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研究報告会レポート

第6回宇宙航空マーケティング研究報告会レポート「空飛ぶクルマのマーケティング」

#いまマーケティングができること

第6回宇宙航空マーケティング研究報告会(リアル・オンライン併用開催)>研究会の詳細はこちら
 
テーマ:空飛ぶクルマのマーケティング
日 程:2022年10月7日(金)15:00-17:00
場 所:立命館大学 大阪いばらきキャンパスおよびZoom使用によるオンライン開催
 
【プログラム】
15:00-15:05 冒頭挨拶
      本イベントの趣旨と概要紹介
      湊 宣明(立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科)
15:05-15:35 講演『空飛ぶクルマの市場規模・サービスモデルと社会受容性向上への取組』
      海野 浩三(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)
15:35-16:05 講演『空飛ぶクルマの事業ビジョン』
      保理江 裕己(ANAホールディングス株式会社 デジタル・デザイン・ラボ)
16:05-16:15 発表『立命館MOTプラクティカム-プロジェクト紹介』
      立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 大学院生チーム
16:15-16:45 Future Mobilityとしての可能性-ディスカッション&質疑応答
      保理江 裕己(ANAホールディングス株式会社)
      海野 浩三(デロイトトーマツコンサルティング合同会社)
      谷本 浩隆(デロイトトーマツコンサルティング合同会社)
      モデレーター:湊 宣明(立命館大学大学院 教授)
16:45- クロージング
 
【報告会レポート】
本イベントの趣旨と概要紹介
湊 宣明(立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科)

 湊氏は1984年に開催されたロサンゼルスオリンピックの開会式セレモニーにおけるジェットパックでヒトが空を飛ぶ映像を導入として紹介し、空飛ぶクルマがどの様な物なのか学びながらディスカッションできる機会としたいと述べ、本イベントの内容とスケジュールについて説明しました。
 空飛ぶクルマとは、空を飛ぶことに着目すれば飛行機の様な物。クルマに着目すれば地上を走行する物。どちらとも捉えられる言葉であり、あるいはそれらの融合なのか。空飛ぶクルマの定義から考えられる趣旨説明でした。
 
講演概要
講演①「空飛ぶクルマの市場規模・サービスモデルと社会受容性向上への取組」
海野 浩三(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)

 海野氏からは、デロイトトーマツで行なっている空飛ぶクルマ事業支援内容、空飛ぶクルマにおける近年の主要な海外プレイヤー・政策動向についてお話されました。また、全てのプログラクム終了後、空飛ぶクルマの移動を擬似体験するVRコンテンツの体験をさせて頂きました。
 
1. 自己紹介と組織紹介
 デロイトトーマツは、”Future of Mobility”イニシアチブの一環として、空飛ぶクルマの事業化に向けた支援を幅広く実施しています。大きく「戦略策定」、「事業推進」、「アライアンス」、「PoC・実証」、「研究活動」、「講演執筆」、「市場調査」、「政策立案」の8つの取り組みに分けられていました。また、空飛ぶクルマの社会実装に向けて「空の移動革命社会実装大阪RT」の立ち上げ段階から関与しており、今年度から大阪府と連携協定を締結し、事業を受託し支援を始めているようです。
 
2. 空飛ぶクルマにおける近年の主要な海外プレイヤー・政策動向
2-1. 海外主要プレイヤーの動向
 まず初めに、「機体開発の加速」、「サービス化に向けた検討の深化」、「周辺インフラの整備」といった3つの観点から海外主要プレイヤーの動向について説明を行いました。機体に関しては、世界中で様々なタイプの機体が構想・開発されています。主に最大定員数と航続距離といった2軸で分類され、さらに回転翼で飛行するタイプか固定翼(+回転翼)で飛行するタイプかで分類されます。米国を初めとする各国の企業で、認証取得に向けてテストフライト等を活用した開発を行なっているようです。さらに、主要機体開発メーカー(Joby Aviationなど)は、パートナー企業と連携を行い、サービス事業構築に向けた取り組みを行なっています。日本でも、全日本空輸株式会社はアメリカのJoby Aviation社とパートナーシップを発表し、Joby社の機体を使用予定で、日本航空株式会社はドイツのVolocopter社の機体を使用予定です。サービス事業構築では、離着陸場の検討や運行管理システム・サービスといった実証プログラムを活用した技術開発が実施されています。このように、諸外国においては、機体開発だけではなくサービス化に向けた検討及び周辺インフラの整備が進んでいると分かります。
 
