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研究報告会レポート

第1回鉄道沿線マーケティング研究報告会レポート「鉄道沿線マーケティングの視点」

第1回 鉄道沿線マーケティング研究報告会 > 研究会の詳細はこちら
テーマ:「鉄道沿線マーケティングの視点」
日 程:2019年8月29日(木)17:00-19:00
場 所:ジェイアール東日本企画 10階 会議室
 
【報告会レポート】

1. 鉄道沿線マーケティングの視点 都市マーケットを“線”としてとらえる
産業能率大学 経営学部 教授 加藤 肇

 リーダーの加藤教授より本研究会発足の背景と主旨をご説明いただいた。
・女性の社会進出(就業率、共働き比率)と駅商業施設の発展との関係や、駅商業が機能的なベネフィットだけでなく気分転換や情緒的なベネフィットも提供している。
・駅は交通のハブとしてだけではなく、都市生活者の生活拠点となっている。
・定期券保有者の、定期券内行動・消費率が約7~8割を占めるなど、沿線の内部で行動をする傾向がある。
・ただし、沿線という「線」があるにも関わらず、まだ最寄り駅周りの駅単位「点」での利用にとどまっているのではないか。
・そこで、鉄道沿線マーケティングでは、都市マーケットを線状のマーケットの集合として捉え、沿線内の流動促進を通じてエリア活性化を図ると同時に、沿線生活者の生活価値向上(幸福)を目指す。
・鉄道沿線マーケティングの沿線地域にとっての価値は、人口減少の時代において、沿線上の流動を活発化して沿線地域のエリア活性を実現していくことである。
 

2. 途中下車の調査研究
(株)ジェイアール東日本企画 駅消費研究センター、お茶の水女子大学大学院 博士後期課程 松本 阿礼

松本より、途中下車の実態や、途中下車する人・しない人へのインタビューを紹介した。
・途中下車をする人は、しない人と比べて沿線愛着が高い。
・生活者にとっては、途中下車をすることで、①日々の生活満足度を高める、②自己決定感がある、③会社や家からの適度な距離感で過ごせる、といった価値がある。
・途中下車促進のアイデアとして、沿線での情報キュレーションや、平日の仕事帰りに求められるような情報キュレーションなどがあるのではないか。
 

3. ディスカッション 今後の鉄道沿線マーケティングについて
ファシリテーター:水師 裕(株)リサーチ・アンド・ディベロプメント マーケティングアドバイザー、筑波大学大学院 博士後期課程
登壇者:加藤 肇 産業能率大学 経営学部 教授
田村 高志(株)小田急エージェンシー コミュニケーションデザイン局 プランニング部長
高橋 伸治(株)ジェイアール西日本コミュニケーションズ コミュニケーション・プランニング部長

ディスカッションへの話題提供として、田村氏から「駅と沿線に関する研究活動について」、高橋氏から「移動者インサイト」をご紹介いただいた。
 
<田村氏「駅と沿線に関する研究活動について」>
・未来の駅と生活者に関して未来洞察からのアイデア抽出事例を紹介。
・駅が地域生活者にとって「リビング」のような共有スペースとなる「LDKステーション」
・沿線生活者がその時の気分で滞在する駅を選択できるように駅に個性を持たせる「キャラフル・アンサー・ステーション」
・今後の研究の展望として沿線上に家賃・駅(前含む)共有スペース利用料・交通費をすべてサブスクリプション化した鉄道会社ならではの2拠点居住サービスのアイデアを紹介。
 
<高橋氏「移動者インサイト」>
・移動中の生活者の行動と心理に関する研究から、特に移動者インサイトを紹介。
・移動中には、発散・自発性・自由といった快楽消費や、安楽欲求と刺激欲求などのインサイトがある。
・移動者インサイトと鉄道沿線マーケティングとの接続として、「移動空間としての沿線価値を考える。」「生活者一人一人の目線から沿線価値を考える。」といった視点が考えらえる。
・沿線の中での“2拠点性”の設計(移動の中に自分空間をつくる、移動の中に移行空間をつくる、移動空間を使い分ける)について。
 
 前半の講演および両名からの話題提供をうけて、ディスカッションを行った。
水師氏より、人口減少と都市部への集住化を背景として、マーケティングにおける、「沿線」という新しいセグメンテーション視点の可能性や、田村氏と高橋氏の取り組みが先の読めない時代における「不確実性への対応」として高く評価できるのではないか、といった点が指摘された。田村氏の未来洞察からのアプローチについて、手法としては注目されているものの、実践としてはあまり例が見られず、新規性があるとの意見も上がった。さらに、沿線2拠点居住サービスについて、すでに大阪-和歌山、京都-滋賀で行われている例がフロアから寄せられ、富裕層でなく中間層でも可能な、実現性のあるモデルだという意見も上がった。
 
 その後、質疑応答も活発に行われ、報告会終了後には名刺交換などのネットワーキングも盛り上がり、第1回目の報告会を終えた。
 

会場の様子 / 写真左から、水師氏、加藤先生
 
(文責:松本 阿礼)

 
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