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第17回アジア・マーケティング研究報告会レポート「食と農のDX・マーケティングの課題」 |
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テーマ:食と農のDX・マーケティングの課題
報 告:折笠 俊輔 氏(公益財団法人流通経済研究所 常務理事 / 主席研究員)
日 程:2026年3月2日(月)18:30-20:00
場 所:一橋大学千代田キャンパス 大講義室
【報告会レポート】
農業センサスによれば、農家の数は20年間で6割減っていますが、田んぼの面積は2割しか減っていない実態があります。これは、1経営体あたりの経営面積が20年で3.7倍になっていることを意味しています。米の農業の構造変化には、家族経営の個人農家は高齢化が進んでいる一方、法人的農家が面積を増やして規模拡大することで、米の生産を支えている状況があります。これらの状況を可能にするために、「米のスマート農業」がキーワードとなります。本日の研究会では、農業の構造変化とDXの関係について、折笠氏よりご講演いただきました。
【概要】
経営体の単位あたりの米の経営面積を増やすためには、管理を楽にするツールを導入し、「米のスマート農業」を実現する必要があります。管理を楽にするツールは、見えなかったものを測定可能にするためのツール、現場作業員の工数削減のためのツール、作業を平準化するためのツールなど多岐に渡ります。しかしながら、デジタルツールを導入することで終わってしまい、ツール導入に伴う経営課題(e.g. 人材の再配置の問題)への対応まではできていないケースも多くあるようです。農業における経営のDX化が進まない一番のネックは、デジタルツールの導入コストと対応可能人材の不足にあるようです。
続いて、なぜ農業ビジネスは儲からないと言われているのか、食を扱う産業の特徴について伺いました。「豊作貧乏」という言葉が象徴するように、生産者サイドに価格決定権がなく、豊作になるほど単価が下がり、高単価な時ほど収穫量が少ない実態があります。価格決定の実態として、米は概算金ベースで決まり、青果物は卸売市場で価格が決まります。(参考までに、肉と魚は卸売市場で価格が決まったり、牛乳は政府の乳価で価格が決まったりするなど、食に関するビジネスは、生産者サイドに価格決定権がない傾向があります。)したがって、農業経営の収益向上のためには、「生産量増加」・「生産性向上」・「単価向上」が重要な要素となるようです。収益向上のための技術はいくつも開発されつつある一方で、食を扱う農業としての倫理観が試されたり、技術によって作られた食品が市場に許容されるかが問われたりもしています。
最後に、需給バランスからの脱却のために、ブランドの果たす役割について、「品種」・「地域」・「品質」の3要素に分けてお話しいただきました。3要素のどれかが強くブランディングの要素となるパターンから、3要素を掛け合わせてブランディングしていくパターンまで、事例を取り上げながら幅広くご紹介いただきました。
【報告後のフロアディスカッション】
食産業が儲かるビジネスになるための生産者側のDX化の必要性から、協同組合が今後果たすべき役割、海外を視野に入れた政府としての取り組みの必要性など、多面的な視点からの活発な議論が行われました。具体的には、地域規模によるブランド戦略の違いに関する質問や、農業におけるカーボンクレジットを使用した副収入の可能性に関する質問など、農業の未来について幅広い議論が行われました。
【研究報告会を終えて】
農業経営におけるDX化の事例を多岐にわたってご紹介いただき、スマート農業の実態の理解が深まりました。折笠氏とフロアの活発な議論を通して、持続可能な日本の食の未来について考える研究会となりました。
(文責:松井 彩子)