2-2. 主要国における政策動向
 次に、「大規模な実証実験の実施」、「自治体連合による実装に向けた取組」といった2つの観点から主要国における政策動向について説明を行いました。NASAは2030年度中を目途に都市における商用運航を達成するため、段階的に空飛ぶクルマの技術成熟度を向上させる実証実験を実施しています。NASAは空飛ぶクルマのあるべき姿として、「安全かつ持続可能性があり、誰もが利用できる」、「ヒトやモノの移動に加え、インフラ点検や捜索救難にも活用することができる」、「航続距離は半径50マイル程度〜最大数百マイルを想定」の3つを掲げています。それを踏まえて、NASAは技術成熟度を6段階で定義しており、National CampaignではUML-4までの達成が目標とされています。その目標に向けて、NASAはNC-1NC-4(各デモンストレーション)をマイルストーン(プロジェクトを完遂するために重要な中間目標地点)に設定した、2030年までのスケジュールを公表しています。NC-1 (2022年〜2023年にかけてのデモンストレーション)は、「耐空性に係る標準策定に向けた検討の加速」、「フライト手順のガイドライン策定」、「CNSの評価」、「空域管理システムアーキテクチャの実証」、「各ステークホルダーのニーズの把握」といったことが検討事項になっており、含まれる要素は「機体と運行管理者間の相互コミュニケーション」、「目視範囲外での飛行オペレーション」、「機体及びその運行で生じ得る不測の事態に係るシミュレーション、「大規模な回避行動及びそれが生じた際の軌道の管理」、「ビル等の構造物が多数あり、乱気流が生じ得る場所でのアプローチ及び着陸」です。NC-1には、機体開発メーカーに加え、実証実験に必要なハード・ソフトインフラ提供メーカーなどサービス提供企業が参画しています。一方、欧州なども空飛ぶクルマ関連実証実験プログラムの補助金提供や地方行政・公的機関を中心に空飛ぶクルマサービス構築を目指す実証プロジェクトの実施をしています。このように、諸外国においては官民連携での実証実験のみならず、ConOpsによる運用ビジョン共有、自治体側の施策検討等、実施に向けた環境整備が進んでいると分かります。また、モルガンスタンレーの市場予測によると、2040年には200兆〜400兆の巨大な市場規模になり、様々なプレイヤーへの派生が見込まれるモビリティであると想定されています。
 
3. 社会受容性向上への取組
 続いて、社会受容性向上の取組について説明を行いました。デロイトトーマツは、2020年より継続的に、社会受容性ゲーム、動画・VR、WSなどを通じて社会受容性の向上に努めています。実際の取り組みとして、デロイトはDream Onと連携し開発した空飛ぶクルマの移動を擬似体験するVRコンテンツを活用しています。V Rのコンテンツ内容は、空飛ぶ車を地上から見上げる体験、遊覧・飛行といった飛行体験までの一連の流れをVRの活用により仮想体験できるようになっています。
 
講演②「空飛ぶクルマの事業ビジョン」
保理江 裕己(ANAホールディングス株式会社 デジタル・デザイン・ラボ)

 保理江氏からは、ANAホールディングス株式会社内でのeVTOL事業の立ち上がりから現在に至るまでの経緯から、eVTOLの今後目指していくビジョンについてのお話となりました。
 
