第193回マーケティングサロンレポート「ビジネスとアートの交差点:イノベーションに活かすMFA(Master of Fine Arts)」 |
第193回マーケティングサロン:東京
テーマ:ビジネスとアートの交差点:イノベーションに活かすMFA(Master of Fine Arts)
日 程:2024年7月30日(火)18:30-19:30
場 所:青山学院大学 17号館8階 17801教室
ゲスト:大手外資系コンサルティングファーム マネジング・ディレクター 朝山 絵美 氏
サロン委員:小谷 恵子、渡邊 力、島貫 亮輔、森家 明味、福田 徹
【ゲストプロフィール】
朝山 絵美 氏
工学修士(Master of Engineering)、造形構想学修士・博士(Ph.D. of Creative Thinking for Social Innovation)
外資系コンサルティングファームにおいてマネジング・ディレクターを務め、人間中心の経営戦略を専門とする。主な著書『ビジネスで成功している人は芸術を学んでいる MFA入門』
同志社大学大学院工学研究科知識工学専攻(現:理工学研究科インテリジェント情報工学専攻)の修士課程を修了。カナダ バンクーバーにてCo-Active® Training Institute(CTI)主催のコーアクティブ・コーチングのコアコースを通じてコーチングを修学。その後、外資系コンサルティングファームに入社し、現在に至る。
ビジネスパーソンが人間らしくイキイキとイノベーションを創出することのできる世界を実現するため、社会人院生として、武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースの修士課程に入学。2021年3月に修了後、同大学院博士後期課程において、事業リーダーが新規事業を創出する方法論に関する研究と美しい椅子の制作を行う。その結果、イノベーションの創出にはアートのスキルが重要であることを明らかにし、2024年3月に学位取得。研究によって明らかになった内容を多くのビジネスパーソンへお伝えしたいという想いで同書を2024年4月に上梓。
公益社団法人、一般社団法人の理事や相談役を歴任。経営者を対象としたエグゼクティブコーチングの実績多数。
【サロンレポート】
ビジネスにおいて、従来は論理的な思考が重視されてきましたが、近年ではアート思考の重要性が注目されています。これは、現代社会が複雑化し、従来の論理的な思考だけでは対応できない課題が増えている中で、経営戦略として新しい価値を創造していくことが求められることも一つの要因だと思われます。
今回のサロンでは、外資系コンサルティングファームにおいてマネジング・ディレクターを務めながら、武蔵野美術大学大学院にて博士を取得された朝山絵美氏をゲストにお迎えし、MFAではどのような学びがあり、どのようなスキルが得られるかを分かりやすく説明していただきました。更に、大学院での学びと創作活動を通じて得られた知識や経験から、ビジネスパーソンがイノベーションを起こすために、アートのスキルがどう活かされるについてお話ししていただきました。
今回の講演では、抽象的な概念や情報(インタンジブル:思考・無形なもの)と触れることができる具体的な形(タンジブル:造形・手にふれられるもの)の関係性が理解できました。
ビジョンやアイデアなどの抽象的な概念を視覚化したり、触れることができる形にするタンジブル化は、自身のアイデアを再考するきっかけになるなど、よりアイデアを深めることができます。また、浸透の効果があり、モノがあることで質的なつながりを作ることができます。ビジネスにおいて、革新的な新商品やサービスを世の中に出した場合、その新しい価値を利用者に理解してもらうためには、言葉だけではうまく伝えることができないため、タンジブル化がとても重要となります。
今回の講演のテーマとなっている「ビジネスとアートの交差点」について、インタンジブルとタンジブルを組み合わせて、ビジネスの世界でイノベーションをどのように起こしていくかを考える素晴らしい機会になりました。
また、講演後半のQ&Aや、その後の朝山様を囲んでの懇親会でも、活発な意見交換が行われ、とても盛り上がった会となりました。
【サロンを終えて】
最初はビジネスとアートのつながりがよくわかりませんでしたが、朝山様の講演を聞くことで、ビジネスリーダーがより創造的で革新的な働き方をするための様々な気づきがありました。
特に印象に残ったのは、「トリハダ美」という言葉です。「トリハダ美」とは、朝山様による造語で、何かしらの刺激によって感じる「ぞくっとする」感覚、つまり鳥肌が立つような感覚を伴う美しさのことだそうです。「トリハダ美」は、単なる美しさだけでなく、私たちの心に深く働きかける、より豊かな体験をもたらす概念です。ビジネスにおいても、この「トリハダ美」を意識することで、手指の体験で「欲しい」と直感させるUXやUIの実現や、より創造的で革新的な活動が可能になるという点が、とても印象的でした。
お忙しい中ご講演頂いた朝山様、そしてご参加頂いた皆様に感謝申し上げます。有難うございました。
(文責:福田 徹)