ニュースリリース

第200回マーケティングサロンレポート「成果を出すマーケターの考え方と、各キャリアからの学び」

第200回マーケティングサロン:東京
 
テーマ:成果を出すマーケターの考え方と、各キャリアからの学び
 
日 程:2024年10月24日(木)19:00-21:00
場 所:法政大学 ボアソナード・タワー25階 研究所会議室5
ゲスト:髙口 裕之 氏(株式会社タネトシカケ 代表取締役 / 株式会社はなまる マーケティング本部 CMO / 一般社団法人マーケティングギルドコミュニティ 代表理事)
サロン委員:小坂 忠史、関澤 充、芹澤 和樹、田口 佳之、竹中 信勝、村中 敏彦
 
【ゲストプロフィール】
髙口 裕之 氏髙口 裕之 氏
株式会社タネトシカケ 代表取締役
株式会社はなまる マーケティング本部 CMO
一般社団法人マーケティングギルドコミュニティ 代表理事
法政大学経営学部 / グロービス経営大学院卒。大学卒業後に株式会社Mizkan(ミツカン)に入社し、営業職を経験。マーケティング本部へ異動後、みりん・たれカテゴリーのブランドマネージャーを歴任し、食酢カテゴリーのマーケティングを統括。食品マーケティングコンサルタント、日系PEファンド投資先の社長に就任し、投資回収。2017年に米系PEファンドの投資先であった株式会社おやつカンパニーでマーケティング本部長に就任。同社投資回収後、2023年8月から株式会社はなまるのCMOに就任。2024年3月、マーケティング支援を行う株式会社タネトシカケを設立。はなまる社の他、PMO企業の社外取締役、リサーチやデジタルマーケティング系企業顧問やエグゼクティブアドバイザー、eSports企業非常勤CMO、東京理科大学オープンカレッジ講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授なども務めている。
 
【サロンレポート】
はじめに~自己紹介、キャリアサマリー
 マーケティングスキルは共通項が多いため、ポータブルスキルになります。それを活かす働き方を目指し、現在、株式会社タネトシカケを立ち上げ、株式会社はなまる CMOをはじめ複数社の経営に携わるパラレルワークを実践しています。そして対象とする顧客は自身の日系企業の経験より、“マーケティングがあったら伸びると思われる中小企業”と考えています。
 キャリアを振り返りますと、「ミツカン(一般職→管理職)」→「デジタルアーツ(管理職)」→「フードレーベル(経営)」→「おやつカンパニー(経営)」→「タネトシカケ(オーナー)」と変化。現在、「はなまる CMO」を一つの業務として受けています。
 
講演の様子 講演の様子
 
ミツカン時代
 エリアの営業からスタートし、マーケティング本部に異動。約20年間「鍋つゆ」シリーズや「金のごまだれ」等の商品開発やレシピ・生活提案キャンペーンなどを手掛けました。
 営業からマーケティング業務へ異動した時の学びは、
「“売りたい”から、“買ってもらいたい”へ」
「活動の起点・主語は“自分”から、“想定(未)顧客”へ」
「“個人”から、“人や組織を動かす”へ」
といった大きな変化でした。そして、特に重要な要素は“人間の感情”であり、心理から企画を考えることです。そこで、様々な企画を通すためには“関係者を巻き込むロジック”と“伝える熱意”、すなわち“ストーリーを作る力”が大切ということを理解しました。
 
デジタルアーツ時代
 デジタルアーツへの転職は当時のグロービス経営大学院における学びとネットワークもありましたが、何よりもブランドから領域を広げてマーケティングを取り組みたいという気持ちと、心地よいミツカンの状況から脱し、新参者としてチャレンジしたいという意志の高まりによるものでした。
 デジタルアーツは他業種ということもあり、ミツカン時代の価値は通用しません、だからプライドを捨て謙虚に、周りに教えてもらうことから始めました。そして実績を作る前に成果を出すための評判を上げる環境整備が大切だと思い、活動しました。
 つまり、「“自分個人のプライド”よりも、“仕事人としてのプライド(目的の達成に自分を合わせる)”に重きを置く」というマインドセットが重要な要素でした。
 
フードレーベル時代
 牛角のライセンス事業を核に、外食の味を家庭に届けることを実現する企業として、フードレーベルでは、初めて経営側として参画しました。最初に行ったことは仕組み(理念・戦略・制度)を作ることであり、人を動かす・組織づくりの大切さと難しさを理解、体感しました、
 そこで、安定的に経営を回し、続いていくために、3つのポイント(①勝てる道筋からの設計~戦略、②説明/理解/納得を得る根気強い人材育成、③それが流れる人事制度や投資)を重視した仕組みづくりを実現し、最終的にはバイアウト成功を果たしました。
 