1. 自己紹介と組織紹介
 ANAホールディングスの新規事業として、2016年にデジタルデザインラボという新しい部署が作られました。私は、その事業の立ち上げ時から在籍し、今はアモビリティプロジェクトのディレクターを務めています。
 デジタルデザインラボという部署自体は、ANAのイノベーションとは全く違う領域・サービスを創ろうということをミッションにして立ち上がりました。
 現在、男女比半々程で、若手を中心に20名程度在籍しており、商社部門や物流部門など様々な部門出身の人材によって構成されています。これまで6年程活動しており、新しいサービスとなっているプロジェクトもいくつかあります。例えば、アバター・宇宙プロジェクト・ドローンのデリバリーの事業化に向けたプロジェクトなどがあります。
 エアモビリティ事業に関しては、2017年頃から調査・検討を始めました。
 ANA自体は元々、1952年に日本ヘリコプター輸送株式会社という従業員16名・ヘリコプター2機から始まった会社です。今年ちょうど70周年となります。
 破壊的なイノベーションを外から起こされる前に内側から起こすという野心を持って、これまでアバター・宇宙・ドローン/エアモビリティに取り組んできました。アバターは、デジタルを利用した空間移動、宇宙は宇宙空間を利用した移動、ドローン/エアモビリティは低高度空間の移動として考えています。
 他にもANAグループとして、ANA NEOという会社を立ち上げ、バーチャル空間の移動やメタバースに関しても取り組んでいます。
 
2. 空飛ぶクルマとは?日本の動き
 空飛ぶクルマには明確な定義はないです。
 モビリティに「電動」・「自動」・「垂直離着陸」が合わさることで空の移動が可能となります。
 空飛ぶクルマは、明確に車ではなく航空機として定義されています。
 航空機に「電動化」・「垂直離着陸化」の技術が加わることが、今のパラダイムシフトのポイントとなっています。電池で飛べる→電池に動力源に変わる→電池で動かす動力源がモーターになる→モーターにプロペラをつけることで、プロペラを複数付けられるようになる→電動かつ垂直離着陸できる。このように変わることで、今までより大幅に静かになり、CO2を排出しなくなり、滑走路が不要となる。つまり、今までは、飛行機が出す音や滑走路が必要である関係上、空港は町のはずれに作られるのがこれまでの当たり前だったが、町の中に、空のターミナルを作れるようになり、離着陸する航空機がより安全に静かになるというパラダイムが起きると考えています。
 空の移動革命と言われる本質的な移動の価値は、航空機が都市部に入っていけるようになることです。こうした大きな将来性を考慮して、PwC社は2040年までの国内市場規模を2.5兆円と予測しています。
 地方・離島などにも使えるという意見もあるが、都市部でいかに実装するかがポイントとなっていると考えており、ANAとしては、最初から都市圏において旅客輸送サービスを実現したいと考えています。
 ヘリコプターと空飛ぶクルマは、航空機というジャンルは同じであるが、使われる場所が違います。ヘリコプターには高いホバリング精度をもち、飛行時間が長く、重い荷物を運べるという特徴があることから、ドクターヘリや山岳救助といったものに使われます。それに対して、電動化によって、高い安全性・低コストなどによって、ヘリコプターが町に入り人を輸送するというビジネスが立ち上がっていない中、eVTOLは新しい市場にフィットした最適な航空機だと期待されています。
 空飛ぶ車は2種類あり、ドローンに大型化したタイプと小型飛行機を電動化したタイプがあります。SkyDrive社は、ドローンを大型化したタイプの機体を開発しています。また、JAL社は、ドローンに大型化したタイプと小型飛行機を電動化したタイプを活用しようとしています。ANAはJoby Aviationの機体を使ってビジネス開発をしていきたいと考えています。
 
