ニュースリリース

第222回マーケティングサロンレポート「小林 哲 先生 ご退官記念講演」

第222回マーケティングサロン:リアル・オンライン併用開催
 
テーマ:小林 哲 先生 ご退官記念講演
 
日 程:2026年1月27日(火)19:00-21:00
場 所:事業構想大学院大学 大阪校およびZoom使用によるオンライン開催
ゲスト:大阪公立大学大学院 経営学研究科 教授 小林 哲 氏
    神戸大学 名誉教授 / 流通科学大学 名誉教授 石井 淳蔵 氏
    流通科学大学 学長 清水 信年 氏
サロン委員:小島 弘雄、小宮 信彦
 
【サロンレポート】
講演の様子 第222回マーケティングサロンは、日本マーケティング学会第5期(2020年4月-2023年3月)会長であり、大阪公立大学大学院経営学研究科にて長年にわたり研究・教育にご尽力されてこられた、小林哲先生のご退官記念講演を開催しました。
まずは、小林先生から「エフェクチュエーティブなマーケティング研究の軌跡―独断と偏見の日本マーケティング史―」と題して、ご講演いただきました。
 
1. 東京から大阪へ
 冒頭、学部生・大学院生時代を過ごした東京での日々から、大阪市立大学(当時)にご着任されるまでを振り返っていただきました。学部では戦略的マーケティングを専攻され、大学院ではチャネルパワー論をテーマとして研究を進められました。
 当時の学会や研究会での議論に加えて、ビジネススクールへの参加や研究所での活動を通して、企業の現場に触れる機会があったことが、その後の研究関心に繋がっていきました。大阪市立大学にご着任後は、関西の研究者と交流を深めながら、「すくすく楽しく過ごして」、現在に至ります。
 
2. 流通チャネルからブランド研究へ
 続いて、小林先生が取り組まれた研究テーマや関心の変遷をお話しいただきました。当時(1980年代)、卸売業者との取引関係に基づいた既存チャネルの活用によってパワーを発揮していたライオンに対して、自社チャネルの構築によって製品開発に力を入れた花王が競争優位性を高めた出来事に触れる中で、ブランド論との出会いがありました。
 D. A. アーカーの『ブランド・エクイティ戦略』の翻訳をきっかけとして、日本におけるブランド研究の初期から携わり、現在取り組まれておられる地域ブランド研究へと結びついていきました。
 
3. 1980年〜2025年
 最後に、方法論的アプローチの変遷を振り返りながら、今後のマーケティング研究に対する展望をお話しいただきました。1990年代、これまで論理実証主義が中心となっていたマーケティング研究において、解釈主義が台頭してきた当時のことを、学界での議論を振り返りながらご紹介いただきました。
 そのうえで、定量研究から定性研究へ、そして近年は定量研究が主流となっている先祖帰りのような現状に対しても、妥当性の議論が強く求められるが故に、新しいことが言えなくなっていることを指摘されました。また、マーケティング研究は、一般理論というよりも、R. K. マートンが提唱した中範囲の理論の解明に関わるような、特定領域にあたる理論の探究が展開されていることを踏まえながらも、「本当にそうなのか?」と参加者に投げかけました。
 ご講演のむすびにかえて、産業革命以来、200年ぶりの変革である情報革命が到来した現在におけるマーケティングの「知」とは何か。これまでの延長線ではない、情報革命下でのマーケティングの特徴は何か。そもそも情報革命とは何か。R. S. テドローの話を例に挙げながら、「私たちも適応していかないといけない」とメッセージをお伝えいただきました。
 
 ご講演に続いて、小林先生に加えて、スペシャルゲストとして石井淳蔵先生、清水信年先生をお迎えしての鼎談を実施しました。鼎談は、小林先生のご講演内容を振り返りながら進行しました。「日本マーケティング学会」が設立された経緯に触れる中で、設立に際して、小林先生や西川先生(現学会長)の多大なるご尽力があったことを、当時の裏話としてご共有いただきました。
 2012年の設立から14年、学会員も三千人を超える「日本マーケティング学会」について、小林先生は「この学会の良さは、実務家と理論家(研究者)が一緒におり、どちらかに寄っていないこと」とその特徴を述べたうえで、「200年にぶりの大きな変化の中で、長い目だけではなく日々の変化、日々だけではなく長い目を大切にして、良いマーケティング実践していければ。まだ終わるわけではなく、新しい知の中に生きたい」というメッセージとともに、今回のサロンは幕を閉じました。
 
【サロンを終えて】
 小林先生は、流通研究、ブランド論、そして地域コミュニティを基盤としたマーケティング領域において、多くの重要な知見を提示され、我が国のマーケティング研究の発展に大きく寄与してこられました。理論と実務を架橋し、地域や企業と連携した研究を積み重ねられたその姿勢は、学界のみならず実務界からも高く評価されています。常に「現場」を大切にし、人や地域とのつながりに価値を見いだす先生の研究は、多くの学びと気づきを私たちに与えてくださいました。
 ご講演の中でご紹介いただいた数々のエピソードでは、マーケティング研究の先達である多くの先生方のお名前が挙げられており、当時を文献の中でしか追い掛けることができない世代にとっても、行間を埋め追憶をするような、貴重で大変有意義な時間となりました。
 マーケティング学会設立のキーパーソンであり、学会長として、学会の掲げる「探求と創発」を率先して実践され、本学会の現在の興隆を築き上げられたその手腕と実績は、まさに優れたマーケターとして広く私たちの模範とするところです。2025年度で大阪公立大学はご退官となりますが、今後も関西エリアの大学を拠点として、日本のマーケティング研究・教育の発展にご尽力いただけるとのことです。サロンメンバー有志一同、新たなステージでのご活躍を祈念しております。
 また、鼎談にご登壇いただいた石井先生、清水先生、対面およびオンラインにて本サロンにご参加いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
 
集合写真
集合写真(写真中央が小林氏)
 
(文責:瀨良 兼司)

 
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