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第180回マーケティングサロンレポート「瀕死の業界で勝ち残る新機軸の発想 酪農業界の若き変革者に聞く」

第180回マーケティングサロン:リアル・オンライン併用開催
テーマ:瀕死の業界で勝ち残る新機軸の発想 酪農業界の若き変革者に聞く
 
日 程:2023年11月7日(火)19:00-20:50
場 所:アビタス新宿本校
    およびZoom使用によるオンライン開催
ゲスト:株式会社秋葉牧場ホールディングス 代表取締役 秋葉 秀威 氏
サロン委員:齋藤 浩史、森 元行、関澤 充、村中 敏彦、竹中 信勝
 
【ゲストプロフィール】
秋葉秀威氏秋葉 秀威(あきば ひでたけ) 氏
株式会社秋葉牧場ホールディングス 代表取締役
父親が経営する株式会社秋葉牧場に2013年に入社し、2018年に同社代表取締役社長に就任。2020年に秋葉牧場ホールディングスを設立し、同社代表取締役に就任。それ以前は、2005年から大日本印刷、オリエンタルランド、シンガポールのホテルに在籍。また、2011年に英国:バーミンガム大学ビジネススクールでMBA取得(サロン委員の齋藤は同期)、2012年にスイスホテルマネジメントスクールを卒業するなど、海外で学んだ経験をもつ。なお、「成田ゆめ牧場」は同社の観光牧場(1987年開設)や直営店のブランドである。同社は、酪農事業をベースに、乳製品の企画・製造・販売、観光、店舗、コンサルティングなどに事業を多角化している。
 
【サロンレポート】
 今回のサロンでは、業界全体が低迷する事業環境のもと、父親から受け継いだ、100年超の歴史ある企業の変革に取り組む秋葉秀威氏をゲストにお迎えし、酪農業界では異端とも言える新機軸の取り組みをお話いただきました。
 千葉県の統計によると、乳用牛の飼養戸数は2万1310(1960年)、1060(2008年)、453(2022年)に激減(1戸あたり頭数は増加)。近年ではコロナ禍、ウクライナ紛争での飼料高騰など、事業環境は厳しい状況です。これに対して、秋葉氏は、新商品・事業、環境、動物福祉、グローバル化といった新機軸の取り組みで対応しています。
 水を使わず、牛乳で作り、商品名をキャッチーにした「過激な牛乳食パン」は、マツコ・デラックスがテレビ番組で「バターをつけないでもおいしい」と紹介。チーズケーキは通常はホール(円形)のところ長方形にして手土産需要を開拓。
 キッチンカーは、道路走行中に後続車から巨大な乳牛の顔が見えるように牽引することで、あおり運転が社会問題化する折に「癒される」と評判になったり、イベント会場のシンボルとなったりする効果を演出。スポーツクラブは、壁を設けず、スタッフを無人として低コストで運営し、屋外型スポーツジム「ファームステーションジム」としてグッドデザイン賞2021を(ジム事業子会社の「株式会社大地」にて)受賞しました。
 秋葉氏は、これからの酪農について、生産効率から持続可能性を重視する方向に舵を切る必要性を認識し、手を打っています。
 牛が排出するメタンガスが地球温暖化を進行させるとの指摘を踏まえ、カシューナッツ殻を飼料とすることでメタンガスを抑制する脱炭素の取り組みに着手し、エビデンスを収集しているところです。2021年末に完成した牛舎・堆肥舎は、搾乳から加工までの時間短縮による鮮度・風味の向上のほか、動物福祉(アニマルウェルフェア)の観点で、牛が自由に動き回れる仕様として、牛のストレスを軽減。堆肥を使用した自然飼料の自社製造、メタンガス抑制など環境にも配慮しました。フォーシーズンズホテルやホテルオークラでの商品の販売・使用、パティスリー「ピエール・エルメ」との協業などのブランド力ある取引先の開拓の背景には、商品だけでなく、動物福祉への配慮も評価されたといいます。
 グローバル化としては、シンガポールでの販売で先鞭をつけ、生産が拡大基調にあるインドに着目し、生産販売を推進する計画をもっています。
 
【サロンを終えて】
 会場およびオンライン参加者での討議を踏まえて、活発な質疑応答が行われました。
 多くの関心を集めた、新商品・事業開発のポイントとして、秋葉氏は、(1)リーダーとして社長の自分がまず動き少人数のメンバーに役割と権限を与えて巻き込む、(2)ブレストでは1000~2000と多くのアイデアを出してもらう、(3)種をまいて小さくやってみる、(4)小さな成功体験を積み重ねてメンバーに自信をもってもらう。メンバーが職務経歴書に書けるような実績を積んでもらう、(5)商品化を決めたら広報先行でリリースをまず出して反応を見ながら生産販売体制を考える、を挙げました。
 マーケターが新商品・事業開発を経営トップとどう進めるのか、そのヒントを学べたと感じました。
 ご多忙の折、東京の会場にお越しいただき、講演を賜りました秋葉様、サロンにご参加いただいた皆様、懇親会にまで参加いただいた10名の皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
 

集合写真
 
(文責:村中 敏彦)

 
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