3. ANAHDが描く未来
 都市型航空交通”Uber Air Mobility”の実現を目指しています。
 Uberが作った過去の動画が我々の目指す世界観を描いています。
・出来るだけシンプルにチェックインを行う
・町の真ん中から離着陸を行う
・4人1組位で乗る
・下が渋滞であっても気にせず移動できる
など、これらを関西圏と首都圏のエリア内で実現し、富裕層向けではなく、手が届く範囲内の価格感でサービスを提供したいです。
 よく万博で飛ばすの?という質問を受けるが、万博で実証実験をするわけではなく、万博を契機に事業を始められないかと考えています。
 空を飛ぶことから、エンターテイメント的な移動にもなると思います。
 過去に実証実験を行っており、大阪の本町の高層ビルにヘリコプターを降ろして、高層ビルの屋上を活用できないかを検討しています。
 UAM実現に向けた主な課題として、機体・運航体制・離着陸場・ルールの4つが挙げられます。機体に関しては、Joby社が作っていますし、運航体制に関しては、ANAのこれまでの知見が活かされると考えていますが、離着陸場においては我々だけではなかなか実現できず、様々なステークホルダーの方々を考慮する必要があります。
 我々はJobyというeVTOLのパイオニア的な存在の会社と提携を発表しました。この会社には、その1年前にTOYOTA社が500億円程出資しています。そうした中で、日本の中で事業が出来ないのかの検討を行っています。
 
4. 今後の課題
 大きな課題として、離発着陸場をどうするかが挙げられます。アメリカでは、離発着陸場の候補として駐車場やショッピングの上などが考えられているが、日本の都市の中に、このような大きなものを作っていけるかが今後の課題です。また、住民の方々の需要を頂けるかどうかも考える必要があります。他にも、需要が本当にあるかどうかの需要予測も大事になってくると考えています。
 
発表「立命館MOTプラクティカム-プロジェクト紹介」
立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 大学院生チーム
メンバー:佐藤 太星、細川 耕司、結城 圭悟、ケイウヨウ、キョクトウヨウ

 立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科大学院生チームは、「立命館MOTプラクティカム」、「プロジェクトテーマと目的」、「プロジェクトの作業内容」、「現在のプロジェクトにおける検討状況」の以上4つのテーマについて発表を行いました。
 立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科(MOT)は2005年に設立され、技術経営学やイノベーションを学ぶための文理融合研究大学院です。本研究科では、課題解決型長期企業実習『MOTプラクティカム』というプログラムがあります。このプログラムでは、企業様よりいただいた課題を、チーム協働プロジェクトとして約6カ月間にわたり実行し、最後には企業様に成果報告までを行います。
 今回、ANAホールディングス様の協力の元、『関西圏におけるeVTOL(Joby Aviation)を使用した次世代型交通システムの構築』について課題を頂きました。その中でも、具体的な提言内容は、「旅客需要動向調査」、「経済波及効果予測」、「新規離着陸場の候補地の検討」、「社会受容性」の4つです。これを基に大学院生チームはまず、プロジェクトの作業内容を可視化するために、WBS(Work Breakdown Structure)の作成を行いました。それから新規離着陸場に必要な技術的条件や周辺地域の経済波及効果や交通の便などを考量し、現段階での検討は、立命館大学衣笠キャンパスに離着陸場を設置することを検討しています。実際に立命館大学副総長徳田昭雄様にも相談を行なっており、前向きにご検討くださっております。
 
ディスカッション
 はじめに谷本氏の自己紹介を行い、参加者から登壇者に対して質疑応答が行われた後、「Future Mobilityとしての可能性」と題してパネルディスカッションが行われました。
 
自己紹介
谷本 浩隆(デロイトトーマツコンサルティング合同会社)
 谷本氏は航空宇宙防衛セクターの責任者であり、以前は航空機や宇宙事業に関するコンサルティングを行なっていた。空飛ぶクルマについては2017年に経済産業省の調査研究を受託したことから、現在は空飛ぶクルマに関わる民間企業の支援、国、自治体の実証実験のサポートを行なっている。
 
