ニュースリリース

第183回マーケティングサロンレポート「体験価値を活かした新しい酒文化の創造に向けて」

第183回マーケティングサロン:奈良
テーマ:体験価値を活かした新しい酒文化の創造に向けて
 
日 程:2024年1月22日(月)13:00-15:30
場 所:梅乃宿酒造株式会社
ゲスト:梅乃宿酒造株式会社 代表取締役CEO 吉田 佳代 氏
サロン委員:小島 弘雄、清水 信年、瀨良 兼司、出野 和子
 
【ゲストプロフィール】
吉田 佳代 氏吉田 佳代(よしだ かよ)氏
奈良県葛城市生まれ。
大学卒業後、商社を経て、2004年に梅乃宿酒造株式会社に入社。
入社10年目となる2013年7月に5代目社長に就任。
「#ワクワクの蔵」というテーマのもと、EC事業の変革に取り組む中で、従来よりも若いターゲット層に向けたSNSでの拡散を活かした展開を進めている。
第15回日本マーケティング大賞にて奨励賞を受賞。
 
【サロンレポート】
 梅乃宿酒造(奈良県葛城市)は、1893年(明治26年)に創醸した、創業130年を超える酒蔵です。
 一般的には歴史のある企業と思われがちですが、300~400年継続している日本の酒蔵の中では“若い会社”ということになります。そのため、社長は常に新しいことに取り組まなければならないと考えているとのこと。
 大手の酒蔵とは全く異なるアプローチで酒造りに取り組む梅乃宿。その戦略について説明頂いた後、実際に醸造を行っている酒蔵を見学して、最後においしいお酒を試飲させていただきました。
 
梅乃宿の由来
 『梅乃宿』の由来となったのは、移転前の蔵の前に立つ樹齢300年の梅の木。
 毎年鶯がやってくることから『梅乃宿』と名付けたそうです。
 新しい酒蔵の周りにも、多くの梅の木が植えられています。

 

梅酒製造への取り組み
 造り手が高齢化し、技術伝承をしようにも酒造りは冬の間だけ。半年の雇用では若者を採用できないため、年間雇用にして地元の人を採用しました。そこで思いついたのが夏場にできる梅酒の製造でした。普通の梅酒では面白くないので、自社の日本酒を使った梅酒をつくったところ、人気商品となったそうです。折しも梅酒ブームが到来し、大量に製造した梅乃宿の梅酒が一気に広まったのでした。
 さらに、梅酒を漬けた後の梅の実を有効に活用するために、完熟梅をあらくこして梅酒に入れました。梅の実も無駄なく一緒に味わえる、このあらごし梅酒が人気を博したのでした。
 
新しい酒文化を創造する
 梅酒は家庭でも作れるお酒。発売当初は、「業界の恥さらし」「あんなものに手を出して、次はつぶれる」とのバッシングを受けたとのこと。日本酒を汚しているのではないか、と悩んだことも。しかし、お客様の喜ぶ顔を見て「間違っていない」と感じたそうです。
 梅乃宿のパーパスは「新しい酒文化を創造する」。そのチャレンジが何年後かに業界のスタンダードになっていればいい。振り返ってみれば、それを始めたのは梅乃宿だ、ということがわかったら栄誉なことだ、と力強く語っていただきました。
 
驚きと感動で世界中をワクワクさせる
 元々はB2B2Cメインで全国の酒販店にお酒を卸していましたが、社長は新しい蔵をたくさんのお客様に来てもらう場にしたかったのです。直接消費者に会社の思いを伝えることが必要でないか、と考え、3年前からD2Cに力を入れているとのことです。
 社長は、売上とはどれだけたくさんの人に喜んでもらえたかの総数であり、そのためにどのように付加価値を上げていくかが社員の評価となる、と考えられています。そして、新商品の開発では、ユーザーの体験性を重視した商品開発を行っているとのことです。「何を作るか」ではなく、「何を楽しんでほしいか」を起点に、その体験に沿った商品造りをしている、と語っていただきました。
 そして、梅乃宿が力を入れたのはSNSによる発信。商品開発においては、いかにSNSで興味を持ってもらえるか、を重視されました。そして開発されたのが初のD2Cブランドとなる、PARLORあらごし大人の果肉の沼「いちご」。インパクトのある色と形、従来の日本酒のイメージとは全く異なる「ワクワクする」商品となりました。このような商品とキャンペーンを組み合わせた結果、7月にスタートしたECの売り上げはわずか半年で約10倍となったそうです。
 また、酒蔵と梅シロップ造りを楽しめる「体験型」の蔵見学が人気となりました。「体験価値を持った商品はユーザーに受け入れられ、SNSで広まっていく。これからも梅乃宿は世界中をワクワクさせる。」と社長は語っておられます。梅乃宿が次はどんなワクワクを提供してくれるのか、とても楽しみになりました。
(商品写真は梅乃宿HPより転載)
 
酒蔵見学
 約1時間の講演の後、新しい酒蔵を見学。最新の酒造りの設備を見ながら、日本酒ができるまでの工程について解説していただきました。酒米である山田錦の稲穂や、様々な精米歩合のお米の現物を目にすることができました。また、お酒が発酵している「声」を聴くことができる仕組みなど、まさにワクワクする体験ができました。
 

 
 最後に、梅乃宿ご自慢の日本酒と梅酒をそれぞれ4種類、計8種類を試飲させていただきました。その美味しさに惹かれ、併設ショップではお土産を購入する参加者で賑わいました。
 

 
【サロンを終えて】
 日本酒の需要が低下していく中、「#ワクワクの蔵」というテーマを掲げて常に新しい酒造りに取り組む梅乃宿酒造。そこで大切にされているものは、多くの人に楽しんでもらおうという思い、そして、社長以下社員たちもワクワクしながら働けるという社風だということが伝わってきました。少量で希少価値の高い日本酒を作ってブランド価値を高めるのではなく、若い人や女性が欲しくなるようなお酒を造る。発信力のある顧客が増えれば、さらに顧客が拡大する可能性があります。また、短いサイクルで次々に新商品を開発する開発力の高さにも驚きました。12月に事前訪問させていただいた際にも新商品がありましたが、今回もまた新しい商品が発売されていました。
 初めての人もリピーターもワクワクして訪れることができる。梅乃宿の魅力をもっと多くの人に伝えたい、と
思いました。
 

 
(文責:出野 和子)

 
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