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研究報告会レポート

第10回ユーザー・コミュニティとオープン・メディア研究報告会レポート「ファンコミュニティのマーケティング、大いなる誤解 ― できること、できないこと ―」

第10回ユーザー・コミュニティとオープン・メディア研究報告会(東京) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:ファンコミュニティのマーケティング、大いなる誤解 ― できること、できないこと ―
日 程:2024年2月21日(水)19:00-20:30
場 所:東洋大学 白山キャンパス
報告者:池田 紀行(株式会社トライバルメディアハウス 代表取締役社長)
 
【報告会レポート】
講演の様子 ファンコミュニティ(ブランドコミュニティ)は、ファンマーケティングの延長線上でたびたび検討される。ファンコミュニティはインターネットの普及による2000年代初頭のオンライン・ブランドコミュニティのブーム、2010年代の第二次ブランドコミュニティブームでも注目を集めたが、その実践の多くが持続せず、閉鎖に至るものも少なくない。本報告では、多くの企業(トヨタ自動車、Microsoft、コカコーラ社ほか)でファンコミュニティの運営に関してコンサルティングする立場から、ファンマーケティングの原理原則を再確認する講演をしていただいた。
 池田氏が主張する「売上の地図_v3」では売上高(トライアル⇒リピート)を目的変数に、マーケティング施策を説明変数とする全体像を描き、「コンテンツはバズったが売り上げにつながらない」「SNS公式アカウントをつくったが、売り上げにつながらない」「インフルエンサーマーケティングを実施しても拡散しない」「ファンマーケティングを実施してもLTV(顧客生涯価値)が上がらない」など現場の悩みがある、そもそもファンコミュニティづくりとファンマーケティングの目的と手段を取り違えており、本来は手段であるはずのファンコミュニティの運営が目的化してしまっている。例えれば、医療現場で診断と処方を取り違える医療ミスと同じである。マーケティング現場でも正しい診断で正しい処方を組み合わせなければならない。
 
誤解1:最寄品分野はコミュニティの効果が低く相性が悪い
誤解2:企業はファンではなく、ファンの財布しか見ていない
誤解3:ファンの価値を過小評価している
誤解4:コミュニティ運営を費用と捉えて売上との関係をみてしまう
     投資ではなく単年度の費用として捉えて成果を急ぐ
誤解5:社長自身がそもそも自社商品のファンではない
誤解6:コミュニティ内でファンが活発に交流するものと考えている
     ファンコミュニティは自走するものではない
誤解7:ファンにはいろいろなニーズがあることを理解していない
     自社のことを1日中考えているわけではない
誤解8:ファンの声はそもそも最初からSNS(外)に出ていることを知らない
 
 以上、ファンコミュニティに抱きがちな幻想、ファンコミュニティを立ち上げれば、顧客は熱心にコミュニケーションを交わしてくれ、自社のことを考えてくれている、などの思い込みを払拭しなければならない。現実には、コアなアクティブな顧客会員は固定化して排他的な文化を形成し始め、支配するようになる。そうすると新規のファン顧客を排除するようになってしまう。ファン顧客を画一的に捉えず、期待しすぎてはいけない。Takeばかり考えずGiveを継続する必要がある。そしてコミュニティが売り上げにつながる効果も単年度の費用対収益では検証できない。投資対効果で捉える必要がある。手段を目的化せず、KGI(Key Goal Indicator:業績評価指標)を明確にしなければならない。
講演の様子 以上の池田氏の講演からファンマーケティングやファンコミュニティの取り組みは万能薬ではないこと、ファン顧客は自発的にコミュニケーションをとるわけではないというコミュニティの本質を伺うことができた。会場では、ブランドマーケティングやNFTコミュニティを研究する参加者との質疑応答があり、また本研究会で成功事例として紹介したヤッホーブルーイングのファンコミュニティ(マーケティングカンファレンス2023)のように、ファン顧客が自走し、応援してくれるコミュニティには適切なサイズがあるのではないかと感じた。この問題に悩む企業やファンコミュニティの研究者にとって大変示唆の多い話となった。
 2023年度の研究会もご参加いただき、ありがとうございました。2024年度も引き続き、コンテンツとコミュニティの関係を深堀りする研究報告会を企画してまいりますので、どうぞよろしくお願いします。
 
(文責:片野 浩一)

 
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