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日本マーケティング学会 ワーキングペーパーVol.3 No.6 |
ドラッグストア業態における新小売フォーマットの事例 |
スギ薬局の関連購買商品革新による差別化戦略 |
荒谷憲 元大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程 |
発行:2016年12月31日 更新:2016年12月31日 |
分類 : 論文 |
要約 : 本稿では、ドラッグストア業態における新小売フォーマットの事例としてスギ薬局を採り上げ、スギ薬局による関連購買商品革新による差別化戦略を事業コンセプトとフォーマット・モデルを軸にして分析してきた。 スギ薬局は、2007年度を境にした環境の変化に適合することで、調剤併設型ドラッグストアから地域医療対応型ドラッグストアへと事業コンセプトを変化させた。このコンセプトの変化は品揃え物差別化型から財・サービス品揃え差別化型へと小売フォーマット革新を起こした。小売フォーマット革新を起こすことで、スギ薬局は、模倣困難性を形成して消耗戦の競争状態から抜け出すことができている。 荒谷 (2014) では、革新的小売企業の財・サービス品揃え差別化型による関連購買商品革新という新小売フォーマットを概念化した。これは、本稿のスギ薬局の事例研究の結果と対比させると、以下のようになる。 荒谷 (2014) では、品揃え物差別化型では説明できなかった「サービス」を「商品」として着目し、従来の「財」の集合としての品揃え形成に加えて、新たに「財」と「サービス」の集合としての品揃え形成、さらに「財」と「サービス」による関連購買商品革新を概念化した。それに対応するものとして、本稿の事例におけるスギ薬局は、従来の調剤・大衆薬・健康食品等の品揃え形成に加えて、新たに調剤を中核とした大衆薬・健康食品等の「財」と在宅医療サービスの「サービス」の集合による、「財」と「サービス」の品揃え形成や、それら「財」と「サービス」による関連購買商品革新を行っていることを明らかにした。 また、荒谷 (2014) では、新たに「サービス」を「商品」として品揃えに加えることを実現するために、既存技術の臨界点を超えた革新的「経営技術」(「サービス」の技能と「サービス」のフロント・ステージとバック・ステージのプロセス管理技術)を概念化した。それに対応するものとして、本稿の事例におけるスギ薬局は、新たに在宅医療サービスを「商品」として品揃えに加えることを実現するために、在宅医療サービスの技能(薬事研修センターと薬事情報センターの組織的ノウハウ)やフロント・ステージ(スギ薬局の薬剤師とスギメディカルの看護師の患者宅での業務プロセス)とバック・ステージ(病院や診療所の医師やメディカルソーシャルワーカーとの交渉プロセス)のプロセス管理技術があることを明らかにした。 |
キーワード : 地域医療対応型ドラッグストア 調剤 在宅医療サービス 調剤併設型ドラッグストア |
ページ数 : 表紙1 + 本文28 |
ファイルサイズ : 785KB |
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