リサーチプロジェクト
研究報告会レポート

第4回価値共創型マーケティング研究
報告会レポート
「サービス・ドミナント・ロジック研究の最新動向と今後の課題」

第4回価値共創型マーケティング研究報告会
テーマ:「サービス・ドミナント・ロジック研究の最新動向と今後の課題」
日 程:2014年3月22日(土)13:00-16:00
場 所:明治大学駿河台キャンパス

 

【報告会レポート】
第4回の研究会は、海外におけるサービス・ドミナント・ロジック(S-Dロジック)の研究動向や、サービス・デザインのアプローチに触れながら、価値共創という視点の意義がマーケティング研究においてどのように位置づけられるのかについて議論を展開しました。S-Dロジック研究の深堀りと銘打った最終回にふさわしく、参加者の皆様と大変活発なディスカッションを展開することができました。
 
報告者と内容は以下の通りです。

 
井上崇通氏(明治大学)
「S-Dロジックに導入された新たな視点 -サービス科学、システム論を中心として-」
 S-Dロジックはサービス科学やサービス・システム論研究と親和性が高く、交換や主体間の関係の捉え方にも転換がみられます。また、S-Dロジックは従来の企業や顧客の捉え方に大きな変更を求めており、両者の関係を分析するうえで、そのフレームワークの根本的な見直しを迫っているとも考えられます。報告を通じて、S-Dロジック研究が示唆する新たな視点についてご紹介いただきました。
 
庄司真人氏(高千穂大学)
「S-Dロジック研究の動向」
 S-Dロジック研究がマーケティング研究やサービス研究に影響を与えていることは、言うまでもありません。欧米の学会報告や発表される論文を見ると、S-Dロジックの知見を前提にした研究や、その影響を受けた議論が多い傾向にあります。これは、S-Dロジックがマーケティング実務に直接的な示唆を与えていないものの、研究の基盤として有効な議論だということです。あるいは、理論的基盤になるための空白となる研究領域も残されており、これら研究の蓄積によって、S-Dロジックの解釈の妥当性が評価されると考えられます。報告を通じて、S-Dロジック研究の動向を詳細にご紹介いただきました。
 
田口尚史氏(茨城キリスト教大学)
「リレーションシップ・マーケティングの新展開」
 S-Dロジックの登場以降捉え直しの進む企業・顧客間の関係ですが、従来のリレーションシップ・マーケティングとはどのような違いがあるのかという視点から報告いただきました。それによると、S-Dロジックは製品やサービスのパーソナルな使用経験を通じた価値への注目を求めており、そこでの双方向コミュニケーションの検討が重要であるという示唆があります。田口氏は理論的特徴に加え、経営実務に与える含意とは何かについて幾つかの事例とともに議論を展開いただきました。
 
吉橋昭夫氏(多摩美術大学)
「サービス・デザインのアプローチ -カスタマー・エクスペリエンスの記述とデザイン-」
 サービス・デザインの領域においても、S-Dロジックは大きな影響を与えています。これは、サービスを設計するうえで、顧客の経験をどのように反映させるかが重要であり、サービスの仕組みや顧客とのタッチポイントの具体的なかたちを明らかにする必要があるからです。吉橋氏は、研究実践を踏まえながら、どれくらいS-Dロジックの示唆に忠実なサービス・デザインが可能かどうかという議論を展開していただきました。
 
村松潤一氏(広島大学)
「価値共創とマーケティング研究」
 村松氏は伝統的なマーケティング研究を再考することで、価値共創につながる概念を導きだし、さらにS-Dロジック及びSロジックを踏まえながらも、独自の価値共創概念を提示し、新しいマーケティング研究領域と研究課題を明らかにしました。また、企業は共創によって生じた文脈価値から報酬を得るべきであり、現実の企業は「機会収益の逸失」を、また、顧客は「機会損失の転嫁」を余儀なくされていることを指摘しました。何れにせよ、こうした議論から示されるのは、顧客の消費プロセスでおこなうマーケティングであり、また、共創プロセスの解明などにより一層の分析が求められるのではないかと考えられます。こうした議論を展開していただきました。
 
ディスカッション
パネラー
  吉橋昭夫氏(多摩美術大学)
  田口尚史氏(茨城キリスト教大学)
  藤岡芳郎氏(大阪産業大学)
  大藪亮氏(岡山理科大学)
コーディネーター:村松潤一氏(広島大学)
司会:今村一真氏(茨城大学)
 
研究発表後、研究会参加者の質問を中心にディスカッションが展開されました。用語や概念の解釈を巡って多数の質問があったほか、こうした分析枠組みの妥当性をめぐる議論にも発展があり、活発な意見交換が実現しました。
 
次回の研究会は5月(日時は未定)大阪にて開催予定です。会員の皆様のご参加をお待ちしております。
 
(文責:今村)
 

研究会の様子 研究会の様子
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研究会の様子

 
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