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第218回マーケティングサロンレポート「環境マーケティングと価値共創」 |
第218回マーケティングサロン:福岡
テーマ:環境マーケティングと価値共創
日 程:2025年11月19日(水)17:00-19:00
場 所:九州産業大学 1号館 N020教室
ゲスト:荻原 浩三 氏(萩原オリーブ 代表)
侯 利娟 氏(九州産業大学 商学部 准教授)
ファシリテーター:山口 夕妃子(佐賀大学 芸術地域デザイン学部 教授)
サロン委員:侯 利娟、山口 夕妃子
共 催:九州産業大学 侯研究室 / 佐賀大学 山口研究室
【サロンレポート】
「香りを通じた人・自然・地域がつながる持続可能なまちづくり」
スピーカー:荻原 浩三 氏(萩原オリーブ 代表)
萩原オリーブの取り組みを代表である萩原氏より、無農薬農業を基盤に、「香り」を通じて人・自然・地域をつなぐ実践が報告された。耳納山麓の自然環境の中で、農薬や除草剤を使用せず、植物本来の力を引き出す農法を行いながら、オリーブやハーブの栽培、加工、販売までを一貫して手がけている。香りの良さや安心感は、この自然との共生から生まれていることが強調された。
特に印象的だったのは、蒸留や収穫、調香といった体験を通じて、訪れた人が土地の空気や風景、香りを五感で感じる場づくりである。これらの体験は、地域への関心や愛着を高め、ファンづくりへとつながっている。香りを媒介としたこうした取り組みは、環境への配慮と事業性、そして地域の魅力発信を同時に実現する、持続可能なまちづくりの一つの姿を示していた。
「産学連携による環境マーケティングの実践」
スピーカー:侯 利娟 氏(九州産業大学 商学部 准教授)
本報告では、環境マーケティングの取り組みは企業にとってコストや負担と見なされがちであったが、経済的価値と社会的価値を同時に生み出すマーケティングという理解が広まっていることと、SNSやECの普及により、消費者同士が体験や共感を共有し、価値が広がる時代へと変化していることが紹介された。環境配慮も、企業からの一方向的な発信ではなく、消費者や地域が参加する形で広がっていくようになった。
無農薬ハーブの事例では、大学との連携による産学の取り組み事例として、「環境に良いから」ではなく、「香りがよい」「安心できる」といった商品体験を通じて、結果として環境価値が自然に理解されていくプロセスが紹介された。環境教育を前面に出さず、体験を軸に価値を伝える点が印象的であった。環境マーケティングは、デジタル社会において「体験」と「共創」を手がかりに、より身近なものへと進化していることが確認された。
【サロンを終えて】
本サロンでは、環境マーケティングの理論と、香りを通じた農園の実践という二つの視点から、環境と地域をめぐる取り組みについて学ぶ機会となった。第1報告では理論的枠組みが示され、第2報告では現場での実践が紹介されることで、学問と実践が相互に補完し合う関係性を感じる内容であった。
後半のグループディスカッションでは、報告者が各グループを回りながら意見交換が行われるとともに、U24の方を対象とした学会紹介も行われた。参加者それぞれが「学問として考えること」と「実践として行うこと」の違いとつながりを、対話を通じて理解する時間となり、少人数ならではの密度の高い議論を通じて、多様な視点が交わされるサロンらしい開催となった。

(文責:山口 夕妃子)

