ポスターセッションの報告要旨の |
日本マーケティング学会 カンファレンス・プロシーディングス Vol.7 |
統計的に有為な説明変数を現実で実行しても被説明変数が変化しない失敗はどのような誤謬によるのか |
長野県の健康長寿は戦後に普及した保健補導員制度によるものか |
入江 信一郎 京都工芸繊維大学 基盤科学系 助手 |
発行 : 2018年10月08日 |
報告要旨 : 健康長寿日本一の長野県では主婦が保健補導員となり地域の健康管理を担ってきたとして,厚生労働省は医療費削減のために保健補導員制度の普及を支持する。しかし探索的調査の結果,以下の3点で「保健補導員の普及」が「健康長寿」に直結しない可能性がある。 (1)「保健補導員制度の普及」が「健康長寿」に繋がるには戦後の経済成長による「栄養状態の改善」と「国民皆保健の医療」が必要。 (2)「高齢で農作業」を続けていることが「健康長寿」に繋がっている可能性。 (3)「熱心な保健婦の活動」が「保健補導員制度の普及」に繋がるには,「真面目で勤勉な県民性」,「他県より強い共同体」,およびこれらに由来する,嫁は老人を自宅で介護して当然とする「嫁の自宅介護負担規範」が必要だった。これらの条件なしに保健補導員制度を導入しようとしても実現は困難と考えられる。 「保健補導員制度の普及によって健康長寿が導かれている」という記述は間違いではない。だからといって他県の「健康長寿を実現するためには保健補導員制度を普及させればよい」とするのは錯誤である。この誤謬は部分の過度な一般化と必要条件の無視によって構成されていると考えられる。 |
キーワード : 実証研究 統計的有為 失敗 錯誤 誤謬 |
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