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研究報告会レポート

第15回アジア・マーケティング研究報告会レポート「ワインブランディング」

第15回アジア・マーケティング研究報告会(東京) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:ワインブランディング
日 程:2025年3月11日(火)18:30-20:30
場 所:一橋大学 千代田キャンパス 大講義室
報 告:Exploring Wine: A Primer on Wine History, Culture, Tasting, and Research
ゲストスピーカー:Marco W.W. Nutta, Ph.D.(Assistant Professor of HIAS, Hitotsubashi University)
 
【報告会レポート】
 ワインの産地としても有名なフロリダご出身のMarco先生より、近年ワインツーリズムとしても注目が高まっている、ワインのご研究についてお話しを伺いました。日本において、日本酒やウイスキーの海外人気は高まっているものの、ワインのブランディングは未だ発展途上です。日本における将来のワインツーリズムの可能性についても、活発な議論が行われました。
 
【概要】
講演の様子 はじめに、ワインの価値をつくる要素について伺いました。ワインはジョージアが発祥と言われており、ワインの価値を決める最も重要な要素のひとつに、良質なブドウが挙げられます。ワインに適したブドウの種類として、代表的なものにVitis vinifera(ヴィティス・ヴィニフェラ)と呼ばれる種類があるそうです。シャルドネやメルローなどのブドウが、ヴィティス・ヴィニフェラ種に属します。フランス、イタリア、スペイン、アメリカ、チリなどは、良質なブドウを育てるのに適した気候ということもあり、主要なワイン生産地となっています。日本も良質なブドウを育てるのに適した気候ゾーンに含まれるとのことで、最近では、山梨県、長野県、北海道などがワインの生産に力を入れているといいます。日本のワイン産地で特徴的なのは、ヴィティス・ヴィニフェラ種に属さないブドウを使用したワインの生産に力を入れていることだそうです。これは非常にユニークなポイントであり、日本ワインの特徴とも言えそうです。
 ワインの価値を決める良質なブドウは、その味はもちろんのこと、どこの場所でブドウが作られたのかが重要になります。ブドウの生育環境を取り巻く自然環境を証明するためにも、どこの場所でブドウが作られたのかを示す要素である、Terroir(テロワール)が、ワインの価値を左右するようです。
 
講演の様子 続いて、昨今のワイン需要のトレンドについて伺いました。コロナ以降、人々は良質なワインを求めるようになったといいます。日本の市場も例外ではないそうですが、需要の大半は海外からの輸入ワインで占められており、日本産のワインの国内での消費量は、総消費量のうちの30%程度だということです。ワインのトレンドに関連して、2つの研究成果をご紹介いただきました。一つ目は、Journal of Wine Researchに2025年に掲載された、Expert wine reviews: Exploring trends in wine quality indicatorsというタイトルの研究成果についてです。一般のワイン消費者は、ワインを選択するにあたって、エキスパートの評価を一つの指標とするため、エキスパートのデータとワインの消費傾向について分析されました。分析にあたって、ワイン誌の年間トップ100のワインレビューデータ3,400件を用い、高品質なワインを分析するための変数を明らかにしていったということでした。二つ目は、under reviewの最中にある研究成果で、消費者のワインへの認知(perception of coolness)が購買意図に働きかける重要な変数になるのではないかという仮説を明らかにする研究でした。ラベルへのセレブリティーの表示が、coolnessに統計的に優位な正の影響があり、coolnessが購買意図に正の影響をもたらすことがわかったということです。
 研究成果を教えていただいたのち、最後に、ワインのテイスティングの5つのステップについても教えていただきました。5つのステップとは、1)Appearance(目でワインの色を確認する)、2)Aroma(グラスに鼻を近づけて香りを確認する)、3)Taste(ワインを口に含んで味を確かめる)、4)Mouthfeel(口の中のワインの感触を確かめる)、5)Aftertaste(ワインを飲んだ後の感触を確かめる)だということでした。
 
【報告後のフロアディスカッション】
 日本でワインツーリズムを盛り上げていくために、どのような取り組みが必要なのかについて、さまざまな観点から議論が行われました。まず、食と一緒にペアリングをして盛り上げていくという観点についてです。サーモンの産地であるオレゴンで白ワインの消費が盛んなことなどが事例として挙げられ、食とワインのペアリングの重要性についても意見が交わされました。続いて、地域コミュニティーの観点からも、ワインツーリズムを盛り上げられるのではないかという意見もありました。ヨーロッパやアメリカにおいて、ワイナリーツアーが組まれているように、ワイナリーとその周辺地域が一体となって、観光目的地のようになれば、そこにバスを乗り入れるようなツアーが組まれるようになる可能性も生まれます。
 また、アルコールを飲まなくなっているGeneration Zへのワインのアプローチ方法についても意見交換がありました。昨今では、アルコールを含まないカクテルである、通称モクテルの認知が高まりつつあることなどから、アルコールを含まないワインの可能性についても議論されました。
 
【サロンを終えて】
 日本酒や日本のウイスキーの中には、日本市場はもちろんのこと、海外市場において高いブランド価値を持つ銘柄が多数あります。日本産ワインのブランド力を高めることで、ワインにおいても新しい市場規模を生み出せるかもしれません。マーケティングの可能性を感じた研究会でした。
 
(文責:松井 彩子)

 
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