おやつカンパニー時代
 おやつカンパニーには、取締役として経営に参画。モノではなく中長期的なブランド視点を持ったマーケティングをカルチャーとして導入、浸透させることを実行しました。カルチャー創りはしみついた考え方を変えることに他ならず、重要、且つ最もタフで難しい経営課題と言えます。つまり、戦略よりも、カルチャーを変えなければ企業は変わらないということです。そのためには、マネジメントを全部変えなければならない、と考えます。
 
はなまる CMO時代
 現在、うどんチェーン業界においてどう打ってでるのかを、練ってテストしています。話せないのでここまでとさせてください。
 
会場内グループディスカッション
講演の様子※6グループに分け、「髙口氏の考え方をどう受け止めるか、どう活用できそうか」をテーマに20分間討議
 
質疑応答
質問1:部下や周りにより理解してもらうこと、またモチベーションをあげるためにはどうすればいいのでしょうか?
→ 例えばカタカナ用語などの理解促進においては日常のできごとに例えるなどのメタファーを活用します。モチベーションアップについては、「その人の置かれている状況」と「その人の性格」を考慮して、その人にとってのメリットを伝えていきます。
 
質問2:(質問者の方の)担当ブランドが贈答用、かしこまったイメージを持たれているため、若年層に買われません。
そこで、ブランドの価値やイメージを変えることを考えているが、変えるにはどうしたらいいのですか?
→ そのブランドを支持している顧客・マーケットがあるので、価値を変えて捨てる必要はないのではないかと思います。価値を一緒にしながら、違うイメージでそのブランドにたどりつく、つまり、違うルート・道を作ることです。そのルートの多さと間口を拡げる考えもあると思います。
 
質問3:企業のカルチャーを変えることとブランドを変えることはどちらが難しいのですか?
→ 企業カルチャーを変えることの方がブランドを変えることよりも難しいと思います。経営層を始め、戦略、制度等全てを変える必要があるためです。
 
質問4:今までの失敗事例があれば教えてください。
→ 成功事例よりも失敗事例の方が多いのが当たり前です。失敗事例としてはミツカン時代にある分野の成功ブランドを活用し他の調味料に拡張したものの、その調味料のガリバー企業のブランド力には勝てませんでした。つまり、失敗の要因はマーケティング視野狭窄(マーケティングにおいて、視野が狭くなる、狭いものの見方に陥ること)でした。
 
【サロンを終えて】
 今回の髙口 裕之 氏を招いてのマーケティングサロンは、若手マーケターにとっては自分の直面している課題と向き合い、解決するヒントや示唆を得ることができる機会となったと思います。
 また筆者を含む同年代のシニアにとっても、髙口氏の足跡を振り返りながらの現状のマーケターとしての在り方は、私たち自身のポータブルスキルの再認識をすることにつながり、そしてあるべき姿の一つとして共感を得るものであったのではないでしょうか。
 今回は、1つのマーケティングアクティビティの事例を深く掘り下げていく内容ではなく、髙口氏というマーケターの半生を通して、その経験や実践からの学びを共有いただけた貴重なサロンになったと言えます。
 キャリアは一人ひとりが作り上げていくものであり、科学としての再現性を展開することは難しいことですが、現在、髙口氏が実現している“ポータブルスキルとしてのマーケティングを活かしたパラレルワーク”はこれからのマーケターの進む道の一つになっていくのではないでしょうか。
 また、このサロンにおいては、理解促進にメタファーを活用することや、いくつかのマーケティング戦略事例などをご紹介いただき、非常に有益なTipsもいただけたと考えています。
 最後に、本回を持ってマーケティングサロンは200回を迎えることができました。このことについてご参加された皆様、ご登壇の髙口様をはじめ講師の皆様、そしてマーケティングサロンに関わっていただいた皆様方に感謝を申し上げます。
 この記念すべき回において、リアル開催のみにも関わらず、30名を超える参加があり、そして若手の参加者が多かったことはこれからのマーケティングサロンの発展につながっていくのではないか、と期待したいと思います。
 
集合写真
集合写真
 
(文責:小坂 忠史)

 
Join us

会員情報変更や、領収書発行などが可能。

若手応援割
U24会費無料 &
U29会費半額
member