Q&Aの概要
Q.空飛ぶクルマが社会実装される際エネルギーが課題になると思うが、解決はいつ頃になるか?
A.(海野氏)エネルギーが大量に必要になるのは間違いないと考えています。空飛ぶクルマのコンセプトとして従来の化石燃料ではなく再生可能エネルギーが使用されることが想定されていますが、エネルギー問題は空飛ぶクルマに限ったことではなく、2040年までに世界が足並みを揃えてカーボンニュートラルな世界を目指していたが、昨今の情勢などを踏まえると難しいと思います。個人の意見としては日本のような狭い国で再生可能エネルギーで全てを賄うことは難しいと考えていて、そのため一定期間、原子力発電による供給が必要になると考えます。既存の原子力のみではなく、新設する必要もあるかもしれません。自動車を始め、電動化が進む中で当面の間は洋上風力などで全てを賄うことは現実的に厳しく、2040年までは安全性以外の面で優れている原子力発電と併用することが必要になるのではないかと考えています。その後は原子力に変わる発電やバッテリーの効率化によって変わってくるのでは無いでしょうか。
 
Q.空飛ぶクルマが普及し、1日何台も急速充電を行う様になれば電力不足になり、社会受容の面でも厳しいと思うが、その辺りの解決策はどの様に考えているか?
A.(保理江氏)現在は空飛ぶクルマを飛ばすこと、事業を立ち上げることにフォーカスしていて、会社としても事業のスケール化を考えれば電気の問題は必ず直面すると考えています。ただし、この問題は航空だけの問題ではなく、マクロ的に見れば社会全体が電気化しており、街の中に電気設備が必要となるグランドデザインがある中の一つがeVTOL(空飛ぶクルマ)であると考えています。また家庭用の電気自動車が夜間に充電ができることに対し、eVTOLは昼間の充電が想定されている為、昼間のピーク電力が増加することが課題だと考えています。一方で近頃は、蓄電池など電力を貯める技術の進歩もあり、これらと併せて考えていく必要があるでしょう。
A.(湊氏)これまでのモビリティは内燃機関であったため物質的には安定的にエネルギー供給がされてきました。しかし電気になれば、モビリティ以外にも使用されるため、都市の中でどの様に安定供給をしていくのかが持続可能性の中での一つの課題であると思います。
 
Q.「空飛ぶクルマ」のネーミングについて、社会受容性に関しても誤解が生まれると思うが適切であると思うか?
A.(谷本氏)クルマとついている為、自動車が空を飛ぶと勘違いされることは非常に多いです。ネーミングについては経産省の担当の方が、自動車並みに身近な空の移動手段を提供するような新しいモビリティーのイメージをつけたいということで、あえてカタカナの「クルマ」という言葉を使ったと聞いています。
A.(海野氏)日本で有名なSkyDriveも初めは公道を走れ、トランスフォームすることで空を飛べる物を考えていましたが、地上を走るためにはぶつかった際の安全性が必要になり、車体の重量が増し、空を飛ぶことが難しくなります。また、「クルマ」には自動車のように気軽に乗れる様にといった思いもあります。
A.(保理江氏)この名前には功罪があり、夢のある名前で注目を集めやすいといったメリットと、皆がイメージするものがバラバラとなりやすいデメリットがあります。そのため最近は「空飛ぶクルマ」という言葉をあまり使わず、航空機であることをアピールする様にしています。是非新しいバズワードを考えていただきたいです。
A.(湊氏)なんと呼べばいいかわからないあたりが、まさに未来の乗り物ですね。これまでに存在しておらず、定義しずらい物を何とか形にして実現するために、このような研究会が行われる意味でもあります。
 
ディスカッション
 テクノロジー・マネジメントの観点で革新的なものがどの様に市場に普及していくか、ロジャーズのイノベーションの普及理論(相対優位性、互換性、複雑性、試用性、可視性)に基づいてディスカッションが行われました。
 
Q.(湊氏)相対的優位性について、既存のモビリティと比較して空飛ぶクルマはどの点について相対的優位性があるか?
A.(海野氏)発表でMOTの学生が言っていたように、移動の時間が短くなる事、移動の最中に上空から景観を楽しめる事に優位性があると思います。
 
