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研究報告会レポート

第4回インダストリー・イノベーション時代のブランディング研究報告会レポート「横河電機のBtoBブランド戦略 ―寝ずの番から明日の共創へ―」

第4回 インダストリー・イノベーション時代のブランディング研究報告会 > 研究会の詳細はこちら
テーマ:横河電機のBtoBブランド戦略 ―寝ずの番から明日の共創へ―
日 程:2017年7年5日19:00-21:00
場 所:明治大学駿河台キャンパス アカデミーコモン

 
【報告会レポート】
 本プロジェクトは、個々の企業によるIoTなどのイノベーションの取組みが、エコシステムやプラットフォームなど産業の枠組みや構造自体の進化、再構築、新機軸の中で行われている点に着目したものです。そのような状況を「インダストリー・イノベーション」と捉え、この観点から経営を支援するマーケティングやブランディングのテーマや抽出し、戦略設計に資する研究を行うことを目指しています。
 第4回報告会は、日本を代表する優良企業にして、BtoBブランディングにも先駆的に取り組んできた横河電機株式会社の事例を通して、「インダストリー・イノベーション」の時代におけるブランディングの効用と可能性について議論を行いました。
 

 冒頭、今回のモデレーターをお務めいただいた、本プロジェクトの運営メンバーである明治大学ビジネススクール首藤明敏教授から、ビジネスへの寄与を目的に切迫感を持ってブランディングに取り組み続けている横河電機さんの貴重なお話を伺える機会である旨、ご紹介がありました。
 引き続き横河電機マーケティング本部コミュニケーション統括センター長である瀬戸口修様の講演がありました。事後の報告として、以下の点をご紹介します。

・横河電機にとってのブランディングは、中核事業であるIA(インダストリー・オートメーション)を対象にした2003年からの第1期と第2期、および2015年からの全社レベルの第3期から成る。

・国内では長い歴史と多くの実績を残してきた横河電機のIA事業であるが、2000年台初頭の頃の欧米市場では、顧客には“Yoko…who?”という印象で十分なブランド認知と印象が浸透していなかった。一方で競争は激化し、強力な競合企業がプロセスマネジメントを進め、それが業界のコンセプトをリードするとともに、そのコンセプトワードが強力に浸透していた。これに対抗するマーケティング戦略として、マーケティングのコンセプトやブランドのシンボルを掲げ、IA事業の横断的な戦略をグローバルに展開する必要性から第1期の取り組みが始まった。自社の強みに軸足を置いた「vigilance」という事業コンセプトを中核にした社内外に向けた展開、さらに新規顧客を意識して顧客ベネフィットを中心に置いた「vigilant plant」を掲げた展開が行われた。

・その後の第2期を経て、ビジネス環境の変化と100周年という契機も意識して全社に対象を広げたブランディングを模索した。ソリューション志向のブランドの考え方の導入と、多様化するコミュニケーションアイテムにおける統一的なアイデンティティ構築のためのデザインの整備の必要性などが背景にあった。社内外に対する調査をもとに、磨くべきコンピタンスや醸成すべきイメージ、あるいはIA事業の取り組みから全社の取り組みに向けた展開の重要性やポイント、「vigilant plant」からの進化の方向性などを確認した。

・第3期のブランドプロジェクトは、2015年に100周年キャンペーンとともに立ち上げられ、新たなタグラインが導入されたほか、経営戦略の枠組みの中でビジョンステートメントが作成された。さらにブランドスローガン「Co-innovating tomorrow」を立ち上げた。ブランドサイトやコミュニケーションデザインのガイドラインなど社内に対する活動、および広告や顧客向けイベントなどを展開した。結果、早期の幅広い活動やスローガンの認知と、ブランドスローガンを意識した社員の行動を実現した。グローバルの各事業部や各地域の担当者とのゆるやかなつながりを通して、さらなる効果やブランド戦略の管理、運用を行っている。

・今後の課題としては、ネーミングや「vigilant plant」に相当するビジネスドメインのシンボルの整備が挙げられる。

 

 首藤教授から、第1期の社内的熱狂を一時的なものとして終わらせることなく、企業レベルへと課題設定を進化させ、継続的にブランディングに取り組んでいる事例とのまとめがありました。次にホールからの質疑応答、運営委員メンバーからの確認がありました。以下の点が指摘、議論されました。

・質疑応答での確認・議論: 横河電機のブランディングの意図は、それをトリガーにしたマーケティング改革である。 ソリューション化が進んでカテゴリーやコンセプトが重要になるとさらにブランディングの意義が増すだろう。顧客の企業理解が進んだことが営業効率を高めたが、それには営業員の日常の活動による顧客への浸透が大きく寄与している。ブランディングの意義のひとつとして、社内へのメリットがある。

・運営委員からの確認・指摘:ソリューション化やサービス化でブランドの重要性が高まっていった流れと、営業員の理解と行動がその効果を高めるのに寄与した点は、多くの業界にも共通することで参考になるだろう。今後、ソリューション化によって顧客のパーセプション管理やエクスペリエンスの設計が課題となる中で、提供価値からビジネスドメインを定義することの重要性に着目されている点に大きな学びがある。

 
運営まとめ
 「インダストリー・イノベーション」に対するブランディングの貢献を考える研究会ですが、今回はブランディングに取り組んでいる企業のお話を伺い、その背景や前提でどんな「インダストリー・イノベーション」に関係する状況を考慮しているかという、因果を遡るアプローチをとることで多くの企業に共通の示唆を得る機会となりました。
 ポイントの1つ目は、当初は中核事業を対象に、自分自身のアイデンティティを表現して顧客に向けて存在価値を訴求するものだったが、現在の企業ブランドのブランディングは現状の強みを踏まえて未来に向けて自身を見つめ直すことに取り掛かかっていると言えるのではないとかという、モデレーターの首藤教授のこの事例の捉え方にあるように思われます。
 もう1つのポイントは、パートナー企業を巻き込んだビジネスのソリューション化の進捗に対して、ブランディングは様々な貢献が可能になることを学んだことです。なかでも、瀬戸口様が今後の課題とされたビジネスドメインのシンボルとなるコトバの策定は、顧客への提供価値を社内外で共有可能なフレーズに落とし込む、多くの企業にとって重要なタスクと言えるでしょう。
 
 あらためてこの場をお借りして、横河電機株式会社の瀬戸口修様に謝辞を申し述べさせていただきます。
 
(文責:徳永朗)

 
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