ニュースリリース

第199回マーケティングサロンレポート「新聞販売業からホスピタリティ流通業へ ~地域密着を生かした多角化経営の展開」

第199回マーケティングサロン:東京
 
テーマ:新聞販売業からホスピタリティ流通業へ ~地域密着を生かした多角化経営の展開
 
日 程:2024年9月18日(水)19:00-20:30
場 所:毎日新聞社毎日ホール
ゲスト:株式会社アウンズ・ヤナギハラ 代表取締役社長 柳原 一貴 氏
サロン委員:佐々木 竜介、長崎 秀俊、森口 美由紀、京ヶ島 弥生
 
【サロンレポート】
 新聞の普及とともに発展した新聞販売店が、デジタル化に伴い配達部数が減る中で、どのように対応し発展してきたのか。株式会社アウンズ・ヤナギハラは、1960年柳原新聞店として浜松で創業し、新聞部数がピークに達する1990年代まで順調に成長してきました。柳原さんは、90年代末には将来の新聞部数の減少を予測、新聞の部数と配達に注力する経営から、CS(顧客満足)とES(社員満足)を基盤とする経営に転換していきます。そして、2020年までに売上を2倍に、かつ新聞販売の売上構成比50%・他の事業50%というビジョンを掲げます。
 まず取り組まれたのがコミュニティづくりで、2002年に「エムズ倶楽部」というカルチャーサロンを立ち上げます。地域の人たちが、ともに高めあう仲間づくりができるよう、場を提供するために始められたとのこと。発足当時から現在まで社員が運営し、月100講座・参加者数400名の規模で運営されています。
 次に取り組まれた代表的な事業は、知久屋というお弁当屋さんとの協業です。浜松では有名な老舗の総菜会社で、無添加・無着色・有機野菜を使用し、お客様から信頼されていますが、自社配送の仕組みがなく、競合の進出後は苦戦されていました。2012年以来、アウンズ・ヤナギハラさんが新聞とともに配達する仕組みをつくり、また競合に対して差別化を図ることで、現在は浜松での宅配夕食で1位になっています。このビジネスモデルを他地域の新聞販売会社にも活用しようと、「楽膳」というフランチャイズが始まり、静岡のみならず全国で徐々に普及しています。
 元々の新聞販売業では、2018年と2019年にアウンズ・ヤナギハラさんが静岡県他エリアの販売会社を引き継ぎ、ビジョンで掲げた売上2倍を達成されました。
 アウンズ・ヤナギハラさんの特徴は、多角化しても、元々新聞に携わっているスタッフが新たな事業に取り組んでいることです。だからこそESに力を入れ、スタッフとのコミュニケーションを重視されています。ミッションやビジョンの策定にも、社員が参加しています。事業の定義として「ホスピタリティ流通業」を掲げていますが、ホスピタリティとは一人ひとりにあわせてサービスを提供することであり、一律ではない、それができるためにスタッフの多能化をすすめているとのことでした。
 そして事業の再定義にあたっては、「新聞」「配達」のような事業者側の視点ではなく、「役立つ情報」「生活を豊かにする情報」という顧客軸での価値を定義し、事業を選択されているのがとても印象的でした。
 
【サロンを終えて】
 自ら掲げた「ホスピタリティ流通業」という事業定義は、ブランドアイデンティティとして、従業員にも浸透し、同業他社との協業、あるいは差別化に大きな役割を果たしています。本業である新聞販売業への思いは変わらず更に事業拡大に邁進される柳原社長とアウンズ・ヤナギハラさんに、これからも注目していきたいと思います。
 貴重なご講演をいただいた柳原社長に、改めてこの場を借りてお礼申し上げます。
 
集合写真
 
(文責:森口 美由紀)

 
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