Q.(湊氏)既存のモビリティから乗り換える際の互換性はどのように優位であるか?
A.(保理江氏)互換性が優位になるよう現在努力しています。乗り換えがし易い、利便性が高い、マルチモーダルな場所に離着陸場を置けると良いと考えていて、例えば、空港に到着した後、「バスに乗ろうか、電車に乗ろうか、モノレールに乗ろうか、いや!eVTOLだろう」となった時に、すぐにアクセスできる場所に離着陸場を作れるかが難しい課題になります。
A.(海野氏)いつものアプリにeVTOLが増えていて、空港に着いて、値段と時間のバランスで「今回はeVTOLに乗ろう」と自然と選択できるようになっていた、いうように、使っている人からすれば、移動方法を探す手段は変わらないが、ピックアップされる選択肢が変われば互換性が出せるのではないかと思います。
 
Q.(湊氏)複雑性の観点では、現在空飛ぶモビリティとしてヘリコプターがあるが、それと比較してeVTOLがより理解し易い、シンプルなものになっているのか?
A.(保理江氏)お客様にとってシンプルになっていると思います。代表的なものはヘリコプターであるとイヤーカフスという耳栓のようなものが必要ないということが、受け入れられ易いポイントではないかと思います。
A.(谷本氏)ユーザ設計で言えば、予約についてアプリから行うなど、簡単にするような努力をサービサーの方が考えて行くことになると思います。現在で言えばタクシーをアプリで呼ぶ、米国であればUberをアプリで呼ぶなど、既存の方式と似た形でeVTOLを呼ぶことができるようにな、ユーザにとって受け入れ易いサービスを作っていかなければならないと思っています。
 
Q.(湊氏)試用性、可視性についてはVR映像などはありますが、現在日本でeVTOLにすでに乗った方はいますか?
A.(保理江氏)まだ、お客さんを乗せて良いと認証を受けた機体は世界中にないので、ないです。唯一、中国のEHangの機体だけはデモンストレーション的に人を乗せた映像が出回っているが、日本やその他の国では試しに使ってみることが出来ないので、海野さんが見せてくださったようなVR映像が必要になってくると思います。
A.(海野氏)乗った人はもちろんですが、外から見たこともない人が大勢いる中での議論なので、その部分も課題であると思います。騒音についても、ヘリコプターとは違う音ですと伝えたり、何dBと伝えても中々伝わらないので、実際の音をVRに使用してはいますが、まずは人を乗せずにデモフライトなどを増やして行くことが必要になると思います。商用でなく個人利用であれば比較的許可は取れるとのことなのでもう少し行って行く必要があると思います。
A.(谷本氏)保理江さんが仰ったように、実際に人を乗せて商用運行できる機体がまだ無い中では、一部の機能を切り出して体験して頂くような努力が必要で、VRであったり、低高度でのヘリコプターの体験など、eVTOLとは異なるけども、切り取った機能を体験して頂く機会を増やしていくことで、社会受容性が高まっていくと思います。
 
Q.(参加者)安全性についての宣伝はどのように行っているか?
A.(保理江氏)航空機の安全は過去の事故が反映された型式認証作業を経た上で安全だと認証されます。さらに、運行するために運送事業免許が必要になり、ダブルの安全を担保した上で、初めてお客様を初めて乗せられるようになります。また、航空の100年の歴史が積み上げてきたノウハウが証明のプロセスとなっており、このプロセスを達成すること自体が非常に難しく、チャレンジなことである。そのため安全んではあるが、それをどうアピールするかが難しく、安全であり、安心であることを継続して発信することが必要であると考えております。
 
Q.(参加者)今後空飛ぶクルマを個人所有することはできるのか?
A.(保理江氏)現在でも、ヘリコプタや個人セスナなど所有している方がいらっしゃるので、考え方はそれと同じだと思います。
A.(海野氏)EHangの機体が日本にも一台あるが、それは個人所有ですが、個人所有であるからといって、いつでも自由に飛ばせるかは別です。

 
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