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第7回健康アセット・マーケティング研究報告会レポート「従業員のセルフコンディショニングを軸とした健康経営の進化」 |
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テーマ:従業員のセルフコンディショニングを軸とした健康経営の進化
日 程:2025年2月19日(水)19:00-21:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
【AGENDA】
- はじめに(解題)
中見 真也(神奈川大学 経営学部 准教授) - 「今後の健康経営のカギを握る従業員の『セルフコンディショニング』」の講演
桑原 拓都 氏(大塚製薬株式会社 ニュートラシューティカルズ事業部 ソーシャルヘルス・リレーション部) - パネルディスカッション、Q&A
MC:中見 真也(同上)
パネリスト:桑原 拓都(同上)
浅野 健一郎(一般社団法人社会的健康戦略研究所 代表理事)
新井 卓二(ビューティ&ウェルネス専門職大学 教授)
西根 英一(千葉商科大学 サービス創造学部 特命教授)
【報告会レポート】
本報告は、健康アセットマーケティング研究会において実施された講演およびパネルディスカッションの内容を整理し、今後の健康経営の方向性を示すものであり、特に大塚製薬株式会社ニュートラシューティカルズ事業部による講演「今後の健康経営のカギを握る従業員のセルフコンディショニング」を中心に、企業における健康価値創出の構造転換について考察するものである。近年、健康経営優良法人認定企業の増加に見られるように健康経営の普及は進展している一方で、プレゼンティーイズムの顕在化や従業員の高齢化、人材不足といった構造的課題が深刻化しており、従業員一人ひとりの健康維持が企業の持続的成長に直結する重要課題となっている。こうした背景のもと、本講演では従来の制度主導型健康経営から、個人の主体的健康管理である「セルフコンディショニング」への転換が不可欠であることが示された。
大塚製薬の基本戦略は、「治療」と「予防」を統合したトータルヘルスケアモデルに基づいており、医薬品事業とニュートラシューティカル事業の両輪により、健康の維持・増進から疾病対応までを包括的にカバーする点に特徴がある。この戦略は、健康を単なるコストではなく人的資本への投資として捉える健康経営思想と密接に結びついており、WHOが定義する身体的・精神的・社会的健康の実現を前提としながら、生産性向上および企業価値向上に資する経営戦略として位置付けられている。実際の社内施策においては、ポカリ体操やウォーキングイベントなどの行動変容型施策に加え、BMIや喫煙率、睡眠、運動習慣などのKPIを用いたデータドリブン管理、さらに睡眠改善や女性の健康支援といった個別課題への対応、入社時教育を含む若年層への早期介入など、多層的かつ統合的なアプローチが展開されている点が特徴的であり、これらは自社製品と科学的根拠を組み合わせた行動変容設計として機能している。
さらに同社は、健康経営の枠組みを社内に留めることなく、社外展開を通じて事業化および社会価値創造へと発展させている点に重要な意義がある。具体的には、「健康社長」と呼ばれるオウンドメディアを核としたプラットフォーム運営や、企業向け健康経営支援サービスの提供、さらには全国800以上の自治体との連携による地域健康イベントの実施などにより、健康経営をCSRの枠組みからBtoBビジネスへと昇華させている。このような展開は、健康を軸としたCSV(Creating Shared Value)の実践としても位置付けられ、企業活動と社会課題解決の統合モデルとして評価できる。
一方で、現状の健康経営にはいくつかの限界も指摘されている。すなわち、制度自体は整備されているものの従業員の行動変容が進まないこと、健康担当者と従業員の接点不足、プレゼンティーイズムによる生産性損失の継続、さらには健康不安を抱える従業員の増加と相談環境の不足といった問題が存在しており、これらは従来の組織主導型アプローチの限界を示唆している。この課題に対する解として提示されたのが「セルフコンディショニング」であり、従業員自身が主体的に健康を管理し、組織はそれを支援する環境を設計するという新たな枠組みである。この転換は、健康経営のパラダイムを「制度中心」から「個人行動中心」へとシフトさせるものであり、今後の競争優位の源泉としての人的資本の質的向上に直結する概念である。
本講演から得られる研究的含意としては、第一に健康経営を単なる人事・福利厚生領域ではなく、行動変容設計としてのマーケティング課題として再定義する必要性、第二に製品・サービス・制度の統合的設計の重要性、第三に若年層への投資が長期的ROIの鍵となる点、第四に「個人化(self)」が今後の競争軸となる可能性、そして第五に健康経営が社会価値創造領域へと拡張することが挙げられる。総じて、大塚製薬の事例は健康経営を社内オペレーションから社会価値創造、さらには事業化へと段階的に発展させた先進モデルとして位置付けられ、特にセルフコンディショニング概念は、人的資本経営およびウェルビーイング経営の実装において中核的役割を果たすことが示唆されるものである。
(文責:中見 真也)

