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研究報告会レポート

第6回サービス・マーケティング研究報告会レポート「日本におけるウェルビーイング:相互協調性からの検討」

#いまマーケティングができること

第6回サービス・マーケティング研究研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:日本におけるウェルビーイング:相互協調性からの検討
日 程:2022年12月16日(金)19:00-21:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
講演者:内田 由紀子 氏(京都大学 人と社会の未来研究院 教授)
ファシリテーター:山岡 隆志 氏(名城大学 経営学部 教授)
 
【報告会レポート】
 2022年12月16日 第6回サービスマーケティング研究会を開催した。
 
 この研究会では、2022年度から「ウェルビーイングとマーケティング」をテーマとしています。人と社会の広い意味での幸福に関しては、経済学や心理学をはじめさまざまな研究分野で議論されていますが、本研究会では、主としてヘルスケア、ツーリズム、金融、小売、生活関連サービスなどを扱うサービスマーケティング研究の観点から、事例研究と理論的・実証的研究を進めていきます。
 
 今回は、ウェルビーイング研究において豊富な研究業績をもたれている内田 由紀子先生にゲストスピーカーとしてご講演いただきました。心理学分野におけるウェルビーイング研究の過去・現在・未来、日本と海外の比較、日本におけるウェルビーイング研究の現状についてご講演いただき、研究会メンバーおよび参加者の皆様と議論を行いました。
 
 まずは、ウェルビーイングの基本的な概念について紹介され、必要性と注意点などが説明されました。幸福感は、その時々の感情に依拠するヘドニアと人生における意義や価値に依拠するユーダイモニアの2つに大別されることが分かりました。人体の生理的な炎症反応を計測できる「Conserved Transcriptional Response to. Adversity: CTRA」の値は、ヘドニアでは上昇と関連し、ユーダイモニアでは低下と関連することが実証的に示されています(Fredrickson et al., 2014)。このことからも、同じ幸福感であってもこの2つは別物として扱う必要性を理解することができました。
 
 文化と幸福というテーマでは、北米を中心とした研究が紹介され、「幸福な人物とは、若く健康で、よい教育をうけており、収入が良く、外向的・楽観的で、自尊心が高く、働く意欲がある者(Myers & Diener, 1995)」という獲得的幸福感が基本になっています。この尺度で測ると、日本と韓国は他の国に比べて、人生満足度の得点が低めに出現します。そこで、日本の文化にあった協調的幸福感尺度の開発されました(Hitokoto & Uchida, 2015)。この協調的幸福尺度を使って各国で調査すると、平均的にほぼ同じ結果となっています。これにより、欧米で開発されてきた尺度を日本人に適用する場合の注意点などについて把握することに役立ちました。
 
 次に、個人から場のウェルビーイングついて説明が行われました。物質型消費から経験消費に移り変わることで、経験の中から人生の意義を見つけ出し、ウェルビーイングにつながる連鎖があります。文化芸術鑑賞は、人生の生きがいにつながるものであり、ユーダイモニアのウェルビーイングへの向上に関係するが、共創などでよりつながりが深くなるとより幸福度が増すことが述べられました。これは、価値共創的な活動とユーダイモニアのウェルビーイングの関係を示すものなので、マーケティング研究への応用がしやすい考え方と感じました。
 
(文責:山岡 隆志)

 
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