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研究報告会レポート

第21回デザイン思考研究報告会レポート「AIはデザイン思考を強化させるのか弱体化させるのか」

第21回デザイン思考研究報告会(カンファレンス2025> 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:AIはデザイン思考を強化させるのか弱体化させるのか
日 程:2025年10月12日(日)13:10-14:30
場 所:法政大学 市ケ谷キャンパス
 

  1. 解題:「生成 AI とデザイン研究」
    登壇者:廣田 章光(流通科学大学 商学部 特任教授 / 近畿大学 デザイン・クリエイティブ研究所)
  2. 「AIエージェントと職人の協働から生まれたクラフトビール開発にみるハイブリッド・インテリジェンス」
    報告者:志村 典孝 氏(NEC 生成AI事業開発統括部 リードデータサイエンティスト)・廣田 章光(同上)
  3. 「AIはデザイン思考の普及を前進させるのか後退させるのか」
    登壇者:小川 亮(株式会社プラグ 代表取締役社長)
  4. パネルディスカッション
    登壇者:志村 典孝、小川 亮、黒岩 健一郎、吉橋 昭夫、廣田 章光

 
【報告会レポート】
1. 開催概要
 本セッションは、2025年10月12日に開催された日本マーケティング学会カンファレンスにおけるデザイン思考研究会のリサーチプロジェクトとして実施された。生成AIの急速な普及を背景に、デザイン思考の役割とその変容について、企業実務と研究の両面から検討することを目的とした。
 当日は、NECの志村氏によるAI活用事例報告、およびプラグ小川氏による実務的視点からの報告を中心に、パネルディスカッションを通じてAI時代におけるデザイン思考のあり方について議論が行われた。
 
2. 報告内容
(1)解題
 本セッションのテーマについて認知科学およびイノベーション研究の観点から整理した。
 特に重要な枠組みとして、以下が提示された:
① 決定準備(Decision Preparation)と決定(Decision)の分離
② 近接探索(Local search)と遠隔探索(Distant search)
③ AI生成情報による拡散思考の促進
 AIは主に「決定準備」を担い、人間は「決定」を担うという役割分担が成立する。
 さらに、AI生成情報は開発者が当初想起しなかった知識を想起させ、遠隔探索を促進する触媒として機能する可能性が示された。
 
(2)AIエージェントと職人の協働 ― クラフトビール開発にみるハイブリッド・インテリジェンス ―
 NEC志村氏は、生成AIおよびエージェント型AIを活用したクラフトビール開発の事例を報告した。
 本事例では、NECのLLM「cotomi」を基盤としたAIが、
① 世代別の価値観の分析(ペルソナ生成)
② レシピ案の生成
③ 味・香り・ストーリーの提案
といった一連の開発プロセスを担い、人間(職人)が最終的な評価・意思決定を行う構造が提示された。
 特に重要な点は、従来の「ツール」としてのAIから、「バディ(協働主体)」としてのAIへの転換である。AIがタスク分解から実行までを担うことで、職人は感覚評価など人間固有の領域に集中できるようになった。
 また、AI導入により開発工数の大幅削減と新たな発想の獲得が実現されており、ハイブリッド・インテリジェンスの実践例として位置づけられる。
 
(3)AIによるデザイン思考の変容 ― 「1人デザイン思考」と形骸化のリスク ―
 生成AIの進化がデザイン実務に与える影響について報告された。
 AIは以下の点でデザイン思考を大きく変化させていることが示された。
① アイデア生成の高速化
② プロトタイピングの即時化
③ 消費者反応のシミュレーション
 報告では、開発期間の最大70%短縮や試作数の飛躍的増加など、具体的な効率化効果が示された。その結果、従来のチームベースのプロセスは、AIとの対話を通じた「1人デザイン思考」へと転換しつつある。
 一方で、共感プロセスの弱体化、発想の均質化、学習機会の減少といったリスクも指摘された。
 
 このように、AIはデザイン思考を「強化」する側面と同時に、「形骸化」させる可能性も持つ二面性を有する。
 
(4)パネルディスカッション
 質疑・討論では、主に以下の論点が議論された:
① AIは「ツール」から「対話相手(バディ)」へ
② 一流人材はAIを使いこなし、格差が拡大する可能性
③ ハルシネーションの創造的活用
④ 若手の学習機会の減少
 
 特に、AI時代における人間の役割は、「選択」と「意味づけ」に集約されるとの認識が共有された。
 本セッションから得られる示唆は大きく3点に整理できる。
① デザイン思考の再定義
 デザイン思考は「プロセス」から、AIとの対話を通じた選択・解釈の行為へと変化しつつある。
② ハイブリッド・インテリジェンスの本質
 AIは創造主体ではなく、人間の思考を拡張する触媒して機能する。
 特に遠隔探索の促進において重要な役割を果たす。
③ 人間の役割の高度化
 AIの普及により、人間の価値は、問題設定能力、意味解釈能力、最終意思決定に収束していく。
 
(文責:流通科学大学 廣田 章光)

 
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