創業者Vu Van氏の葛藤や想い、ユーザーを惹きつけるマーケティング施策やプロダクト設計、急成長を支える最新のスタートアップの企業文化、生成AIとの協業方針など非常に盛沢山の内容をご講演いただきました。ELSA Speakの1ユーザーとしても、学習が継続できている納得感を得たと同時に、今後の展開に対しても期待に胸が膨らみました。
 また、生成AIとの付き合い方については、AIはインターフェースであり、AIと自社の強みを掛け合わせて(ELSA社の場合は音声認識技術)どのような学習体験をユーザーに届けることができるかが差別化のポイントになるとお話しいただき、生成AIの活用方法に悩む多くの企業にとって大変示唆になる内容だと感じました。
 最後に、この場を借りて、ゲスト講師をお引き受けいただきました玉置俊也様、積極的にご参加いただきました学会員(16名)の皆様に、あらためて心より感謝申し上げます。
 
写真(右上が玉置氏)
写真(右上が玉置氏)
 
(文責:井関 夏帆)

 
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