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研究報告会レポート

第4回 エフェクチュエーション研究報告会(春のリサプロ祭り)レポート「エフェクチュエーションとイノベーター」

第4回 エフェクチュエーション研究報告会(春のリサプロ祭り) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:「エフェクチュエーションとイノベーター」
日 程:2017年3月18日(土)6:30-18:00
場 所:中央大学 後楽園キャンパス
 

【報告会レポート】

  1. 報告「イノベーターの思考プロセスから何を学ぶことができるか」
     吉田 満梨(立命館大学 経営学部 准教授)
  2. パネルディスカッション「エフェクチュエーション研究・教育の今後の展開」
     吉田 満梨(立命館大学)、高瀬 進(京都大学)、宮井 弘之(博報堂ブランドイノベーションデザイン局)
吉田満梨
吉田 満梨
高瀬進
高瀬 進
宮井弘之
宮井 弘之

 
 本セッションでは、前半で、吉田(立命館大学)から、アントレプレナーシップ研究・教育の世界的な潮流となっている、「エフェクチュエーション(Effectuation)」と呼ばれる、起業家的思考法の概要について説明をした上で、後半に、高瀬氏(京都大学)、宮井氏(博報堂)をまじえたパネルディスカッションの形式で、来場いただいた50名を超える参加者の方々からも質問・コメントをもとめつつ、エフェクチュエーションの今後の研究及び教育における課題と発展可能性を議論しました。
 エフェクチュエーションは、Saras Sarasvathyによって発見・体系化された、起業家が用いる意思決定の論理です。日本では、Sarasvathyが2008年に著した『Effectuation: Elements of Entrepreneurial Expertise』という学術書の訳書が、2015年に『エフェクチュエーション―市場創造の実効理論』(加護野忠男監訳, 高瀬進・吉田満梨訳)として出版され、まだ認知度は高くないものの、世界中のアントレプレナーシップ教育のプログラムで導入され、また様々な経営学のトップジャーナルにおいて議論されているテーマになります。
 「何が起業家を、起業家足らしめているのか?」「アントレプレナーシップとは何か?」という問題に対しては、これまで起業家の個人的属性や資質による説明と、マクロ的な環境による説明の両方のアプローチから議論されてきましたが、Sarasvathyの研究は、これらとは全く異なるアプローチによって、27名のエキスパートの起業家に対する実験を行い、その結果から、産業・地域・時代によらず、優れた起業家は問題解決のために共通の論理・思考プロセスを活用していることを発見し、それを総体として「エフェクチュエーション」と名付けました。エフェクチュエーションは、不確実性に対処するための一般論理であり、科学的方法と同じように、誰もが学習可能な「起業家的方法」である、と位置付けられています。
 エフェクチュエーションの論理は、5つの原則(手段主導、損失の最小化、パートナーシップ、偶然の活用、コントロールへの集中)から構成されていますが、本セッションでは、マーケティングや企業の新規事業創出の文脈でも、エフェクチュエーションの有効性をできるだけ判りやすくお伝えしたいと考えました。そこで、エフェクチュエーションの論理に基づくことで、自らイノベーションに着手できない理由、すなわち、①「まだ機会を発見できていない」、②「明確なアイデアがない」、③「大きなリスクをとることはできない」、④「十分な資金がない」、⑤「私は起業家タイプではない」といった問題に対する見方が、いかに反転されるか、を順を追ってご説明するかたちで、エフェクチュエーションとは何か(対概念である、コーゼーションとの相違)、そして、そこから何を学ぶことができるか、をご説明しました。
 後半のディスカッションでは、まだ日本では端緒についたばかりのエフェクチュエーションの研究・教育の今後について、リサーチプロジェクトのメンバーである、高瀬氏と、宮井氏から、それぞれの関心に基づくエフェクチュエーションの活用として、研究・教育、ならびに、実務の現場での実践の事例を共有していただきつつ、議論を深めました。
 これまで単独での研究報告会を開催してきたエフェクチュエーション・リサーチプロジェクトでしたが、今回は、「リサプロ祭り」に参加された多くの方々にご参加いただき、様々なフィードバックをいただくことができました。充実した議論の場を提供してくださった中央大学の田中洋先生はじめ、運営いただいた皆様、セッションにご参加くださった皆様に、心より御礼を申し上げます。 
 エフェクチュエーション・リサーチプロジェクトは、さらなる研究や、現場の皆様の実践知を必要としている分野です。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。
 
会場の様子
会場の様子(田中洋先生に撮影いただいた写真を使わせていただきました)
 
文責:吉田 満梨(立命館大学大学 経営学部)

 
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