ニュースリリース

第187回マーケティングサロンレポート「今知っておいたほうがいいWeb3関連の法務知識」

第187回マーケティングサロン:東京
テーマ:今知っておいたほうがいいWeb3関連の法務知識
 
日 程:2024年2月29日(木)19:00-20:30
場 所:一橋大学千代田キャンパス 学術センター内5階 第6会議室
ゲスト:創・佐藤法律事務所 代表弁護士 / ニューヨーク州弁護士 斎藤 創 氏
サロン委員:今井 紀夫、嶋尾 かの子、深澤 了
 
【ゲストプロフィール】
斎藤 創 氏斎藤 創 氏
創・佐藤法律事務所 代表弁護士 / ニューヨーク州弁護士
西村あさひ法律事務所にて16年間、主として金融分野(証券化、ファンド、デリバティブ等)を取り扱った後、2013年にビットコインに出会い、2015年に現事務所を立ち上げた。各種団体(日本ブロックチェーン協会、日本STO協会、日本暗号資産ビジネス協会、メタバースジャパン、FinTech協会)などの理事、監事、顧問、事務局などを勤めるほか、HashPort監査役、前bitFlyer取締役も歴任。Web3やFinTechに関する造詣が深く、AI、VR/AR、ドローンなど各種テクノロジー関係案件、スタートアップ、ベンチャーファイナンス等を主に取り扱う。海外のChambers Asia Pacific、Best Lawyers rankings、Legal500などにより、FinTech、銀行法・金融法、金融機関規制分野の弁護士として、ランク・インしている。
 
【サロンレポート】
 Web3に取り組む企業や公共団体が増えている中、さまざまな可能性を持つ一方で、法律面では不明確な点や課題も存在します。
 
 今回は、日本においてWeb3やFinTechへの造詣が深く、AIやVE/AR、ドローンなど積極的に各種テクノロジー案件を取り扱ってきた斎藤創氏をお招きし、「今知っておいたほうがいいWeb3関連の法務知識」をテーマにお話をいただきました。
 
 Web3の基本的な知識として、Web1.0からWeb2.0、Web3.0の変遷や違いのまとめを紹介。次に日本におけるWeb3の歴史や現状についての話がありました。
 

 
 仮想通貨の代表事例といえば、ビットコイン。ビットコインの価格は乱高下が繰り返しながらも、基本的には上昇傾向。暗号資産ETFの登場などにより2024年3月には900万円を超えています。売買については通常、暗号資産取引所で行われます。日本では2018年の大規模ハッキング事件を受け、厳格な規制が引かれ世界に遅れをとっていましたが、現在は、運用面が整備され、また世界の他国も規制が順次厳しくなってきたことから、日本も市場として着目されているとのこと。
 
 暗号資産の売買やビジネス、マーケティングで利用する場合、どのような規制があるのでしょうか。例えば、暗号資産の売買をビジネスとして日本居住者相手に行う場合は、日本の暗号資産規制に従う必要があります。また企業が日本でIEO(暗号資産を利用した資金調達)を行う場合、日本で登録した暗号資産交換業者を通じて行う必要があります。日本居住者には販売せずに海外居住者に暗号資産を販売する場合には、海外法に従うことになり、日本法上は、マーケティング方法などに規制はありません。
 
 Web3.0におけるブロックチェーン技術は、NFT(偽造不可能な鑑定書・正遊証明書付きのデジタルデータ)は生み出し、デジタルデータに資産価値をもたらしました。デジタルアート、デジタルコレクション、ブロックチェーンゲームなどはNFTの代表的な事例です。
 

 
 最近は、ウイスキー、ホテルの利用権、金、不動産など、現実資産を裏付けとしたNFTも出てきており、これらをRWA(Real World Assets)と言います。NFTやNFTと考えられるRWAには通常金融規制の適用はなく、マーケティング上も、一般の商品と同様の販売が可能です。
 

 
 ブロックチェーンの技術は、金融商品だけでなく組織も生み出しています。DAO(Decentralized Autonomous Organization-分散型自立組織)とは特定の管理者が存在せず、メンバーが共同にて所有や運用を行うプログラム上の組織です。投資を自動で行い、配当も自動で受け取れるInvestment DAOが世界では流行しています。ただし日本ではInvestment DAOは金融商品取引法で厳格に規制されると思われ、利用は多くはありません。他方、日本では配当等のないコミュニティDAOが盛り上がりつつあります。例えば、長野県山古志村が電子住民票の発行やNFTアート作品を販売。先進的なまちづくりにチャレンジしています。
 
 ブロックチェーン技術は上記の他、次々と新たな枠組みを生み出します。STO(Security Token Offering)、ステーブルコイン、CBDC(中央銀行が発行するステーブルコイン)、DeFi(非中央集権型金融)、DApps(分散型アプリケーション)、スマートコントラクトなど、これらについて紹介と解説がされました。
 
 Web3.0の世界では、特定の運営者がいるわけではなく、そこに参加している者全員が平等である。という考え方があります。私たちの現実世界にある特定の国や組織、企業にある信用は存在せず、プログラム(ルール)に沿って、さまざまな物事が決まっていくことが大きな特徴です。暗号資産やDAOを例にして言えば、「貢献してきた人にいかに報酬を与える設計にするかがポイント」と斎藤氏は指摘します。
 
 あっという間の90分間。最後は斎藤氏の発表をもとにした質問が出されました。斎藤氏から具体的な事例を用いての回答があり、活発なディスカッションが行われました。
 
講演の様子 講演の様子
 
【サロンを終えて】
 「特定の運営者がいるわけではなく、そこに参加している者全員が平等である」という考え方は、組織論でよく言われる「ティール」との共通点を感じました。暗号資産を生み出したブロックチェーン技術が、コミュニティDAOなどへ進化しているように、経営やマーケティングにとって、このイノベーティブな技術をこれからどのように応用し、活用していくのかが重要であると感じました。
 
(文責:深澤 了)

 
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