第203回マーケティングサロンレポート「3COINSを展開するアパレルメーカーPALの売上伸長の秘訣 ~計2000万フォロワー抱える社内インフルエンサーの存在~」 |
第203回マーケティングサロン:東京
テーマ:3COINSを展開するアパレルメーカーPALの売上伸長の秘訣
~計2000万フォロワー抱える社内インフルエンサーの存在~
日 程:2025年1月22日(水)19:00-21:00
場 所:法政大学 市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー25階 研究所会議室
ゲスト:株式会社パル プロモーション推進部 取締役 専務執行役員 堀田 覚 氏
サロン委員:白井 明子、清原 康毅、岡田 庄生、海野 浩三、渡邉 裕也、大伴 崇博、山口 葉月
【ゲストプロフィール】
堀田 覚 氏
株式会社パル プロモーション推進部 取締役 専務執行役員
大学卒業後、大手アパレル企業に入社。
婦人服の営業にはじまりVMDやMD、ブランド責任者を経験。
2009年 ハースト婦人画報社に入社。
メディアコマースサイト「ELLE SHOP」の立ち上げとMDとマーケティング責任者として事業の成長に注力。
2014年 パルに入社。現在は、EC、プロモーション、WEBシステム、CRMなどを管掌。
【サロンレポート】
今回のサロンは、まず堀田様からパルグループの会社概要やインフルエンサーを活用したSNSマーケティングの取り組みをご講演頂き、グループディスカッション、質疑応答の流れとなりました。
1. 会社概要と成長戦略
パルグループは1973年に大阪で設立され、50以上のブランドを展開。2024年2月期には売上高1,925億円、経常利益188億円と過去最高を記録。EC分野では競合より遅れを取っていましたが、近年急成長。SNSの活用を含めたデジタル戦略を強化することで、さらなる発展を目指しているとのことです。
2. スタッフのSNS活用と影響力
約1,700名のスタッフがSNSを活用し、フォロワー1万人以上のスタッフは約300名、総フォロワー数1,900万と、日本のファッション業界でトップレベルの影響力を持っています。スタッフ自身がSNSを活用して顧客との共感を生み、広告費をかけずに集客や売上向上に貢献しているそうです。SNS時代においては「人が人に共感する」ことが重要であり、スタッフのSNS活用をさらに推進しているとのことでした。
3. SNS活用成功のポイント:教育・評価・データ活用・ケア
スタッフのSNS活用を定着させるため、以下の4つの要素を重要視されています。
① 教育
SNS活用を成功させるため、スタッフ向けの教育体制を整備
・基本マニュアルの提供:SNSの運用方法や投稿のポイントを明確に示す
・希望者へのレクチャー:SNSを活用したいスタッフには個別に指導を行い、スキルアップを支援
・好事例のタイムリーな紹介:成功した投稿や運用事例を社内で共有し、実践につなげる
② 評価
スタッフのSNS活動を正当に評価し、モチベーションを維持するための仕組みを導入
・フォロワー数に応じた月額手当:一定のフォロワー数を獲得したスタッフに手当を支給
・EC貢献売上による賞与反映:SNS経由でEC売上に貢献したスタッフには賞与で還元
・影響力のあるスタッフの年収アップ:SNS活用の成果次第で、年収が数百万円増加するケースもあり
③ データ活用
SNSのフォロワー数だけでなく、質の向上を重視
・SNSごとのアルゴリズムを理解し、最適な指標を測定・改善
・社内ブランドの結果指標を可視化し、比較できる環境を整備
④ ケア・応援
スタッフのSNS活動を支援し、継続しやすい環境を構築
・投稿をなるべく見て「いいね」する
・良かった投稿は理由を添えて直接褒める
・成功事例を全社で共有
・ブランドの会議にSNS活用の議題を組み込む
4. データ活用とECの成長戦略
パルグループでは、ECと実店舗の相互利用者の購買頻度が高いことから、データ活用によるマーケティング強化を推進
・訪問数・コンバージョン率(CVR)・客単価などのデータを詳細に分析
・SNSのフォロワー増加率やエンゲージメントスコアを指標化し、改善策を講じる
・データベース言語(SQL)の習得を推奨し、エンジニアに頼らずデータ活用できる環境を整備
5. 実店舗の再定義とオムニチャネル戦略
ECが成長する中、実店舗の価値を「発見・体験の場」として再定義
・実店舗は五感を活かしたコンサルティング接客を提供し、ECとの差別化を図る
・SNSと連携し、顧客との接点を強化
・オムニチャネル戦略を推進し、実店舗とECの相乗効果を高める
6. 個人の創意工夫と令和の商店街構想
スタッフの個性を活かした発信を推奨し、顧客との共感を生むブランド作りを目指す。
・「コンプレックスは個性」:スタッフの個性が共感を生む源泉
・「下手でも良い」:個人の思いを伝えることが大切
・SNS時代は個の影響力が重要
今後は「スタッフが楽しんで参加し、顧客も巻き込まれる令和の商店街」を目指したいとの話で講演を締められました。
7. 質疑応答
投稿に対するストレスのケア方法、商品開発に対する社内インフルエンサーの活用、SNSから情報収集するが直接は購入しない場合の評価方法など各グループから多くの質問が寄せられました。
【サロンを終えて】
パルグループの成長要因として、社内インフルエンサーの活用の話が目立つかも知れないが、その裏にある従業員の力を重視する「企業文化」や、個の力を引き出す為の教育から分析、評価などの「仕組み作りの徹底」こそ成長の本質であると感じました。一般的な企業では炎上を気にして、従業員のSNS活用を推進しきれません。更に1,700人の従業員への教育、投稿の成果を評価に落とし込む業務は想像しただけで気が遠くなる話です。故に普通の会社には非常に模倣困難な取り組みであろうと思います。「インフルエンサーマーケティング」というキラキラした言葉の裏には、やり切る「胆力」を感じました。分野は異なるが同じプロモーション業務を担う私にとっても非常に刺激的で学びの多いサロンとなりました。
お忙しい中ご講演頂いた堀田様、そしてご参加頂いた皆様に感謝申し上げます、有難うございました。
(文責:清原 康毅)