第15回エフェクチュエーション研究報告会レポート「『エフェクチュアル・シフト〜不確実性に企業家的機会を見いだすマーケティングの探求』の読み方」 |
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テーマ:「エフェクチュアル・シフト〜不確実性に企業家的機会を見いだすマーケティングの探求」の読み方
日 程:2024年8月27日(火)19:00-20:30
場 所:Zoomによるオンライン開催
プログラム
第一部 コメント:実務家が読む『エフェクチュアル・シフト』
鈴木 隆(ゲスト / 神戸親和大学 非常勤講師 / 元大阪ガスエネルギー・文化研究所 主席研究員 / ホームプロ創業者)
第二部 対談:著者とともに書籍『エフェクチュアル・シフト』を「探求」する
鈴木 隆(同上)
栗木 契(リサプロメンバー / 神戸大学大学院 経営学研究科 教授)
吉田 満梨(リサプロメンバー / 神戸大学大学院 経営学研究科 准教授)
宮井 弘之(モデレーター / リサプロメンバー / 博報堂 JVstudio局 局長)
質疑応答:
鈴木 隆、吉田 満梨、栗木 契、宮井 弘之(モデレーター)
【報告会レポート】
エフェクチュエーション研究報告会の第15回は、リサプロメンバーの一人である栗木契による新著『エフェクチュアル・シフト〜不確実性に企業家的機会を見いだすマーケティングの探求』を取りあげました。実務家として起業経験豊富な鈴木隆氏をゲスト迎え、実務家として本書をどのように読んだかについて、コメントをもらい、そのコメントに栗木が応じる形で第一部がスタートしました。その後、メンバーの吉田満梨から質問を投げかけ、パネリスト同士での対談へと進みました。
まず、ゲストの鈴木氏からは、自身の実務経験や著書の内容を踏まえ、エフェクチュアル・シフトの内容への共感の表明、そしてそのうえで、(1)伝統的なSTPマーケティングとの関係についてはエフェクチュエーションが主であって、エフェクチュエーションは補完という位置付けを超えた存在なのではないか (2)エフェクチュエーションの5つの原則に加わるものとしての起業家に見られる粘り強い行動は、「すっぽんの原則」と名付けてはどうか (3)起業家の行動をエフェクチュエーションにシフトする一方で、顧客観や人間観も限定合理性を多分に取り入れたものにシフトするべきではないか という3点のコメントがありました。これに対して栗木は、これまでに提唱されてきた各種の直感型のマーケティング論に対するエフェクチュエーション革新性は、STPマーケティングなどの戦略計画学派に対して「補完」の必要性を示した点にあるのではないかと応じました。
第二部では、吉田から、(1)マーケティングリサーチとエフェクチュエーションの関係性を論じている点が本書のユニークな点であることが指摘され、その背後にある考え方やそのような研究に至った経緯について議論がなされました。また(2)不確実性に「状態・効果・反応」の3つの視点があり、そのような不確実性といわゆる「すっぽん」的な行動についての関係性への質問がありました。メンバー間では粘ることの是非、撤退とのバランスやエフェクチュエーションがそもそもプロトコル分析からスタートしている点の限界とその裏腹にある拡張可能性に関して活発な議論がありました。
最後に、リサプロメンバーでもある松田温郎から来る10月13日マーケティング学会カンファレンス2024のリサプロ・セッション・エフェクチュエーション研究会の案内をしてもらい、閉会となりました。
今回の研究会は、多くの話題が飛び交うなかで、エフェクチュエーションの持つさらなる可能性や新たな研究アジェンダの提示が飛び交うなど非常に有意義で活発なものとなりました。